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「SDGsをデータ分析で達成」をZ世代が“激推し”する納得の理由大学が取り組む「SDGs達成のためのデータ分析」【中編】

データ分析を活用して「SDGs」の達成を支援する――。こうした構想を進める非営利団体が大学で講義をしたところ、学生がその理念を「熱烈に歓迎」したという。その理由は。

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 非営利団体Analytics for a Better World Institute(以下、ABW Institute)の構想は、ある教授が2冊の書籍を読んだことから始まった。ABW Instituteは、アムステルダム大学(UvA:University of Amsterdam)経済学部とマサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)がコンサルティング会社ORTECと提携して設立した。データと分析を活用して、国際連合(国連)が定める「SDGs」(持続可能な開発目標)の達成を目指す組織を支援している。

Z世代が「SDGsをデータ分析で達成」を熱く歓迎する理由

 団体名にも含む「より良い世界を実現するための分析」(ABW:Analytics for a Better World)という概念を提唱したのはディック・デン・ヘルトフ氏だ。ヘルトフ氏はABW Instituteの共同設立者であり、UvAでオペレーションズリサーチ(計画に対して最も効率的な選択を導き出す手法)の教授として教壇に立つ。MITのビジネス分析論の教授であるディミトリス・ベルティーマス氏と協力して、ABWの構想を発展させる作業に取り組んでいる。

 UvAとMITで講義をしたところ「ABWの構想は学生から大きな反響を得た」とヘルトフ氏は話す。学生が該当する「Z世代」(1990年代半ばから2010年ごろに生まれた世代)は、目的や意義がある作業に対して高い集中力を発揮する傾向にある。「ABWの構想が熱烈に歓迎された理由は、そこにある」と同氏は考えている。

 Z世代の成長とともにデータの量や種類が充実し、企業や組織はさまざまな情報を入手しやすくなった。こうした背景が、ABW Instituteの設立を後押しした。

 データ分析のための実用的なシステムを開発するために、ヘルトフ氏はABW Instituteに業界の専門家を招く必要があった。「私たちの志に賛同し、ABW Instituteの設立を物資と金銭の両面で惜しみなく支援してくれるパートナーを見つけてくれたのはORTECだ」と同氏は話す。

 幾つもの企業が、データ分析を使って価値を創造している。データサイエンティストは労働市場で引く手あまたな、「自由に仕事を選べる」ほど人気のあるIT専門職だ。「こうした状況自体は決して悪いことではない。だからこそ人道的で持続可能な目的にもデータサイエンスを使用できるようにしたい」とヘルトフ氏は意気込む。「データサイエンスを使用することによって、ある企業では5〜10%の労力削減につながるとしたら、NGO(非政府組織)ではどのようなことができるかを考えてみてほしい」(同氏)

 データサイエンス分野の人材は不足している。そのためNGOや政府機関の中には、データサイエンティストを採用できず、自組織の価値を生み出すためにデータ分析を活用できていない組織がある。「このような状況で役に立つのがABW Instituteだ。ABW Instituteは、国連が定めたSDGsの目標達成に向けて積極的に貢献したいと考えている」とヘルトフ氏は強調する。


 後編はABW Instituteが取り組む、データ分析を活用した課題解決策の具体例を紹介する。

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