今、サプライチェーンに「見える化」が必要な理由:サプライチェーンビジビリティーとは何か【前編】
変化の激しい時代においては、サプライチェーン全体を可視化することで、企業の競争力を強化できる可能性がある。“見える化”で重要な役割を果たす「SCV」について解説する。
サプライチェーンビジビリティー(SCV)とは、部品やコンポーネント(複数の部品を組み合わせた構成物)、原材料などが、製造元から最終目的地に至るまでの移動状況を追跡する能力および仕組みのことだ。SCVは、サプライチェーン全体のリアルタイム情報を提供する。企業はその情報を基に、業務の監視、物流の最適化、意思決定の改善などを進めることができる。
SCVの主な目的は、サプライチェーン全体の透明性を高め、サプライヤー、製造業者、流通業者、小売業者、顧客といった全ての関係者が、正確かつタイムリーな情報を確認し、活用できるようにすることだ。
サプライチェーンのグローバル化と物流ネットワークの複雑化が進む中で、「完全なSCV」の実現は、あらゆる業界の企業にとって優先課題となっている。“物流のブラックボックス化”が進む今、企業にSCVが欠かせない理由とは。
なぜSCVが重要なのか
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サプライチェーンを守るためには
SCVはサプライチェーン全体を可視化する。これによって企業は、リスクを軽減し、業務の効率を向上させ、コンプライアンスを強化できる。障害発生時においても、迅速な対処が可能になる。
一方で、SCVを導入しておらず、サプライチェーンの可視化が難しい企業は、業務全体を把握、管理しづらいため、業務の効率が悪くなるだけではなく、重大な障害を引き起こす可能性もある。SCVは、サプライチェーンのアジリティー(俊敏性)を確保し、リスクを低減し、顧客の期待に応えるために不可欠だ。
SCVによって企業が享受できるメリットは以下の通りだ。
- 業務効率の向上
- リアルタイムに流通の状態を確認できるため、ボトルネックの特定、プロセスの最適化、生産や配送の遅延防止が可能になる
- 意思決定の高度化
- データに基づいたインサイト(洞察)を利用し、需要予測、在庫や人員などのリソースの最適配分、過剰在庫コストの削減が可能になる
- リスクの軽減
- SCVを活用することで、企業は遅延、サプライヤーの不具合、地政学的リスクといった潜在的な障害を事前に把握し、業務に影響が出る前に対処できるようになる
- 競争優位性の獲得
- 優れたSCVを実現している企業は、市場の変化に素早く順応し、リードタイムを短縮することで、競合企業との競争における優位性を確立しやすくなる
- 法令順守(コンプライアンス)の強化
- SCVは業界規制や貿易政策への準拠に対する支援、監査、法的要件に必要となる正確な記録管理とトレーサビリティー(追跡性)の確保に貢献する
- 顧客満足度の向上
- 顧客は迅速な配送やリアルタイムでの注文状況の確認を期待している。SCVを使ってこれらの期待に応えることで、企業は顧客満足度を向上させることができる
SCVはどのように機能するのか
SCVは、サプライチェーン全体を可視化するための基盤技術として、データ分析や自動化ツールなどを取り入れている。SCVを構成する要素と技術は以下の通りだ。
- 追跡と監視
- IoT(モノのインターネット)センサー、「RFID」(無線個体識別)タグ、GPS(全地球測位システム)追跡、ブロックチェーン技術を用いて、企業は商品の流れをリアルタイムで追跡、監視する
- データの集約
- SCVシステムは、倉庫管理システム(WMS)、基幹業務(ERP)システム、輸送管理システム(TMS)など、複数の情報源からデータを集約し、一元的に管理する
- 予測分析
- AI(人工知能)技術を使うことで、サプライチェーンの傾向(トレンド)を予測し、今後発生する可能性のある遅延を検出するとともに、リスクを軽減するための代替ルートやサプライヤーの提案が可能だ
- リアルタイムのデータ共有
- クラウドサービスを活用したSCVは、サプライチェーンの関係者間でリアルタイムのデータ共有を実現する
- トレーサビリティーの確保
- 「ブロックチェーン」技術を使って、改ざん不可能な台帳にサプライチェーンでの全取引を記録することで、SCVのトレーサビリティーやセキュリティを確保する
次回はSCVが担う役割や、企業がSCVを導入する際の課題を解説する。
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