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「脱VMware」は“正解”ではなかった――JRAがあえてVCFを使い続ける理由2000台のVMを一晩で移行

一部企業が「脱VMware」を進める中、JRAはあえて継続を選択した。パブリッククラウド移行を「割に合わない」と判断した根拠は何か。8000台のVMを抱える現場が選んだ、費用と安定性を両立する現実的な選択肢とは。

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 「脱VMware」「クラウド移行」がトレンドになりつつある一方で、あえて逆の決断を下した組織が、日本の中央競馬を運営する日本中央競馬会(以下、JRA)だ。

 JRAは公式Webサイトや競走馬データベース、職員の業務端末(VDI)など、約25件のシステムを集約した独自のプライベートクラウドを「統合IT基盤」として運用している。2015年の稼働開始以来、ハードウェアの更改などに合わせて進化を続け、今回で3回目の刷新となる「第3世代」を迎えた。

 約8000台の仮想マシン(VM)が稼働するこの巨大インフラの刷新に当たり、JRAはパブリッククラウドへの移行も検討した。だが至った結論は「費用対効果が見合わない」。移行作業をサポートサービスと連携しながら「内製化」することで、2000台のVMを一晩で移行させる成果を上げた。

 なぜJRAはパブリッククラウドを却下し、VMware製品を使い続けるのか。現場が評価した「代替不可能な価値」と、大規模なVM移行を成功させた「内製化」の舞台裏を解説する。

「パブリッククラウドは採算が取れない」と判断した根拠

 第3世代基盤の検討において、JRAが最も重視したのは「安定稼働」と「安全な移行」だ。パブリッククラウドも検討したものの、JRAのビジネスモデル特有の要件が移行の壁になった。

 JRAのシステム運用は、中央競馬の開催日である土日が中心となる。次期統合IT基盤の検討に当たってはパブリッククラウドも調査対象となったが、障害発生時の対処や個人情報の安全な取り扱いについて懸念があったことから、現時点ではメリットがなく、プライベートクラウドでの運用継続が最適解だと判断した。

 VMからコンテナへの移行も議論の対象になったが、こちらも不要という判断に至った。コンテナはWebサイトのフロントエンドなど頻繁に変更するシステムには向いているが、「競走馬情報管理システム」(JARIS)のような、長期的な安定稼働とデータの一貫性が優先される基幹系システム(SoR)では、確立された技術であるVMが適すると考えたからだ。

 これらの検討を経て、JRAは「パブリッククラウドへの移行」ではなく、プライベートクラウド構築製品群「VMware Cloud Foundation」(VCF)を継続採用することが、費用と安定性のバランスにおける最適解だと判断した。

VCF継続採用は「攻めのIT」

 移行プロジェクトでは、外部ベンダーに丸投げするのではなく、VMwareのプロフェッショナルサービス(PS)と連携して内製化を進めたことが大きな特徴だ。これによって、従来は更新開発を含めて外部ベンダーに委託していた作業費用を抑制することに成功。移行作業には、VMを停止させずに移行できるライブマイグレーション機能「vSphere vMotion」を活用し、一晩で2000VMの移行を完了させるなど、ダウンタイムを最小限に抑えた。その結果、第1世代から第2世代への移行に比べて10分の1の時間と労力でプロジェクトを完遂した。

 JRAは、VMware製品のネットワークを含めた一元的なインフラ管理能力も評価している。特にネットワーク仮想化製品「VMware NSX」の導入によって、物理スイッチに依存した複雑な運用から脱却できた点は評価ポイントだ。

 Broadcom買収後のVMwareのサポート品質に関しては、契約範囲内の対応に終始する「ドライな対応」ではなく、現場に足しげく通ってシステムを熟知した上で提案する「ウエットな対応」だったと信頼を寄せる。

 今後は、勝馬投票券(馬券)の販売やオッズ計算を担う中核システム「トータリゼータシステム」のオープン化プロジェクトにおいても、実績を持つVCFの採用を有力視している。「脱VMware」が叫ばれる中でも、自社のシステムやデータ処理の特性と内製化能力を冷静に分析すれば、“VMware継続”という選択肢が「攻めのIT」になり得ることを、JRAの事例は示唆している。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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