Broadcomのライセンス変更で「VMware離れ」が起きるとは限らない訳:ストレージ仮想化の選択肢はどう変わる?
BroadcomはVCF 9の提供開始と同時に、ストレージ管理機能「vVol」の次世代版を利用可能にする。VMwareの買収以来、同社製品にさまざまな変更を加えてきたBroadcom。これはどのような結末を招く可能性があるのか。
仮想化ソフトウェアを含むVMware製品群を提供するBroadcomは、プライベートクラウド構築用製品群の次期バージョン「VMware Cloud Foundation 9」(VCF 9)を提供するのと同時に、仮想マシンごとのストレージ管理機能「VMware vSphere Virtual Volumes」(vVol)の次世代版を利用可能にする。2023年11月にVMwareを買収して以来、永久ライセンスを廃止するなどVMware製品群にさまざまな変更を加えてきたBroadcom。この変更から、業界関係者はVMware製品に関するある結末を予測している。どういうことなのか。
ライセンス変更があっても「VMware離れ」は起こらない?
vVolsを使うことで、サードパーティー製ストレージの機能がVCFによるインフラ内に拡張される。vVolsは、ストレージのハードウェアを抽象化することで、仮想マシンやアプリケーションのニーズに基づいて自動的にプロビジョニング(インフラのリソースを配備すること)を自動化する。
2023年に提供開始した、ストレージのみを拡張可能な分散ストレージ機能「vSAN Max」といった近年の機能追加により、VMware製品はユーザー企業が求める大規模インフラを構築するための要望により広く応えられるようになってきた。コンサルティング会社Silverton Consultingの創設者で社長を務めるレイ・ルケッシ氏は、「サードパーティーのストレージベンダーがハイブリッドクラウド向けに提供する製品・サービスの成熟度も上がっている」と話す。
ルケッシ氏は、VMware製品の可用性や選択肢の豊富さを維持するために「Broadcomはサードパーティー製品のサポートを続ける必要がある」とみている。大半のユーザー企業がストレージ仮想化ソフトウェア「VMware vSAN」(以下、vSAN)標準の機能を使用する可能性が高いとしても、Broadcomはサードパーティー製ストレージがVCFにアクセスできる方法を維持しなければならないと同氏は指摘する。「VMwareはユーザー企業の選択肢を広げることを重視し、さまざまなベンダー製品と連携できるように取り組んできた」(同氏)
ユーザー企業の選択肢
2023年11月にBroadcomに買収されるまで、VMwareは同社の仮想化ソフトウェアをそれぞれ個別の製品として販売してきた。ユーザー企業はvSANをスタンドアロン製品として購入可能だった。VMware製品がBroadcomの傘下に入ってからは、ユーザーは複数の製品を1つにまとめたバンドルサービスとしてライセンスを購入しなければならなくなった。
VMwareの広報担当者によると、サードパーティー製ストレージの使用を選択したユーザーは、バンドルサービスの一部としてvSANの料金を支払うことで、そのストレージにアクセスできる。
2024年8月下旬にBroadcomが開催したカンファレンス「VMware Explore 2024」では、数社のストレージベンダーが新しいvVols機能をサポートする計画を発表した。NetAppとPure Storageは、新しいvVolsの早期採用企業としてVMwareのパートナーとなることを明らかにしている。
NetAppで最高技術責任者(CTO)兼シニアバイスプレジデントを務めるジョンシ・ステファソン氏は、「大量のストレージクラスタを抱える企業は、サードパーティー製ストレージを選ぶ傾向にある」と語る。ステファソン氏によると、Broadcomによる買収とライセンス変更のニュースが流れた当初、NetAppのユーザー企業はVMware製品の代替を探していた。
だがVMware製品の成熟度に代わる選択肢が見つからず、ユーザー企業がVMware製品の利用を続ける可能性が高くなっているという。「当初は『VMwareに代わる製品は何か』という質問が多かったが、そうした人も『VMware環境を最適化するにはどうすればよいか』と尋ねるようになっている」(ステファソン氏)。背景にあるのは、実際にVMware製品から別の製品に移行するには、長い時間がかかることだ。
「VMwareのソフトウェアはハードウェアに依存しないため、ある程度の柔軟性をユーザー企業に提供できる可能性が高い」。そう語るのは、調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるブレント・エリス氏だ。VMwareのソフトウェアがさまざまなハードウェアやクラウドサービスで動作することは、Broadcomにとって有利に働く。それを前提に、エリス氏は「バンドルサービスの中でどのソフトウェアをどのようにデプロイ(使用できる状態にすること)するかは、各ユーザー企業の利用環境やニーズに左右される」と述べる。
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