「VMwareを脱却したい派」と「値上げも歓迎派」それぞれの意見は:2025年のVMwareはどうなる【前編】
BroadcomはVMwareを買収後、さまざまな変化を起こした。否定的な見方をする顧客やアナリストもいる一方で、Broadcom買収後のVMwareの姿勢を評価する意見もある。
半導体ベンダーのBroadcomは2023年11月、仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを690億ドルで買収した。この巨額の買収により、VMware製品を利用するユーザー企業やアナリストは、大きな変化が訪れると確信していた。
実際に、BroadcomはVMwareの買収後、製品のライセンスモデルを変更したり、製品ラインアップを削減したりした。これに対してユーザー企業が訴訟を起こした例もある。ユーザー企業やアナリストは現状の変化をどのように受け止めているのか。
「買収後のVMware」はどう受け止められているのか
「さまざまな顧客がVMware製品の代替となる仮想化ソフトウェアや、コンテナなどの全く別の仮想化製品の採用を検討している」と、調査会社NAND Researchの創設者兼プリンシパルアナリスト、スティーブ・マクドウェル氏は語る。
「現在利用中のVMware製品による仮想化環境を再現できる、適切な技術の組み合わせを見つけることは難しい。一部の顧客は適切な代替手段を見つけられず、不要なサービスが含まれた高額なサブスクリプション料の支払いを余儀なくされている」。マクドウェル氏はそう語る。Broadcomが投資分のリターンを回収できたとしても、ユーザー企業のIT担当者は苦しむことになるとマクドウェル氏はみる。
2024年の変更点
Broadcomは2024年に、VMwareの製品ポートフォリオをサブスクリプションプランとして購入できる体系に変更した。従業員数の削減や、リセラーとの関係の再構築も実施した。
プライベートクラウド構築用製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)は、現在のVMwareの主力製品だ。顧客が以下の製品を全て利用したい場合、現実的にVCFのライセンスを購入する必要がある。
- ストレージ仮想化ソフトウェア「VMware vSAN」
- ネットワーク仮想化製品群「VMware NSX」
- データベース管理ツール「VMware Data Services Manager」
「顧客は『Amazon Web Services』(AWS)や『Microsoft Azure』などのパブリッククラウドを利用する際の、高額で予測不可能なコストから脱却したいと考えている」と、Broadcomの最高経営責任者(CEO)を務めるホック・タン氏は語る。タン氏によれば、VCFは以下を提供する。
- クラウドインフラ利用体験の改善
- VMwareのSD-WAN(ソフトウェア定義WAN)製品「VeloCloud SD-WAN」を使った拠点間通信
- コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」を利用するための製品群「VMware Tanzu Platform 10」によるコンテナ管理
- AI(人工知能)アプリケーションの開発基盤
Broadcomは2024年8月に開催したイベント「VMware Explore」でプライベートクラウドに焦点を当てたVCFの新機能を複数発表した。Broadcomはそれらの機能を次期バージョンの「VMware Cloud Foundation 9」(VCF 9)に搭載する計画としているが、VCF 9の発売日は公表していない。
「VMwareの製品群がVCFに集約されたことで顧客は混乱し、その決断を非難した。しかしBroadcomが戦略を後退させることはないだろう」。調査会社Forrester Researchのアナリスト、ナビーン・チャブラ氏はそう述べる。「Broadcomは顧客がVMware製品に深く依存していることを理解している。VMwareの買収に690億ドルを投じたのは無駄ではなかった」(同氏)
通信事業者AT&Tは、VMware製品のメンテナンスや、アップグレードのサポートについて問題があるとしてBroadcomを提訴し、VMware製品からの移行を検討中だと明かした。アナリストたちは、契約更新の際に新しい料金に直面するにつれ、より多くのユーザー企業がAT&Tと同様の反応を示すと予測している。
チャブラ氏は、過去1年間にBroadcomによってVMware製品の顧客サポートを絶たれたという、複数のユーザー企業と話した。それらのユーザー企業はVCFを契約するのではなく、代替製品を探すと決めた。「ユーザー企業はサポートを重視しないベンダーとの取引を望んでいない」と同氏は語る。
支持する意見
BroadcomがVMwareのビジネスに施した大規模な変更を、誰もが非難しているわけではない。
「Broadcomは独立したVMwareユーザーグループに積極的に協力している」と、ミネソタ州の州立大学群Minnesota State Colleges and Universitiesのエンタープライズシステムエンジニアであり、VMwareユーザーグループVMUG(VMware User Group)のバイスプレジデントであるマット・ヘルドスタッブ氏は語る。
「タンCEOはボストンなどVMUGの複数の地域会議に出席し、VMware製品開発のロードマップに、ユーザーグループにより深く関与してもらいたいと語った」(ヘルドスタッブ氏。これは、VMwareの過去のCEOや経営陣よりも積極的な取り組みだ。「Broadcomはユーザーグループと一緒にVMware製品のビジョンを描きたいと語っており、これはわれわれにとっては非常に有益だ」と同氏は語る。
ヘルドスタッブ氏は、BroadcomがVMware製品のコストを引き上げたことを認めている。だが、これは過去数年間にわたり、ITベンダーが実施している価格上昇と類似していると指摘する。
「ITインフラやパブリッククラウド、プライベートクラウドのコスト変動はBroadcomに限ったことではない。値上げによって、ユーザー企業はITインフラの管理方法をより工夫するようになるというポジティブな側面もある」(ヘルドスタッブ氏)
次回はVMware製品の代替製品について解説する。
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