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Windows 10サポート終了迫る、それでも「Windows 11」に移行しない企業の言い分無理な買い替えを避ける“現場の本音”

Windows 10のサポート終了が迫る中、移行が進まない企業もある。そうした企業に対して、コストをかけた無理な更改を求めるだけでは解決にならない。現実的な移行策とは。

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 MicrosoftのクライアントOS「Windows 10」のサポート終了が迫っているが、「Windows 11」への移行にまだ着手していない企業もある。そうした企業は、サポート終了を“脅し文句”としてPCの入れ替えを迫られても、移行の決断ができるわけではない。Windows 11への移行を促すPC供給事業者とは、異なる観点でPC管理を見ていることも少なくないからだ。いまだにWindows 10を使っている企業が、移行しない背景にはどのような事情があるのか。

「Windows 11にすぐにでも移行すべき」でも進まないのが現実

 OSアップグレードやPC更改の必要性は、PCを供給する販売事業者にとっても頭を悩ませる課題だ。セキュリティリスクが増大することを理由に、ユーザーに早期の移行を迫りたくなるのも無理はない。

 だが、マネージドITサービスを提供するApogeeが取るアプローチは異なる。同社は顧客に対し、コンサルティングを踏まえて複数の選択肢を提示しており、2025年10月に控えるサポート終了を材料に不安をあおりはしない。同社のマネージドITサービス部門責任者であるサム・プロクター氏は、Windows 10のサポート終了に関しては十分な告知が行われ、繰り返し注意喚起がなされているが、それでもなお、さらなる啓発活動が必要だと指摘する。

 「Windows 11への移行期限は2025年10月14日だ。すぐにでもWindows 10からWindows 11に移行しなければならない段階だが、新しいハードウェアの購入であれ、既存のハードウェアでのアップグレードであれ、差し迫った状況だという認識はわれわれが想定するほどには浸透していない」(プロクター氏)

予算の問題

 Windows 11に移行していない企業が一定数存在する背景には、まず移行に必要な予算やリソースが不足しているという課題がある。「新しいデバイスを購入するための予算を十分に確保できていない企業が多い。社内の他部門に予算が振り向けられ、PCの刷新にまで予算が回らないケースも少なくない」。プロクター氏はそう説明する。

 「多くの企業は、従来のように設備投資(CAPEX)でPCを購入するのではなく、レンタルやリースといった運用費(OPEX)モデルを採用し、多額の初期投資を回避したいと考えている」とも、プロクター氏は語る。

 人的リソースの観点では、人員削減の結果として、全社規模の大型PCアップグレードに対応できる人材が足りないという企業もある。こうした課題に対し、「移行作業を外部に委託し、ほとんど手間をかけない方法を採用している企業もある」という。

 外部に委託する方法は、予算のバランスが取りやすい。「以前はPC入れ替えを社内リソースで実施するケースの方が圧倒的に多かったが、市場では運用型モデルへの転換がいっそう進んでいる」(プロクター氏)

複数のセキュリティ問題

 移行を先延ばしにしている企業や、そもそも移行の必要性を認識していない企業も存在する。プロクター氏はそうした企業に対して、早期の移行を強く勧めている。なぜなら、Windows 10を使い続けることには、セキュリティ面を中心としたリスクが伴うからだ。

 Windows 10の継続使用を推奨しない理由としてプロクター氏が挙げるのが、セキュリティに関連する幾つかの問題だ。まず2025年10月14日のサポート終了を迎えた後は、基本的にはセキュリティパッチが提供されなくなるが、これによって各種のサイバーセキュリティ規制に準拠できなくなる問題がある。

 例えば英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)が提供するセキュリティ認証「Cyber Essentials」や「Cyber Essentials Plus」の要件を満たせなくなる恐れがある。これらの認証は、最新のセキュリティパッチが適用されたサポート対象のOSを使用することを要件の一つとしているからだ。

 さらに、その影響は企業のサイバー保険にも及ぶ。「保険料の引き上げや補償条件の変更といったコスト増加を招く可能性もある」と、プロクター氏は警鐘を鳴らす。

ハードウェアのライフサイクル問題

 Apogeeがサポート終了を“恐怖材料”としてPC更改を顧客に迫らない背景には、ハードウェアのライフサイクルをできるだけ延ばしたいというニーズが高まっていることもある。

 同社は顧客の現状を正確に把握するため、独自の評価ツールを用いてどのような支援が可能か、時間をかけて丁寧に話し合っている。顧客が現在使用しているPCを確認し、その健全性やBIOSのバージョン、RAM(メインメモリ)、バッテリーの状態などを調査する。その上で、Windows 11へのアップグレードが可能かどうか、さらにはアップグレード後に適切なパフォーマンスを発揮できるかどうかを検証するという。

 選択肢は一つではない。既存のPCを活用してまずはWindows 11に移行し、その後準備が整った段階で、AI(人工知能)関連の処理を実行するためのハードウェアを備えたPCを導入するといった柔軟なアプローチもあると、プロクター氏は付け加える。

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