”脱VMware”にOpenShiftが選ばれる理由 先行事例に学ぶコスト回避策:「脱VMware」の現実解
Broadcomによる買収後、VMwareのライセンス料高騰に悩む企業が急増している。クリーブランドクリニックなどの大手組織は、TCOを50%削減すべくOpenShift Virtualizationへの大規模移行を開始した。先行事例から見えた具体的なコスト削減効果と、コンテナ統合管理への刷新に伴う技術的課題を解き明かす。
2026年5月11日〜14日にかけて米ジョージア州アトランタで開催された「Red Hat Summit 2026」で、旧VMware製品のユーザーたちが、ライセンス費用の高騰を受けて「OpenShift Virtualization」へ移行した経験を語った。
OpenShift Virtualizationは、オープンソースの「KubeVirt」プロジェクトを基盤としたもので、従来の仮想マシン(VM)ワークロードを、Linuxコンテナとともに「Kubernetes」のコントロールプレーンで管理できる。
同プロジェクトは2017年に始まり、2018年にOpenShiftへ統合された。Red Hatは2021年から機能を強化してきたが、2024年末から2025年初頭にかけて製品ロードマップをさらに積極的に拡大させた。この勢いの背景には、2023年末に完了した610億ドルの買収後、Broadcomが実施したライセンス体系と価格の変更に対する顧客の広範な不満がある。
世界的総合医療センターがOpenShiftを選択した理由
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世界的総合医療センター「クリーブランドクリニック(Cleveland Clinic)」のITインフラプラットフォームサービス部門でディレクターを務めるスティーブン・オーガニサック氏は、Red Hat Summitのパネルセッションで次のように述べた。「2025年1月にライセンス更新を控え、コストが大きな懸念事項となった。そこで、他に何ができるのか、どこへ移行できるのかを検討し始めた」
同センターは、1万台を超えるVMの新しい移行先を探す時間を稼ぐため、Broadcomとの3年契約を更新した。同センターのITインフラ担当エグゼクティブディレクター、イアン・ウィリス氏によると、現在は450台の移行を完了したという。次の更新までに全てのマシンをRed Hatのプラットフォームへ移行する計画だ。これにより、総所有コスト(TCO)を50%削減できると見込んでいる。
「移行が可能であることを証明できた。次の更新まで19カ月ある。全てのVMとワークロードを移行させるつもりだ」(ウィリス氏)
また、ウィリス氏によれば、一部のアプリケーション向けに永久ライセンスを維持できる「VxRail」システムを購入し、移行期間の猶予を確保したという。
クリーブランドクリニックはRed Hatの親会社であるIBMの長年の顧客で、臨床用の量子コンピューティング開発でも提携している。しかしウィリス氏は、OpenShift Virtualizationを選択する前に複数のベンダーを検討したと話す。
「CiscoのVMwareベースのハイパーコンバージドソリューションで稼働していた通信クラスタの代替として、一部にNutanix(ニュータニックス)を導入する予定だ」(ウィリス氏)
しかし、残りの膨大なVM群については、当時のNutanixの最小要件では新たなハードウェアの追加購入が必要だったという。なお、Nutanixは先日、外部ストレージのオプションを追加している。
また、クリーブランドクリニックの災害復旧チームが概念実証(PoC)を行った結果、既存のDellの「Data Domain」ベースのバックアップインフラをOpenShift Virtualizationへ移行する方が容易だと判断した。
FedHIVEを動かしたFedRAMPへの対応
別のセッションでは、あるサービスプロバイダーもBroadcomのライセンス料の大幅な値上げを移行の動機として挙げた。同社は、コンプライアンス認証を理由にOpenShift Virtualizationを選択したという。
バージニア州アレクサンドリアに拠点を置くFedHIVEおよびHuman Resources Technologies(HRTec)のCEO、マイケル・カルダシ氏は次のように話す。「当社はコンプライアンス・アズ・ア・サービスを提供している。ISV(独立系ソフトウェアベンダー)を採用し、当局の運用認可(ATO)に適合させ、政府への販売を支援している」
FedHIVEは更新時に、以前の9倍のライセンス料をBroadcomから提示された。カルダシ氏によると、OpenShiftとOpenShift VirtualizationはFedRAMPやATOの要件を満たしており、オンプレミス、エアギャップ、プライベートおよびパブリッククラウドで、コンテナとVMの両方を「ハイパースケーラーが太刀打ちできない価格」でサポートしていた。
サードパーティーベンダーとRed Hatのパートナーシップ拡大も、FedHIVEの決定を後押しした。FedHIVEの移行を代行したマネージドサービスプロバイダー、アクティク(Arctiq)のプリンシパルソリューションアーキテクト、デリック・サザーランド氏は次のように説明する。
OpenShift Virtualizationとの重要な連携には、ソフトウェア定義ストレージの「Portworx」や、ゼロトラストセキュリティの「HashiCorp Vault」が含まれる。これらは2025年2月のIBMによる買収完了後、さらに強化されたという。
「これはOpenShiftやKubernetes向けのvSANのようなものだと考えてほしい。あらゆるストレージハードウェアを使い、クラスタ全体で仮想ストレージプールを構築できる。ノード間のレプリケーションやワークロードのディスクレベルの暗号化も可能だ」(サザーランド氏)
移行の注意点
コンテナとVMを統合したインフラ自動化プラットフォームは、アプリケーションのモダナイゼーションへの道を開く。これがBroadcomからの離反者を引きつけている。しかし、従来のサーバ仮想化と比較すると、学習コストの高さや移行プロセスの複雑さといった固有の制限や課題もある。
例えば、エミレーツNBD(Emirates NBD)は、Red Hat Summit 2025で移行を公表して以来、9000台以上のVMをVMwareからOpenShiftへ移行した。一晩で最大200台のペースで進めたという。同行のテクノロジープラットフォーム担当責任者、アリ・レイ氏はRed Hat Summitのセッションでその詳細を語った。
350個のアプリケーションのうち、3個を除いて現在はOpenShift VirtualizationまたはOpenShift Container Platform上で稼働している。同行は2016年からの「Red Hat Enterprise Linux」ユーザーだった。レイ氏はVMwareに残っている3個のアプリケーション名は明かさなかったが、移行を検討する他社に、プラットフォームのアーキテクチャについて慎重に考えるよう警告した。
「コンテナへの移行はアプリケーションの再構築(リアーキテクト)だが、KubeVirtへの移行は再プラットフォーム化だ。ストレージやネットワークをどう管理し、コンテナとVMのクラスタをどう通信させるか。設計思想が全く異なることを理解しなければならない」(レイ氏)
モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)は、Broadcomの件が起きるずっと前の5年前から、Kubernetes制御ノードのベアメタルオプションとしてESXからの移行を検討し始めた。しかし、現在も移行の途上にあるという。同社のKubernetesエンジニアリング責任者、オスカー・スマノ氏は次のように述べた。
「Kubernetes上での複雑なアーキテクチャの把握に努めている。自動化やユーザー教育、可視化の強化を進めているが、まだ学習の段階だ。ESXが築いてきたアーキテクチャの完成度を尊重しなければならない」(スマノ氏)
Red Hatが無料の移行評価ツールを提供
Red Hatは移行プロセスを改善するため、2024年から「Virtualization Migration Assessment」ワークショップを開始し、2026年3月にはその内容を拡充した。直近では、Red Hatのサブスクリプションがなくても利用できる無料のセルフサービス型評価ツール「OpenShift Migration Assessment(OMA)」を発表した。
調査会社TheCube Researchのアナリスト、ロブ・ストレチャイ氏は「OpenShift VirtualizationはVMwareより安価だが、依然として高額だという認識がある。Nutanixよりも少し安い程度かもしれない」と指摘する。
通常、移行にはRed Hatやパートナー企業による専門サービスが必要になることが、その認識に影響している。OMAは評価コストを下げられるが、実際の移行作業を肩代わりするものではない。
「準備状況を把握するのは始まりにすぎない。新プラットフォームへの移行を成功させるには、既存チームを補強する熟練したリソースが必要になる。情報を集めるのは無料だが、実際にVMを動かすのはユーザー自身かパートナーの役割だ」(ストレチャイ氏)
FedHIVEのカルダシ氏は、アクティクへの投資は十分に価値があったと語る。アクティクは約6週間で100台のVMを移行し、FedHIVEの従業員が自ら管理できるようトレーニングを行ったという。
「期間を短縮できたため、ROI(投資利益率)をより早く達成できた。そこに価値があった」(カルダシ氏)
進化を続けるOpenShift Virtualization
OpenShift Virtualizationはこの1年で、サーバクラスタ間でのVMライブ移行サポートなど、重要な新機能を提供してきた。2026年3月に一般公開された「OpenShift 4.21」では、外部ストレージアレイへの処理オフロードによる性能向上が実現した。このアップデートには、VMネットワーク作成ウィザードなどの管理簡素化も含まれている。また、バックアップを高速化する「Changed Block Tracking(CBT)」もテクニカルプレビューとして提供された。クリーブランドクリニックの担当者は、この機能の一般公開を心待ちにしているという。
「12時間のバックアップ時間を維持するために並列処理を行っているが、移行するVMが増えるにつれ、その制限時間に達し始めている」(ウィリス氏)
今回のサミットでRed Hatは、OpenShift Virtualizationの新たなクラウドサポートも発表した。これには、コンテナ対応へ自動アップグレード可能なIBM CloudのVM専用フルマネージドサービスや、Google Cloudでの一般提供開始が含まれる。
「IBM CloudがVMファームの提供を発表したことは、最後の大きな障壁の1つだった。IBMはかつて最大級のVMwareクラウドを運営していたからだ」とストレチャイ氏は述べた。
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