AI活用の壁は「人材不足」ではない? 調査で判明した“PoC止まり”の真の理由:3年後の企業競争力を左右する要素とは
フライウィールは、従業員1000人以上の企業に勤務する426人を対象とした「AI活用実態調査2026」の結果を公表した。調査から、AI活用の最大の課題は人材不足ではなく、別の要素であることが分かった。
フライウィールは2026年6月15日、従業員1000人以上の企業に勤務する426人を対象に実施した「AI活用実態調査2026」の結果を公開した。
企業におけるAI活用の課題として挙がりがちなのが「AI人材の不足」だが、調査結果からは、根本的なボトルネックが別にあることが分かった。本稿は、フライウィールの4つの主要な調査結果と、企業が直面しているAI活用の課題を紹介する。
AI活用の最大の課題は「人材不足」ではなく何?
AI活用が進まない理由として、多くの企業が挙げるのが「AI人材の不足」だ。しかし、調査結果は企業が認識している課題と、実際のボトルネックとの間にギャップが存在することを示している。
フライウィールはAI活用の成熟度を複数の観点から分析した。その結果、最もスコアが低かったのは、人材やツールの不足ではなく、AI活用を継続的に改善するための「定着・改善」フェーズだった。
AIを導入しても、その効果を測定する指標がない。利用状況を分析して改善する仕組みもない。そのため、現場で利用が広がらず、PoC(概念実証)や一部部署での利用にとどまるケースが少なくないと考えられる。
ROIが見えない背景にある「データ基盤の壁」
AI導入企業の中には、「活用しているが成果が見えない」「投資対効果(ROI)を説明できない」と感じている場合がある。その背景として浮かび上がるのが、データ品質やデータ管理に関する課題だ。
近年はRAG(検索拡張生成)を活用し、社内文書やナレッジを生成AIに参照させる取り組みが広がっている。しかし、AIが参照するデータそのものの品質や信頼性が十分でなければ、期待した成果は得られない。
特に課題となっているのが、文書や議事録、問い合わせ履歴、ログデータなどの非構造データの整備だ。こうした情報が分散し、更新状況も不明な状態では、AIの回答精度を高めることも、成果を定量的に評価することも難しい。
AI活用の成否は、AIモデルの性能だけではなく、その土台となるデータ基盤の成熟度によって左右されることが改めて示された。
経営層と現場、業種ごとに異なる課題認識
調査では、AI活用を巡る課題認識が立場や業種によって異なることも分かった。
経営層は投資対効果や全社展開を重視する一方、現場担当者は業務への組み込みや運用負荷を課題として認識している。こうした認識の違いは、AI活用の優先順位や投資判断にも影響を及ぼす可能性がある。
また、製造業ではIT・ソフトウェア業と比べて、「現場の心理的抵抗感」や「セキュリティへの懸念」を強く意識する傾向が見られた。
品質や安全性が重視される製造現場では、AIの判断を業務プロセスに組み込むことへの慎重な姿勢が根強いと考えられる。AI導入を進める際には、技術的な整備だけでなく、現場の理解促進や運用ルールの整備も重要になる。
今後の競争力を左右するのは「データ活用能力」
将来の競争環境についても、多くの企業が危機感を抱いていることが調査結果から分かった。
調査では、過半数の企業が今後3〜5年の間にAI活用度の差が業界内の競争力に大きな影響を与えると回答した。注目すべきは、その差が単なる業務効率の差ではなく、「データ活用能力の差」として表れると認識されている点だ。
AIツールそのものは今後さらに普及し、多くの企業が利用できるようになる。しかし、AIに活用できるデータをどれだけ整備し、継続的に改善できるかによって成果は変わる。
競争優位性の源泉は、AIそのものではなく、それを支えるデータ基盤や運用能力へと移りつつある。
AIを定着させる企業に求められる3つの視点
今回の調査結果からは、AI活用の課題が「導入」から「運用・定着」へ移行していることが見えてくる。
フライウィールは、AIを実際の成果につなげるためには「AI−Readyなデータ基盤」の整備が欠かせないと指摘する。
具体的には、AIの成果を客観的に「測る」こと、改善サイクルを継続的に「回す」こと、そして得られた知見を再利用可能な形で「貯める」ことの3つが重要だという。
AI活用を成功させる企業とそうでない企業の差は、今後ますますデータ基盤や運用設計の成熟度によって決まる可能性が高い。情シスやDX推進部門には、AIツールの選定だけでなく、成果を継続的に生み出すための仕組みづくりが求められている。
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