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顧客対応がAIに置き換わっても「人間不要」になるとは言い切れない理由2028年までに顧客対応の7割をAIが担う?

Ciscoの調査で、顧客対応でのAIエージェント活用は浸透しており、2028年には7割がAIエージェントに置き換わるとの見方が示された。だが急速な変化による課題もある。「人とAI」の最適なバランスはどこにあるのか。

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人工知能 | CRM


 AI(人工知能)技術を活用して自律的にタスクを実行するシステム「AIエージェント」は、顧客対応の在り方を根本から変えようとしている。この事実は、Cisco Systemsが実施した調査から明らかになったものだ。調査によると、多くの企業がAIエージェントによる生産性やCX(顧客体験)の向上に大きな期待を寄せている。ただし「人ならでは」の顧客対応を求める意見や、倫理的なAI技術の活用を懸念する声もある。

 企業がAIエージェントの恩恵を最大限に引き出しつつ、リスクを管理するためには、何を理解し、どのような施策を実施すべきなのか。Cisco Systemsの調査結果から読み解く。

人とAIが共存するCXとは

 Cisco Systemsの調査「The Race to an Agentic Future: How Agentic AI Will Transform Customer Experience」は、B2BのIT企業が提供するCXサービスやサポートに関わるビジネスおよびIT分野の意思決定者7950人を対象としている。調査は2025年4月、30の国と地域で実施され、回答者は年間売上高1000万ドル以上(うち55%は年間売上高1億ドル以上)の企業に所属しており、その業種はITや製造業、金融サービスなど多岐にわたる。

 レポートによると、AIエージェントがもたらす未来のCXでは、エンドユーザーが新しいサポート担当者に状況を繰り返し説明する必要がなくなる。エンドユーザーが気付く前に問題が解決され、サポートに関するやりとりは個々のニーズやビジネスの成果に合わせて調整されるようになる。

 これらの利点は明確かつ魅力的であるものの、AIエージェント導入に対する企業の準備状況は「一様ではない」とCisco Systemsは指摘する。

 回答者はAIエージェントの利点を享受することを望んでいる一方、人ではなくAIエージェントとやりとりすることへの抵抗感も持っている。この調査では、そうした人々の感情面に加え、万が一システムが計画通りに機能しなかった場合に顧客企業との関係にどのような影響が及ぶかについても調べた。顧客満足度や信頼性に関して、AIエージェントによるサポートがうまく機能しないと、ブランドに対する印象が悪化する可能性がある。

 Cisco Systemsによると、今回の調査結果は一部の先入観を裏付けると同時に、一部の通説を覆すものだった。AI技術は急速に進化し、人々の働き方や生活、コミュニケーションの在り方を根本から変えつつあることは認識されていた。だがその影響が、顧客企業の期待にまで及んでいること、ITベンダーがAIエージェント活用の初期段階にある中で、それらの戦略を加速させることが急務になっていることは、回答者の想定からは外れていた。

 調査から得られた主な洞察として、Cisco Systemは次の3つを指摘する。1つ目は、CXの向上においてAIエージェントのメリットと需要が急増していることだ。回答者の93%が、AIエージェントによってよりパーソナライズされた、予測的で積極的なサービスを提供できるようになり、生産性とコスト削減を実現すると考えている。この需要はさらに高まり、回答者は2026年までに56%、2028年までに68%の顧客対応をAIエージェントが担うようになると予測した。

 2つ目は、AI技術への期待が高まっているにもかかわらず、人々は依然として人による顧客対応を求めていることだ。回答者からは、AIエージェントの効率性と人ならではのつながりを組み合わせることによって、CXを最適化したいという考えがうかがえた。回答者の96%が、パートナー企業とのやりとりにおいて「人間関係が非常に重要だ」と答えており、AIと人の適切なバランスを見いだすことが今日の企業リーダーにとって最重要課題の一つとなっている。

 3つ目は、エンドユーザーは企業が責任ある形でAI技術を導入しなければならないと認識していることだ。回答者の99%が、パートナー企業に対して、AIエージェントの倫理的な利用を保証するための厳格なガバナンス体制を示すことが重要だと答えた。顧客企業は透明性、セキュリティ、データバイアス(偏り)を排除するための取り組みを強く求めていることが分かる。

 Cisco Systemsのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高顧客体験責任者であるリズ・セントーニ氏は、今回の調査を通じてAIエージェント主導のCXに対する「圧倒的な需要と期待」が明らかになったことは「想定内だった」と話す。ただし、企業の顧客対応における重要な役割をAI技術が担うようになるという変化の速さは、予測を上回るものだったという。

 「ビジネスおよびIT分野の意思決定者は、パートナー企業が予想以上の速さでAIエージェントを活用することを期待している」とセントーニ氏は語る。CXは、AIエージェントを原動力とする変革によって、新たな時代を迎えようとしているのだ。

 「AIエージェントはサービスの在り方を根本から変え、個別最適化された応対を先回りして実行できるようにする。これによって、全てのエンドユーザーが『自分は特別に扱われている』という満足感を得られるようになると期待できる」(セントーニ氏)

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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