「ひとり情シス」が急に退職 専門商社が外部パートナーと挑んだネットワーク刷新の裏側:週1回の通信障害も解消
専門商社のハザン商会は、情シス業務を兼任していた担当者の退職を機に外部ベンダーの支援でネットワーク環境を刷新した。ベンダー選定の決め手や、外注で得られた成果は。
「自分が休んだら、誰がネットワークを見るのか」「前任者が辞めたものの、十分な引き継ぎがない」――。企業でひとり、情報システム(情シス)部門を運用する“ひとり情シス”や別部門との“兼任情シス”の現場では、こうした不安を抱えたまま、老朽化した機器を使い続けているケースもある。
70年以上の歴史をもつ専門商社ハザン商会も、情シス業務を兼任していた担当者の急な退職を機に、営業担当者がインフラ管理を引き継いだ。しかも、古いルーターとアクセスポイントが原因で、ネットワークは頻繁に不安定になっていた。そこで支援に入ったのが、「IT営業」に特化した人材を派遣するBCCだ。ハザン商会がBCCを選んだ決め手は何だったのか。どのようにこの状況を立て直したのか。
週1回は通信障害も ベンダー選定の決め手は
ハザン商会は、工業用金網や伸線用ダイスなどの工業製品を輸出入・販売するほか、貿易管理システムの開発・販売、保温材の販売などを手掛けている。
同社にとって、国内外の取引先との連絡や、為替、納期、輸出入の状況確認に利用するネットワークは、事業を支える重要なインフラだ。クラウドサービスを利用する機会も増えていた。
一方、社内で利用していたルーターと無線LANアクセスポイントは老朽化し、メーカーのサポートも終了していた。ネットワークが負荷に耐えられず、週に1回程度、インターネットにつながらなくなったこともあったという。
通信速度が10Mbpsを下回ることも多く、状態が悪いときには1〜2Mbpsまで低下していた。機器が完全に故障すれば、社内ネットワーク全体が停止する恐れもあり、従業員からは「この状態は本当にまずい」との声が上がっていた。
こうした状況で、システム関連業務を兼任していた担当者が急に退職した。ハザン商会には専任の担当者を配置する余裕がなく、後任としてITに詳しい営業担当者がインフラ管理を兼務することになった。
後任者がネットワークの状況を調べるほど、機器の老朽化や運用体制の問題が明らかになった。ハザン商会は、ネットワーク機器を更新するとともに、専任者がいなくても運用できる体制を構築する必要に迫られた。
6〜7社を比較、BCCを選んだ3つの理由
ハザン商会がネットワークの見直しを始めた時期に、BCCから営業の電話があった。同社はBCCを含む6〜7社から提案を受け、比較検討した。
他社の提案には、さまざまな機器やオプションをまとめたセットプランが多かった。ハザン商会にとって不要なオプションを外しても価格が大きく変わらず、予算を上回る提案が目立ったという。
これに対してBCCは、ハザン商会の要望を聞き、必要な機器に絞ったシンプルな構成を提示した。ハザン商会が想定していた金額よりも安く、同社の永井正樹代表取締役社長は当初、「安すぎて大丈夫か」と心配したほどだったという。
価格以外の決め手になったのが、BCCの営業姿勢だった。
ハザン商会は各社に、競合他社から提示された機種や金額を伝えていた。競合製品のデメリットを挙げ、自社製品の優位性を訴える事業者が多い中、BCCは他社製品を批判せず、自社が提供できるサービスを説明することに徹した。
永井氏は、ネットワークの運用は契約後も長く続くため、受注を目的とした比較ではなく、顧客と継続的な関係を築こうとするBCCの姿勢を評価した。
問い合わせに対するレスポンスの速さも判断材料になった。ハザン商会によると、BCCは電話で相談すると、その日のうちに対応することが多かった。専任の情シス担当者がいない同社にとって、トラブル発生時に迅速に相談できる体制は重要だった。
アクセスポイントをレンタル、効果を確認してから導入
BCCは、一度に全てのネットワーク機器を入れ替えるのではなく、ルーターかアクセスポイントのどちらか一方から導入する方法を提案した。アクセスポイントはレンタルで試用し、効果を確認してから正式に導入できるようにした。
ハザン商会は、まずアクセスポイントをレンタルした。BCCはSSIDやパスワード、アクセスポイント名を事前に設定していたため、現場では既存の機器とほぼ差し替えるだけで切り替えられた。
アクセスポイントの交換後、無線LANの電波強度は改善した。社内のPCは高速通信に対応していたものの、古いアクセスポイントがボトルネックとなり、本来の性能を発揮できていなかったことも分かった。
ただし、有線接続を含む一部の不具合は残った。ハザン商会が調査したところ、ルーター内部に多数のエラーが蓄積していた。同社はルーターも経年劣化していると判断し、アクセスポイントに続いてルーターもBCCから購入した。
その後、ネットワーク機器の運用を任せるため、BCCのネットワーク管理サービス「BM X」を契約した。
BM Xは、VPNやセキュリティをはじめ、企業ごとに必要なネットワーク機能を組み合わせて提供するサービスだ。クラウドを使った機器の管理に加え、導入時のネットワーク構成の整理や、導入後の運用支援を提供する。
ハザン商会は、アクセスポイントのレンタル、アクセスポイントの更新、ルーターの更新、BM Xの契約という順番でネットワーク環境を刷新した。1つずつ効果を確認しながら進めたことで、本当に必要な部分に予算をかけられたという。
通信速度は100Mbps台、緊急出社もほぼゼロに
ネットワーク機器の刷新後、ハザン商会の通信速度は100Mbps台で安定するようになった。それまで頻発していた通信障害も解消した。
クラウド上の管理画面から、ネットワークの稼働状況を確認できるようになったことも大きな変化だった。
従来はトラブルが発生すると、インフラ管理を兼任する営業担当者が、営業先や在宅勤務先から急きょ出社することがあった。刷新後は遠隔で状況を確認し、対応できるケースが増えたため、ネットワークトラブルを理由とした緊急出社はほぼなくなったという。
ハザン商会はその後、2025年に既存のセキュリティ製品が更新時期を迎えたことを機に、BCCが提案したセキュリティ製品も導入した。既にネットワーク刷新を通じて信頼関係を構築していたことに加え、価格面も評価した。
専任者不在では「次の課題」に気付きにくい
ネットワークとセキュリティが安定した一方、ハザン商会には新たな悩みも生まれた。現在の環境に満足しているため、次に取り組むべき大きな課題が見えにくくなったことだ。
同社は今後、インターネット回線の見直しを検討している。さらに、多要素認証やシングルサインオンなど、自社だけでは気付きにくい対策について、BCCから積極的な情報提供を受けたいとしている。
ひとり情シスや兼任情シスの体制では、日々の問い合わせや障害への対応に追われ、新しい技術やセキュリティ対策の情報を継続的に集めることは難しい。担当者の退職によって知識や運用方法が失われれば、老朽化した機器が放置されていたことさえ把握できなくなる恐れがある。
ハザン商会の事例からは、ネットワーク刷新において、機器の性能や価格だけでなく、必要な部分から段階的に導入できること、遠隔で管理できること、導入後も迅速に相談できることが重要だと分かる。専任者を置けない企業にとって、社内に不足する知識や運用体制を補う外部パートナーの存在は、事業を止めないための選択肢の1つになりそうだ。
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