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AIエージェントにも「RAG」は欠かせない? 企業はまず何から取り組むべきか:なぜ今「RAG」が不可欠なのか【後編】
AIエージェントの構築においても、「RAG」(検索拡張生成)は重要な役割を果たす。企業はその真価を引き出すために、何から取り組むべきなのか。
自社のナレッジ(知識)や文脈を理解するAI(人工知能)システムやAIエージェントを構築する企業にとって、「RAG」(検索拡張生成)は欠かせない存在になりつつある。
ただし、RAGの導入に当たっては、幾つかのポイントを押さえておかなければ、その真価を引き出すことはできない。企業はまず何から取り組むべきなのか。RAGの代表的なユースケースとともに、RAG導入で準備すべきことを解説する。
AIエージェントにも「RAG」は欠かせない? 企業は何から取り組むべき?
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連載:なぜ今「RAG」が不可欠なのか
AIエージェント時代に備える
RAGは主に以下のような用途での活用が期待されている。
- 企業向けAIアシスタント
- RAGを活用することで、AI搭載のチャットbotや仮想アシスタントが、従業員や顧客にリアルタイムかつ正確なサポートを提供できる。FAQや社内ポータルに代わるインターフェースとしても有効だ。
- 調査や分析業務の自動化
- RAGを組み込んだAIシステムは、法務、医療、金融などの専門分野におけるトレンド分析や規制の調査を自動で実施できる。企業のポリシー評価やコンプライアンスチェックの効率化にも有効だ。
- カスタマーサポートの高度化
- RAGを活用することで、ナレッジベースや対話履歴、製品ドキュメントを参照しながら、顧客に対してコンテキストに即した回答を提供するAIシステムを構築できる。カスタマーサポートの一貫性や品質向上に貢献する。
特に注目すべきは、AIエージェントの構築におけるRAGの重要性だ。単なる応答生成にとどまらず、自律的に推論、意思決定、行動までをカバーするAIエージェントにとって、正確で最新の知識にアクセスできる環境は欠かせない。
RAGを導入するなら何から取り組むべき?
- データ戦略とナレッジマネジメント(知識の構造化と共有)
- RAGの性能を最大化するには、企業全体でデータの構造や検索基盤を見直す必要がある。特に、高品質なデータレイクやベクトル検索エンジンへの投資が鍵となる。Cloudera、Qlik、Informatica、Databricks、Oracleなどが提供するデータプラットフォームは、構造化および非構造化データの統合と利活用において有効だ。
- セキュリティとアクセス制御
- RAGが企業の機密情報にアクセスする場合、高度なセキュリティとコンプライアンス体制の構築は不可欠だ。厳格なアクセス制御、データの暗号化、監査ログの整備を通じて、AIモデルの出力がガバナンス要件や規制に準拠するようにする必要がある。
- AIモデルの最適化とパフォーマンスチューニング
- RAGの応答速度と精度を高めるには、検索インデックスやクエリ処理の最適化が重要となる。ベクトル検索やBM25などのアルゴリズムとLLMの連携をチューニングすることで、検索精度とリアルタイム性を両立できる。MongoDB、Google AlloyDB、DataStax、Elastic、Pinecone、Oracle 23aiなどは、ベクトル検索に特化したデータベースとして注目されている。
- ユーザーエクスペリエンスと信頼性
- ユーザーの信頼を得るためには、AIの出力内容に対する透明性の確保が不可欠だ。
出典情報、信頼度スコア、検証可能なリンクを提示することで、回答の裏付けが取れ、利用者の意思決定を支援できる。
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