既存のメールセキュリティ対策が無効化される新たな脅威:メールセキュリティサービスの選び方【後編】
メールセキュリティサービスを選ぶに当たり、プロバイダーに質問すべき7項目を紹介する。さらに、既存の対策が無効化される脅威に今から備える必要がある。
前編(運用やアーカイブまで考慮したメールセキュリティの選定)では、事例を交えて2つのメールセキュリティサービスを紹介した。
後編では、利用するメールセキュリティプロバイダーに不可欠な要素と今すぐ着手すべき新たな脅威を紹介する。
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その他の考慮事項
メールセキュリティに関するさまざまな脅威がどのように見え、何が最善の対策であり、どうやって再発しないようにするのか。スタッフにサイバーセキュリティの啓発トレーニングを提供し、理解させる必要がある。
Exabeamのスティーブン・ゲーリー氏(ソリューションアーキテクチャ部門責任者)によると、セキュリティに関する定期的なトレーニングの効果が最も高いという。
メールセキュリティサービスは、自社を標的とする脅威のキャンペーンを見極めるのに役立つ可能性があるとゲーリー氏は話す。最新のエンドポイント保護は、フィッシングの手口、脅威インテリジェンスデータベースで特定される悪意のあるWebサイトへのリンク、エンドユーザーの端末で実行される悪意のあるプロセスを特定し、ブロックできる可能性がある。
だが、最高のセキュリティプロセスを実装したとしても攻撃を完全に阻止するのは不可能だと同氏は警告する。そのため、さまざまな攻撃を可能な限り早いタイミングで見極め、最善の行動を取る能力が必要だ。
ESETのジェイク・ムーア氏は、メールセキュリティサービスは最強の防御を提供する必要があると言う。多要素認証などの追加のセキュリティ層も不可欠だと同氏は話す。
「安全性の高いサービスは高いかもしれない。だが、メールセキュリティは必要な投資であり、そのコストをはるかに上回るメリットがある。大量の添付ファイルを扱う必要があるなら、サンドボックス化などが不可欠になることが証明されている」(ムーア氏)
だがゲーリー氏と同じくムーア氏も、さまざまなリスクを従業員に認識させた上でメールセキュリティサービスを利用すべきだと考えている。「とはいえ、セキュリティシステムを不便だと感じたスタッフはその回避策を見つけ出す可能性がある。保護を強化するには意識トレーニングが不可欠だ」と同氏は話す。
Titaniaのニコラ・ホワイティング氏(最高戦略責任者)は、メールセキュリティプロバイダーに幾つか基本的な疑問を投げ掛けてみるべきだと言う。
- マルウェアをどのように評価するのか
- 脅威インテリジェンスの更新頻度は
- 必要なメールをどの程度の精度で防御、許可するのか
- メールを処理するために外部サービスに転送するのかどうか
- サービスを既存システムに統合・管理するのは簡単かどうか
- どの程度カスタマイズ可能なのか
- エンドユーザーにも使いやすいシステムかどうか
ホワイティング氏は次のように補足する。「中小企業やスタートアップ企業など、セキュリティに多くの層を設けられない企業もある。DLP(データ損失防止)とメールの暗号化を比較的低コストで提供するメールセキュリティサービスであれば、実用的な措置になる」
量子耐性
メールセキュリティプロバイダーは量子に耐性のある暗号化をサービスに組み込むべきであり、既に組み込んでいるプロバイダーもあるとサリー大学のロゴイスキ氏は話す。量子コンピューティングの台頭によって現在の暗号化手法が役に立たなくなることを同氏は懸念している。
「既存の暗号の大半は、量子コンピュータによって突破される恐れがある。量子コンピュータに取り組むIBMやGoogleなどは10年後には実用化するとしていることから、準備期間はそれほど長くない」と同氏は話す。
「メールのような機密情報を保存している企業は、数年後にはその機密を保てなくなる。米国のNISTは、『量子に耐性のある』最も有望な暗号化アルゴリズムを決めるプロセスを進めている。うまくいけば2021年中にはそれが決まるだろう。そのとき、脆弱(ぜいじゃく)な暗号化アルゴリズムを置き換える競争が始まる」(ロゴイスキ氏)
メールセキュリティの脅威は何十年も前から存在する。サイバー犯罪者がメールを絶えず標的にし、被害者が出ていることを考えれば、この問題を認識して即座に行動を起こすことが重要だ。メールセキュリティサービスが多数存在することは素晴らしい。だが慎重に選定する必要がある。
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