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「電子カルテ」の長期保存コストを抑える具体的な方法コロナ禍で変化したIT課題と3つの投資分野【後編】

医療データを長期保存する理由は、臨床上の必要性から法的な要件までさまざまだ。ただしレガシーシステムを維持するコストは無視できない。データ保存戦略を見直して新たに定義するためのステップを紹介する。

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)をきっかけに、医療ITの新しい課題が明らかになってきた。医療機関のITリーダーは、積極的な投資計画と予防策を講じ、事業を継続するために必要な調整をしなければならない。

 前編「予算のない医療機関でも『RPA』には投資すべき理由」に続き、後編となる本稿は、医療機関のIT部門が今後重視すべき3つ目の投資分野「電子カルテ(EHR)など医療データの長期保存にかかるコストの削減」について解説する。

3.電子カルテなど医療データの長期保存にかかるコストの削減

 IT企業や小売業などと比べると、医療機関はデータを長期間保持している。その理由は患者のプライバシー保護のためだったり、医療機関の連携において重要な情報を維持するためだったり、さまざまだ。だが善意だけでは、長期保存のコストの埋め合わせはできない。

 この問題は特に臨床データに当てはまる。大抵の医療機関は、医療情報システムや電子カルテを新規稼働してから、臨床のデータをずっと保持したままだ。厳密な必要性があるならばいいが、レガシーシステムを稼働し続けることは、かなりの追加コストが伴う。

 不要なコストを削減し、運用を効率化するために、医療機関は次のステップで現状を見直すことが望ましい。

  1. レガシーシステムおよび関連データを分析し、それらのデータの法的保持要件を種類ごとに判断する。
  2. データの種類ごとに明確な「データ保存戦略」を定義する(データ変換、アーカイブ、破棄など)。その上で、絶対に必要なデータを特定する。
  3. 使用予定のデータを抽出するプロセスを整理し、ドキュメントにまとめる。
  4. 診療科ごとにデータ保存戦略の計画を立案し、その取り組みの目標と目的を明確に定める。
  5. データの種類ごとに実施するテストと検証のアプローチを確認し、調整する。

 これらの準備が完了すれば、レガシーシステムの廃止計画を立て、実行することが可能になる。言うまでもないが、これらの課題克服は楽しくも簡単でもない。それでもやらなければならない。質の高い、患者中心の医療を提供するためには、不必要なレガシーシステムを維持するコストを削減することが必要だ。


 業務効率の向上、レガシーデータやシステムにまつわるコスト削減――これらは全て医療機関の幹部層が念頭に置くべき重要なトピックだ。もちろん、こうした取り組みは一夜にして実現するものではない。信頼できるITベンダーの支援を借りて、本稿で概説した分野に注目し、未来を見据えて組織を導いてほしい。

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