MicrosoftがLinuxディストリビューターKinvolkを買収した真の狙い:Flatcar Container Linuxはどうなる?
Container Linuxの後継ディストリビューション「Flatcar Container Linux」を開発しているKinvolkをMicrosoftが買収した。同社は何をやろうとしているのか。
2021年5月、MicrosoftがKinvolkの買収を発表した。Kinvolkは、セキュリティの高さとメンテナンスの容易さを兼ね備え、コンテナワークロード向けに設計された「Linux」ディストリビューション「Flatcar Container Linux」の作成者兼ディストリビューターだ。
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Microsoftは、この買収と同時にKinvolkの「Lokomotive」プロジェクトと「Inspektor Gadget」プロジェクト(訳注)も引き継いだ。
訳注:Lokomotiveは自己ホスト型、セキュリティセントリック、コンポーザブルなKubernetesディストリビューション。Inspektor GadgetはKubernetesアプリケーションのデバッグ&検査ツール。当初はLokomotive専用だったが、現在は他社のKubernetesディストリビューションでも利用できる。
Microsoftのオープンフレンドリーなミッションの中で、Kinvolkのチームはこれらのオープンソースソフトウェアの開発を続けているように思える。Microsoftのミッションは、可能な限り多くのコンピューティング環境がMicrosoftの開発者ツールセットやプラットフォーム、「Microsoft Azure」から生まれるDNAに触れ、それを利用できるようにすることだ。
Microsoftのブレンダン・バーンズ氏(コーポレートバイスプレジデント)は、「Kubernetes」をどこでも(クラウド内でもオンプレミスでも)実行可能にするのが最優先だと述べている。
同氏の声明に疑問があるわけではないが、なぜそうするのかを問い掛けた。
バーンズ氏は、その要因には次のようなことがあると言う。
- コンテナに最適化されたワークロード
- コンテナに最適化されたOS
- 無駄のない(コンテナ化)アプリケーションのモダナイズ
- 容易な(コンテナ中心の)運用
- プラットフォームの回復性(コンテナ化主導)
Kinvolk創設時のミッションは、企業におけるクラウドネイティブなオープンスタックの構築と促進だった。
「KinvolkにはKubernetes、eBPF(訳注)、コミュニティーの構築、コンテナに最適化されたLinuxなど、オープンソースのクラウドネイティブな分散コンピューティングにおける豊富で革新的な歴史がある。CoreOSとの重要な仕事としてrktコンテナランタイムにも携わっている。最終的に、CoreOSの『Container Linux』の代わりとなるFlatcar Container Linuxを作成し、LokomotiveプロジェクトやInspektor Gadgetプロジェクトへと進んでいった」とバーンズ氏は説明する。
訳注:extended Berkeley Packet Filterの略。カーネルのソースコードを変更せずに独自のコードでカーネルを拡張する機能。
Microsoftによると、KinvolkはAzureでの作業に取り組み、「Azure Kubernetes Service」「Azure Arc」、そしてAzureのハイブリッドコンテナプラットフォームの機能を拡張する将来のプロジェクトにおいて重要な役割を果たすという。
コンテナに最適化されたイノベーションを加速する役割を担うとしたら、それはMicrosoftだろう。
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