「SharePoint」と「Box」は何が違う? “6つのポイント”で比較:機能、セキュリティ、価格などを比較
「Microsoft SharePoint」と「Box」は、いずれもドキュメント管理機能とコラボレーション機能を搭載する。自社で利用する場合はどちらを選ぶとよいのか。それぞれの違いと使い分ける際のポイントを解説する。
社内ポータルサイト構築ツール「Microsoft SharePoint」(以下、SharePoint)とオンラインストレージサービス「Box」は、いずれもドキュメント管理機能とコラボレーション機能を備える。一見似たような機能を持つ両者はどのように違うのか。自社の規模や業務プロセスなどの要件を踏まえると、どう使い分ければよいのか。それぞれの概要と、6つの観点から見た違いを解説する。
そもそもSharePointとBoxとは何か
併せて読みたいお薦め記事
SharePointの活用法
SharePointとは
Microsoftが提供するSharePointは、ドキュメント管理機能を中核に据える。ファイルの保存やワークフロー管理のための一元的なリポジトリ(保管場所)を備え、部門間のコラボレーションを促す。
2023年11月にMicrosoftは、アドオンライセンス「Microsoft Syntex」の後継として「SharePoint Premium」を発表した。SharePoint Premiumで利用可能になる機能の例を以下に挙げる。
- 社外関係者とドキュメントを共有できる機能「Document Hub」
- AI(人工知能)技術を活用したドキュメント管理機能
- 契約書の法的なリスクを検出する機能
イントラネット用サイトを構築し、部門間のコラボレーションを促進する機能もある。SharePointはMicrosoftであるため、サブスクリプション型オフィススイート「Microsoft 365」との親和性がある。エンドユーザーは文書作成ツール「Microsoft Word」、表計算ツール「Microsoft Excel」、プレゼンテーションツール「Microsoft PowerPoint」用のファイルをSharePointで作成したポータルサイトに保存し、関係者と共有可能だ。
Boxとは
Boxはファイル共有、管理のためのツールだ。コンテンツリポジトリ(コンテンツファイルのデータ群)の他、チャットをはじめとしたコラボレーション機能を備える。ワークフロー機能や開発者向けのツール、サードパーティーのクラウドサービスおよびアプリケーションと連携するための、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)も提供する。サードパーティーのクラウドサービスおよびアプリケーションとしては、以下の例がある。
- コラボレーションツール「Slack」
- クラウドサービス群「Amazon Web Services」
- オンラインストレージサービス「Google Drive」
- Microsoft 365
エンドユーザーは、Boxに保存したファイルをデバイスにダウンロードし、インターネットに接続していない状態でファイルを開いて作業することも可能だ。
SharePointと同様、BoxもIDおよびアクセス管理(IAM)機能を通じ、エンドユーザーのファイル操作、共有などに関する権限を管理できる機能を有する。「Box Zones」は、特定のリージョンのデータセンターにデータを保存できる機能だ。この機能を活用することで、企業は地域ごとの法規制やデータレジデンシー(データの所在地)要件に適合できる。
SharePointとBoxの6つの違い
以下で、SharePointとBoxが異なる点を6つの観点で比較する。
違い1.使いやすさ
Boxは、直感的なユーザーインタフェース(UI)が特徴だ。さまざまなビジネスツールと組み合わせやすい。
一方でSharePointは、Microsoftが開発した企業向けのツールだ。優れた連携性を持ち、さまざまな機能を備えるが、最大限に活用するにはMicrosoftの製品群に関する知識が必要な場合がある。
違い2.検索機能
Boxは直感的な検索機能を備える。エンドユーザーはファイルの名前や内容、作成日を基にしてファイルを検索できるが、検索結果が全ての検索条件を正確に反映するとは限らない。
SharePointも検索機能を提供しているが、一部のケースではエンドユーザーが検索したい情報を見つけにくい。より良い検索結果を得るには、検索設定の細かい調整が必要だ。
違い3.連携のしやすさ
SharePointはMicrosoft 365アプリケーションの一部だ。Web会議ツール「Microsoft Teams」、メールクライアント「Microsoft Outlook」、PowerPointなどのMicrosoft製品とシームレスに連携できる。例えばエンドユーザーはMicrosoft Teamsを通じて、SharePointに保存したファイルを共有できる。
Boxは複数のOSやクラウドサービスで稼働することに加え、Salesforce、IAMツールベンダーOktaなどが提供するツールやオフィススイート「Google Workspace」と連携できる。連携にはAPIやSDK(ソフトウェア開発キット)を利用可能だ。特定のベンダーに依存したくない、またはOSやクラウドサービス間での互換性を重視する企業にとってBoxは魅力的だ。
違い4.カスタマイズのしやすさ
BoxとSharePointは共にカスタマイズ可能だが、必要な知識のレベルは異なる。Boxはカスタマイズ可能な範囲が限られており、基本的なプロセスの自動化やワークフローの作成、認証の設定はできる。
SharePointは高度なカスタマイズがしやすく、ローコード(最低限のソースコードの記述)開発ツール「Microsoft Power Apps」で作成したアプリケーションとの連携も可能だ。ただしSharePointのカスタマイズは専門知識を必要とし、メンテナンスに時間がかかりやすい。すぐにファイルを共有したい企業にとっては負担になる可能性がある。
違い5.セキュリティ
暗号化やアクセス制御などのセキュリティ機能は、BoxとSharePointの両方に備わる機能だ。保存中および転送中のデータを保護するためにファイル全体を暗号化する「ディスクレベルの暗号化」を使用し、ファイルへのアクセスを正当なユーザーに限定する機能も提供する。機密性が高いデータに対し、より厳格な認証を適用し、不正アクセスを防ぐ「データ損失防止」(DLP:Data Loss Prevention)機能もある。
Boxは、社内外からの通信を信用しないセキュリティモデル「ゼロトラスト」を採用している。使いやすさを優先しているため、セキュリティの一部が犠牲になることがある。これに対してSharePointでは詳細な認証設定が可能だが、複雑さが原因で不具合につながる可能性がある点に注意が必要だ。
違い6.価格
SharePointを使用するには、Microsoft 365のサブスクリプション契約が必要だ。企業の規模や必要な機能、ライセンスモデルに応じて料金は異なる。最も安価なプランは「Microsoft 365 Business Basic」で、エンドユーザー1人当たり月額899円だ(2024年6月時点)。このプランはSharePointの他、OneDriveやWebアプリケーションおよびモバイルアプリケーション版のMicrosoft 365を含む。1人当たり上限1TBのクラウドストレージも提供する。
Boxは年間契約の場合、法人向けプラン「Business」が1人当たり月額1881円だ。電子署名や容量無制限のストレージが利用できる他、Microsoft 365、Google Workspace、Salesforceなどのサードパーティー製品との連携機能を含む。全てのプランで14日間の無料トライアルを提供している。
SharePointとBoxには、それぞれに強みと弱みがある。Boxは特定のベンダーに縛られずにシンプルさを求める企業に適する。一方、SharePointは、他のMicrosoft製品との連携や多機能性を求める企業に適する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.