クアルコムの“AIスマホ向け”新SoC「Snapdragon 8s Gen 3」は何がすごい?:進化は「オンデバイスAI」だけじゃない
「オンデバイスAI」に注力するQualcomm Technologiesが発表した「Snapdragon 8s Gen 3 Mobile Platform」は、どのようなSoCなのか。その特徴を紹介する。
半導体ベンダーQualcomm Technologiesは、通信事業にとどまらず、人工知能(AI)領域にもその手を広げている。2024年1月、同社のCEOクリスチャーノ・アモン氏はテクノロジー見本市「CES 2024」で、ユーザーの端末でAI技術によるデータ処理をする「オンデバイスAI」市場参入に向けた包括的な戦略を紹介した。
計画の一環としてQualcomm Technologiesが発表したのが、複数の機能を集約した集積回路「SoC」(System on a Chip)の「Snapdragon 8s Gen 3 Mobile Platform」(以下、Snapdragon 8s Gen 3)だ。
“オンデバイスAI”向け「Snapdragon 8s Gen 3」の特徴
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「当社はこれまでもプロセッサをはじめとした“コンピューティングエンジン”の提供を通してAI技術の普及に貢献してきた」とアモン氏は話す。今後、オンデバイスAIがさまざまなサービスの基盤になり、アクセラレーテッドコンピューティング(計算処理の高速化)の重要性が増すと同氏は予測する。
Qualcomm Technologiesのシニアバイスプレジデント兼携帯電話担当ゼネラルマネジャーを務めるクリス・パトリック氏は、Snapdragon 8s Gen 3がもたらすメリットについて言及する。例えばAI技術を活用することで、サービスのパーソナライズ化によるユーザーエクスペリエンス(UX)向上や、創造性と生産性の向上といった効果が見込める。
Snapdragon 8s Gen 3の主な特徴や機能は以下の通りだ。
- オンデバイスAI
- 「Baichuan-7B」「Llama 2」「Gemini Nano」といった一般的な大規模言語モデル(LLM)を実行
- 最新世代の通信
- 5G(第5世代移動通信システム)とAI向けのモデム(信号を変換する機器)「Snapdragon X70 5G Modem-RF System」を搭載
- 「Wi-Fi 7」(IEEE 802.11be)向けのコントローラー「FastConnect 7800 Mobile Connectivity System」を搭載
- 常時センシング型画像処理プロセッサ(ISP)
- リアルタイムでの物体認証や顔認証、画像処理を実行
- ゲーミング性能
- 画像の解析度やデータ処理スピードに優れ、リアルなゲーミング環境を実現
- 音声品質
- 非圧縮形式でデータを転送することで、音声品質を維持
- 省電力性
中でも特筆すべきはその通信機能だ。Snapdragon X70 5G Modem-RF Systemを搭載しており、モバイル通信規格の標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)が策定した5Gの仕様「3GPP Release 17」の機能をサポートする。
さらにFastConnect 7800 Mobile Connectivity Systemを搭載することで、HBS(ハイバンド同時)マルチリンクというWi-Fi 7の技術が使用可能。複数の高周波数帯(ハイバンド)を束ねて通信を高速化することで、最大5.8Gbpsのデータ伝送速度を実現する。
2024年3月時点で、Honor、iQOO、Realme、Redmi、Xiaomiなどスマートフォンの主要OEM(相手先ブランドでの製造)ブランドがSnapdragon 8s Gen 3の採用計画を示している。
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