未経験者もセキュリティ人材に? 「攻撃者のように思考する」研修の真意:新卒や転職者も受講対象
英国の金融機関がサイバーセキュリティ専門家の育成のため、従業員を対象にした研修プログラムを用意した。受講者は専門知識を持っている必要はなく、新卒や転職者でも構わないという。どのような狙いがあるのか。
英国の住宅金融組合Nationwide Building Society(以下、Nationwide)は、同社の従業員向けにサイバーセキュリティ講座を設ける計画だ。サイバーセキュリティトレーニングベンダーCapslockと連携し、研修プログラムを用意する。
「攻撃者に対抗するために、攻撃者を理解し、攻撃者のように考える」。Nationwideの研修プログラムについて、Capslockの創業者兼CEOであるアンドレア・カレン氏はこう説明する。この言葉にはどのような意味があるのか。
「攻撃者を理解し、攻撃者のように考える」の真意とは
大手銀行でサイバーセキュリティに従事した専門家の一人は、「攻撃者を理解し、攻撃者のように考える」というカレン氏の意見に同意する。同氏によると、サイバーセキュリティの専門家と攻撃者は、目的は違うものの、同じ技術や知識を利用する。攻撃の手口を知っているため、攻撃者だった人がサイバーセキュリティ分野に携わることもある。「サイバー攻撃者は常に脆弱(ぜいじゃく)な部分を探そうとする。だからサイバーセキュリティの専門家は、攻撃者のように考える必要がある」(同氏)
受講者は、Capslockが提供する研修プログラムを受講し、サイバーセキュリティの専門家を目指す。Certified Cyber Security Practitioner(Ce-CSP)という16週間の研修プログラムを修了すると認定資格が授与される。
カレン氏によると、受講者はサイバーセキュリティに関する専門知識や技術的なバックグラウンドを持っている必要はない。「サイバーセキュリティに情熱を持ち、さまざまな人生経験から得た応用可能なスキルがあれば、新卒や転職者でも構わない」(カレン氏)
Nationwideは、約1万8000人の従業員と約1600万人の顧客を抱える。同社のチーフセキュリティおよびレジリエンスの責任者を務めるデイビッド・ボダ氏は「この研修プログラムは、当社の従業員を啓発するだけでなく、英国のサイバーセキュリティ業界の発展に寄与する」と述べる。
サイバーセキュリティ分野の専門家に対する需要は増大する一方、需要に見合うだけの専門家は不足している。2025年1月、英国会計検査院(NAO:National Audit Office)は「Government cyber resilience」(サイバー攻撃に対する英国政府の回復力に関する報告書)を公開した。同報告書によると、サイバー攻撃を受けた際の回復力(レジリエンス)を高める上で最大のリスクは「スキルを持つ職員の不足」にある。2023〜2024年度、政府のサイバーセキュリティ職の3分の1は空席か、給与が高額な非正規雇用の職員で占められていた。複数の部門ではサイバー関連職の半数以上が空席で、セキュリティアーキテクトの70%は非正規雇用の職員だった。
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