流通業740人調査で分かったペーパーレス化の残念な実態 反対派の言い分は?:「完了」は1割未満
LINE WORKSは、流通業740人を対象としたペーパーレス化の実態調査を実施した。ペーパーレス化を完了した企業は1割未満にとどまり、5割弱の企業では、紙書類の削減効果が見られないことが分かった。
ペーパーレス化のためにシステムを導入したのに、「以前の方が使いやすかった」と言われ、取引先の要望で紙運用へ戻る――。こうした問題は、システムの機能不足だけで起きるわけではない。
LINE WORKSが中小・中堅の流通業を対象に実施した調査では、ペーパーレス化に取り組む企業は7割を超えた一方、ほぼ全ての業務で問題なく完了した企業は1割未満だった。ペーパーレス化を阻む障害は何か。本稿は、LINE WORKSの調査結果を基に、情報システム部門(情シス)が押さえるべきポイントを紹介する。
7割が取り組んでも「完了」は1割未満 その理由は?
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LINE WORKSは、全国の従業員数1000人未満の小売業、卸売業、物流業で働く740人を対象に、「紙書類利用状況・ペーパーレスの取り組みに関する調査」を実施した。調査期間は2026年3月22〜30日で、インターネットを通じて回答を集めた。
調査によると、ペーパーレス化に取り組んでいる企業は全体の70.8%だった。しかし、「ほぼ全ての業務で、問題なくペーパーレス化が完了している」と回答した企業は9.7%にとどまった。
取り組み企業の中には、施策が停滞している企業や、紙に戻すことを検討している企業、既に取り組みを縮小・中止した企業もある。これらを合わせると54.9%に上った。システムを導入したことと、ペーパーレス化が定着したことは同義ではない。
業種別では、小売業が最も積極的で、74%がペーパーレス化に取り組んでいた。一方、そのうち約6割は、停滞や紙への回帰、施策の縮小・中止といった課題を抱えていた。小売業全体の24.8%は、紙への回帰を検討しているか、既に取り組みを縮小・中止していた。
物流業では、ペーパーレス化に取り組んでいない企業が32.9%を占めた。配送や倉庫など、紙を持ち運び、その場で確認・記入する業務が多いことが影響していると考えられる。
最大の障害は「取引先が紙を求めること」
ペーパーレス化を拒む最大の障害は、社内のITリテラシーや人材不足ではなかった。
ペーパーレス化の推進における課題として最も多かったのは、「取引先が紙でのやり取りを求めており、ペーパーレス化が難しい」だった。次いで、「押印・サインが必要な紙書類がある」「FAXでの受発注や連絡業務が存在する」が続いた。
卸売業と物流業では、取引先が紙を求めることが最大の課題だった。小売業では、「手書きや非定型の書類が多く、電子化・デジタル化しづらい」が最多となった。
一方、「現場への定着・運用ルール化が難しい」「進め方が分からない・推進人材が不足している」といった社内要因を挙げた回答は比較的少なかった。
この結果から分かるのは、ペーパーレス化は情シスだけでは完結しないということだ。受発注や請求、納品などの取引業務では、自社が電子化しても、取引先が紙やFAXを求めれば、結局は印刷や再入力が必要になる。
情シスが電子契約、電子請求書、ワークフローなどを導入するだけでなく、営業、購買、経理、法務と連携し、取引先とのやりとりをどの段階で変更できるのかを確認する必要がある。
紙には、デジタルでは代替できない利点がある
紙が残る理由は、商習慣だけではない。現場にとって、紙が合理的な場合もある。
調査によると、業務で紙書類を使い続ける理由として、流通業全体では「現場業務で、紙が必要な場面が多いため」が最多となった。物流業では44.7%に達している。小売業では「押印・サインなどの商慣習が残っているため」が30.0%、卸売業では「取引先が紙でのやり取りを求めているため」が38.7%で、それぞれ最多となった。
また、デジタルデータと比較した紙のメリットとしては、「一目で全体を確認できる・一覧性の良さ」「書き込みやメモがしやすい」が上位に挙がった。
そのほか、「万一のシステム障害時でも業務を継続できる」「共有・回覧しやすい」「電源やネットワーク環境に左右されない」といった回答もあった。
つまり、紙を廃止するだけでは、現場の利便性や業務継続性を損なう可能性がある。画面上で複数の帳票を見比べにくい、入力に時間がかかる、通信が不安定な場所では利用できないといった問題が残れば、現場は紙へ戻りやすい。
情シスはシステム選定時に、管理機能やセキュリティだけでなく、現場での一覧性、手書き入力、モバイル対応、オフライン利用、障害時の代替手段まで確認することが大切だ。
電子化しても紙の使用量が減らない理由
調査によると、ペーパーレス化に取り組んだ企業のうち、過去1年間で紙書類が「大幅に減少した」「やや減少した」と回答した割合は計53.7%だった。
裏を返せば、46.3%の企業では紙の使用量がほとんど減っていない。小売業では、紙の使用量が変わらない、増加した、または一時的に減ったものの元に戻ったと回答した割合が55.4%に上った。
電子化したにもかかわらず紙が減らない背景には、業務プロセスを変えず、媒体だけを置き換えている可能性がある。
例えば、紙の申請書をPDFに変えても、メール添付で回覧し、内容を別のシステムへ手入力するのであれば、業務負荷は大きく減らない。電子データを確認するために印刷していれば、紙の削減にもつながらない。
ペーパーレス化を縮小・中止した理由としては、「取引先都合で紙運用に戻さざるを得なかった」が最多だった。次いで、「想定よりも業務負荷が減らなかった・成果が出なかった」「コストに見合う効果を感じられなかった」が続いた。
情シスは、紙を何枚減らしたかだけでなく、入力、転記、確認、検索、保管に要する時間がどれだけ減ったかを測る必要がある。システム導入によって確認作業や二重入力が増えれば、現場にとってはペーパーレス化ではなく、単なる作業追加になる。
「紙をゼロにする」ことが目的ではない
今後の方針として最も多かったのは、「必要な紙業務は残しつつ、AI-OCRツールや帳票読み取りツールなどを導入してデジタル化・業務効率化を推進する」で、38.6%だった。
一方、「完全なペーパーレス化を目指し、積極的に推進する」は15.1%にとどまった。「現状維持を考えている」は28.2%、「ペーパーレス化には取り組まず、今後も紙中心で業務を進める」は12.2%だった。
資料では、業務で使用している紙書類は平均5.5種類だった。物流業では平均6.3種類、卸売業では6.0種類、小売業では4.0種類だった。特に請求書、納品書・領収書、見積書など、社外との取引に関わる書類で紙運用が残っていることが分かった。
情シスが確認すべき3つのポイント
調査結果を踏まえると、ペーパーレス化を進めるに当たっては以下3点を確認しておく必要があることが分かる。
紙が残っている理由の切り分け
取引先の要望、押印、法令、現場環境、操作性など、紙が残っている理由を切り分けて、対策を講じる。
紙を含む業務フロー全体の見直し
紙文書の情報をスキャンして保存するステップを業務フローに組み込むだけでなく、入力、承認、保管、検索、基幹システムへの連携までを設計する。
導入効果の測定
紙の削減枚数、入力・転記時間、検索時間、保管費、誤入力、問い合わせ件数などを導入前後で比較する。
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