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「テレワークをやめる」と失われてしまう“あの利点”とは?多様な働き方の良さを再考

企業はテレワークを継続するかどうかや、テレワークを許可するかどうかを判断する際、何を基準に検討すればいいのか。テレワークがもたらす具体的なメリットを考えてみよう。

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 企業はテレワークを継続するかどうか、テレワークを許可するかどうかを決める際、何を基準にして検討すればいいのか。ポイントになるのは、企業や従業員にとってどのようなメリットがあるのかや、環境に対してどのようなメリットがあるのかだ。テレワークがもたらすメリットを具体的に考えてみよう。

「テレワークをやめる」と失われる利点とは?

 コンサルティング会社McKinsey & Companyが2022年に実施した調査「Americans Are Embracing Flexible Work -- and They Want More of It」によると、働き手はテレワークを含む「柔軟な勤務形態」を重視する傾向にある。新しい仕事を求める理由として、テレワークを含む柔軟な勤務形態を選択できることが、より良い給与や、より良いキャリアの機会を得られることに次いで3番目にランクインした。この設問では、米国の1万1958人が回答した。

 テレワークの制度を取り入れることで、働き手の要望に応えることになり、結果として従業員の満足度や生産性を高められる可能性がある。

 環境への負荷軽減にもテレワークは貢献する。これも企業がテレワークの制度を取り入れる理由になり得る。具体的なメリットは次の通りだ。

1.自動車通勤で排出される二酸化炭素量が減少

 自動車で通勤していた従業員がテレワークに移行すれば、自動車から排出される二酸化炭素の排出量が減る。

 イェール大学(Yale University)の経済学教授を務めるケネス・ギリンガム氏も「テレワークが増えれば自動車からの二酸化炭素量の排出が減り環境負荷を軽減させる」と述べる。

 人事調査会社Global Workplace Analyticsの調査結果もこの考えに同調している。同社が開発した「Telework Savings Calculators」によると、テレワークを実施可能な業務に従事する従業員が勤務スケジュールの半分をテレワークにした場合、温室効果ガスの排出量は5400万トン減少するという。Telework Savings Calculatorsはテレワークにひも付く潜在的なメリットを評価するための計算ツールで、テレワーク関連のデータやテレワークの意思決定に関わる人物へのインタビューなどを基に構築した仮説に基づいて設計されている。

2.オフィスで食べる食品の包装ごみが減少

 Boston College(ボストンカレッジ)の社会学部准教授で、テレワークや週4日勤務制などの働き方を研究しているウェン・ファン氏は「オフィスで働いていると、包装されたスナックといった環境負荷が高い食品を取りがちだ。自宅で調理した料理の方が環境負荷を抑えられる可能性がある」と話す。

 2021年2月、世界自然保護基金(WWF)のオーストラリア支部は同国内で販売されている食品包装がどの程度リサイクル可能かについて調査した。その結果、調査対象とした食品の80%以上がリサイクルできない包装材を使用していることが分かった。調査対象はヨーグルトやシリアルなど6つのカテゴリーの82製品だ。

3.オフィスで使う冷暖房が排出する二酸化炭素量が減少

 テレワークの拡大に合わせてオフィスを縮小する企業がある。オフィスが縮小すれば冷暖房のエネルギー消費量が減る。その結果、企業が排出する二酸化炭素量も減ると、サセックス大学のエネルギー政策教授、スティーブ・ソレル氏は説明する。

4.飛行機の運行で排出される二酸化炭素量が減少

 対面の会議を、オンラインで参加できる会議やイベントに切り替える動きがある。会議やイベントの開催地まで移動するために飛行機を使う機会が減れば、飛行機から排出される二酸化炭素量は減少する。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年の全世界のエネルギー関連の二酸化炭素排出量のうち2%が航空機によるものだった。

テレワークによる環境負荷の軽減効果を半減させる行動とは

 テレワークの普及は環境に良い影響を及ぼす可能性があるものの、ソレル氏は「テレワークは環境負荷を減少させるための万能薬ではない」と指摘する。従業員や企業の以下の行動はテレワークによる環境負荷軽減の効果を半減させる可能性がある。

  • 自分しかいない空間で働くことで従業員が業務に集中できなくなり、自動車で出掛ける
  • 従業員の人数が少なくてもオフィスの冷暖房を付けたままにする

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