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オワコン化から再浮上 AR/VRに訪れた“まさかの展開”衰退論の裏で起きているXRニーズの変化

今、AR/VR市場が“重大な転換点”にあるという。売り上げが急速に回復しているだけでなく、特定のタイプのデバイスに特化した新興ベンダーの台頭が目覚ましいというのだ。一体何が起こっているのか。

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 調査会社IDCは、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)市場の世界的なトレンドを調査したレポート「Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker」を3カ月ごとに発行している。最新のレポートによると、AR/VR市場は2025年第1四半期(1〜3月)に急激な回復を見せた。前年同期比18.1%増を記録したばかりか、今後の長期的な拡大が予想されるという。最新のトレンドを紹介する。

回復の兆しを見せたAR/VR市場の実情

 IDCは2025年のAR/VRデバイスの総出荷台数を前年比12%減少と予測するが、これは各ベンダーの製品開発の遅れにより、新製品の市場投入が少ないことが原因だ。IDCは2026年には、2025年比87%の成長を見ると予測し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)期間中に記録した総出荷台数1120万台を超えると見込む。2025年から2029年の5年間、AR/VR市場は年間平均成長率(CAGR)38.6%で推移すると予測する。

 ベンダーごとの市場シェアを見ると、この分野をリードするMeta Platformsが50.8%で、トップを維持した。注目すべきは、新興ベンダーの台頭だ。XrealはARグラス「XREAL One」シリーズの出荷が好調だったことから、12.1%とMeta Platformsに次ぐ2位につけた。4位となったのは、アナリストが“驚異的”と評した前年同期比268.4%の成長を見せたVitureで、市場シェアは6.2%だった。5位のTCL Electronicsも91.6%という目覚ましい成長を記録した。市場シェアは4.2%だった。

 Xreal、Viture、TCL Electronicsという新興ベンダー3社が合計で22.5%という大きな市場シェアを形成したことは特筆に値する。この3社は、視覚情報をカメラではなく、自分の目で認識する「光学シースルー」(OST:Optical See Through)方式のスマートグラスに特化している。ここから、重厚なヘッドマウントディスプレイ(HMD)から、より装着しやすい“眼鏡型”という新しい形状と、そこから生まれるイノベーティブな体験に消費者のトレンドが移りつつあることが分かる。

 同時に、すでにベンダーの淘汰(とうた)が起きていることもうかがえる。「その他」のカテゴリーでは、市場に参入している企業の数が47.2%という急激な減少を記録しているのだ。市場をけん引してきた既存の有力ベンダーと、焦点を絞った製品戦略を持つ新興ベンダーに、市場が二極化している傾向が浮き彫りになった。

 今四半期には、シェア上位に、AR/VR分野で強力なプレイヤーであるソニーとAppleの名前がない。これは両社が、販売網に滞留している製品の在庫をさばくことに注力したのが要因だ。

今後の予測

 IDCのリサーチディレクター、ラモン・T・ラマス氏は、世界のAR/VR市場が重大な転換点を迎えていると語る。「かつてはVRデバイスが人気で、Meta Platforms、HTC、ソニーといった企業が市場の大部分を占めていた。しかし今後VRデバイスは衰退していくだろう。純粋なARデバイスについては、かつてはMicrosoftの後押しを受けて大きな期待を集めていたが、市場全体の中では小さなシェアにとどまりそうだ」

 同氏は、次なるトレンドは複合現実(MR)になると予測する。特に人工知能(AI)搭載「XR」向けOS「Android XR」の成功が鍵になると見る。XRとは、Extended Realityの略称で、VR、AR、MRといった技術を包括的に表す用語だ。「最も大きな成長を期待できるのがMRデバイスで、Appleを含む多くのVRベンダーがMRに軸足を移すだろう。GoogleのAndroid XRが市場に及ぼす影響も見逃せない。多くのスマートフォンベンダーがモバイルOS『Android』を採用したのと同じように、多くのXRベンダーがAndroid XRを採用するはずだ」(ラマス氏)

 IDCは、AR/VR市場は全体的に、一般消費者向けのゲームやエンターテインメント用途にとどまると予測する。しかし、スマートグラスは企業向けとしてもより幅広い支持を得るようになる可能性がある。

 デバイスのタイプごとの出荷台数について、MRデバイスは、2025年の330万台から2029年には1520万台以上に増加するとIDCは予測する。これは、米国における関税導入と供給状況の影響を鑑み、下方修正された数字だ。スマートグラスは220万台から860万台に増加し、ARデバイスは2029年までに45万7000台に到達すると予想している。

翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(株式会社リーフレイン)

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