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生成AIに“負けない仕事”――客先常駐SE経験15年の筆者が考えてみた元SEの本音IT考

成功しても「当たり前」、失敗すれば「集中砲火」――客先常駐SE経験15年、酸いも甘いもかみ分けた元情シス副編集長がニュースの裏側を読み解きます。今回のテーマは「人間が生成AIに負けない仕事とは何か」です。

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 最近、SNSで「生成AIに丸投げしたほうが自分で作るより良い成果物ができる」「もう自分ではなくAIでよいのではと無力感を抱く」という投稿を見かけました。実際、多くの分野で「生成AIに任せた方が速い」と感じる場面は増えていて、人が担っていた業務の一部がAIに置き換わる流れは今後も続くと考えられます。こうした変化を踏まえてキャリアを考えるなら、作業速度や計算能力でAIと勝負しようとはしない方がよさそうです。

 私は、仕事において本当に重要なのは計算能力そのものではなく成果の再現性だと考えています。この前提に立ち、生成AIとの共存を考えるとすると、どのような力や役割が求められるのでしょうか。私は「課題翻訳者」「運用設計者」「効果測定者」の3つの役割が今後重要になると考えています(3つの役割は私が作った造語です)。それぞれ、「業務上の課題や制約、前提条件を分解し、生成AIに適切に伝える力」「業務に即した形で生成AIを安全かつ効率的に活用するためのルールや運用を設計する力」「生成AIが出力結果が正確かどうか、業務に役立つかどうかを評価する力」を持つ人を指します。これらの能力は、現時点ではAIが完全には代替できないと感じています。

 SNSではこんな話も話題になっていました。「経済学を学んでいない学生が、生成AIを使ってレポートを作成したものの、『その成果物が優れているかどうか判断できない』と経済学の教授に相談した」というエピソードです。結果として教授が驚くほどのできだったそうですが、生成AIでアウトプットは作れても、その価値を見極める役割はやはり“専門知識のある人”にしか担えないのだと感じました。

 つまり、生成AIのほうが速く、質の高いものを作れるとしても「自分は生成AIより劣っている」と落ち込む必要はありません。これからのキャリアにおいて重要なのは“どう使うか”“どう評価するか”という視点なのです。

(副編集長 ナカムラ)


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著者:副編集長ナカムラ

成功しても「当たり前」、失敗すれば「集中砲火」──。そんな客先常駐SEならではの悲哀を、15年間の現場経験で骨の髄まで味わった立場から、きれいごとではない運用のリアルを伝える。2017年にアイティメディアに入社し、@ITなどの媒体でエンジニア向けの記事を執筆。2025年10月よりTechTargetジャパン副編集長を務める。


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