「BroadcomによるVMware買収」がユーザー企業にもたらした“不安”の正体:VMware買収でインフラ戦略はどう変わるのか【前編】
BroadcomがVMwareを買収したのは2023年11月のことだ。それ以前にもBroadcomは、ソフトウェアベンダーの買収を繰り返している。その狙いと、VMware買収がユーザー企業にもたらしている影響とは。
半導体ベンダーBroadcomは2023年11月に仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを買収した。Broadcomは近年、ソフトウェアベンダーの買収を繰り返している。同社は2018年にソフトウェアベンダーCA Technologiesを、2019年にSymantecの法人向けセキュリティ事業を買収した。Broadcomが企業買収を繰り返す狙いは何か。一方で同社によるVMware買収は、VMware製品のユーザー企業にどのような影響を与えているのか。
VMwareユーザーが抱く“不安”の正体
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BroadcomによるVMware製品の販売戦略
Broadcomが企業買収を繰り返す背景には、データセンター事業者やユーザー企業向けのソフトウェア製品のポートフォリオを拡充して、売上高と利益を拡大する狙いがあると考えられる。Symantecを買収した際、BroadcomのCEOホック・タン氏は「インフラ分野におけるソフトウェアの顧客基盤が拡大することを楽しみにしている」と述べた。
VMwareの買収もその戦略の一環だと捉えることができる。VMware買収によってBroadcomが狙ったのは、データセンター事業者やユーザー企業がデータセンターで利用している重要なソフトウェア製品群を獲得することで、その顧客基盤を自社に取り込むことだった可能性がある。
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)で主席アナリストを務めるサイモン・ロビンソン氏は、VMwareの仮想化製品は過去15年から20年の間に、ユーザー企業のデータセンターで広く使われるようになった点を指摘する。「Broadcomは世界各国のデータセンターを利用している大企業を顧客にすることを狙っている」とロビンソン氏は語る。
一方でBroadcomによるVMware買収がVMware製品の既存顧客に及ぼしている影響は、平穏とは言えない。BroadcomはVMware製品のライセンスに関して、従来の永久ライセンスを廃止してサブスクリプション型のライセンスに移行している。複数の製品や機能をバンドルした形で提供する結果、実質的な値上げにつながっている。
クラウドサービスベンダーCloudBolt Softwareは、Amazon Web Services(AWS)と共同で調査会社のWakefield Researchに調査を依頼した。IT意思決定者300人を対象に、BroadcomによるVMwareの買収が自社の計画にどのような影響を与えたかを調べた。CloudBolt Softwareが2024年6月に公開したその調査結果によると、調査に参加したIT意思決定者の95%が、Broadcomによる買収が自社のIT計画に与える影響を懸念していた。IT意思決定者が懸念している主な懸念事項は、価格の上昇だ。CloudBolt Softwareによると、価格の上昇を受け入れる必要があると感じているIT意思決定者もいるという。
VMware製品はデータセンター内の仮想化インフラとしてさまざまな企業が利用している。VMwareでの仮想化基盤で動かすことを前提としたサードパーティーのソフトウェアもある。VMware製品から他製品への移行を検討するユーザー企業は、移行の範囲が全面的であれ部分的であれ、リスクと混乱を避けられない。
次回はVMware製品がユーザー企業のデータセンターでどのような位置付けとなっているのかを踏まえて、VMware製品をベースにした仮想インフラの行方を考える。
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