SAP保守の「殿様商売」にメス 欧州委が迫った自由な保守の条件:高額なSAP維持費から脱却可能か
SAPの保守サービスを巡り、欧州委が独占禁止法違反の懸念を解消。システムの一部の切り離しや第三者保守の選択が可能になる。高額な復帰手数料にも上限が設けられ、ユーザー側のコスト削減と自由度が大幅に向上する。
欧州委員会(EC)は2026年7月9日(現地時間)、ドイツのソフトウェア大手SAPのオンプレミス向けERPソフトウェアのアフターマーケット(二次市場)の保守・サポートについて、欧州連合(EU)の競争法上の懸念を解消するための同社の改善策を承認した。
ECによる予備調査では、SAPが欧州経済領域(EEA)で、自社ERPシステムのオンプレミス向け保守・サポート市場の競争を制限する可能性のある4つの慣行を行っていたと報告されていたが、SAPは「欧州委員会との建設的な対話」を経て、柔軟性、透明性、予測可能性を向上させるため、これらの慣行を是正することに合意した。
クリーン・公正・競争的移行を担当するECのテレサ・リベラ執行副委員長は次のように述べた。「今回の決定により、SAPのオンプレミス向けビジネス管理ソフトウェアを利用する顧客は、コストを押し上げ競争を阻害していた不当な制限を受けることなく、保守・サポートサービスをより自由に選択できるようになった」
「委員会が確保した法的拘束力のある改善策は、業界全体のベンチマークとなる。これは、顧客の移行が進むクラウド市場で、同様の効果を持つ慣行に対する警告となる。デジタル市場などの支配的企業は、選択肢や革新を犠牲にしてユーザーを囲い込むために自らの力を悪用すべきではない。今回の決定はその強いメッセージだ」(リベラ氏)
何が変わるのか
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SAPは、顧客が自社のSAPシステム環境を「コマーシャルインスタレーション」(commercial installations)と呼ばれる個別のパーツに分割できる、明確で合理化されたフレームワークを提供し、構成管理を強化すると説明した。顧客は、インスタレーションごとに異なるレベルのSAPサポートを選択したり、サポートを完全に停止したり、SAP以外の選択肢を検討したりできるようになる。
また、保守契約を再開する際の復帰手数料は撤廃された。再開費用自体は発生するが、遡及(そきゅう)保守料(バックメンテナンス料)は「最小6カ月分」または「非契約期間の保守料の50%」のいずれか低い方に引き下げられる。
ドイツ語圏のSAPユーザーグループ(DSAG)は、今回の変更によって、既存のオンプレミス環境を維持しつつSAP以外のプロバイダーからサポートを受けたいユーザーが、従来の契約よりも詳細な単位で柔軟に対応できるようになると指摘した。
DSAGのイェンス・フンガースハウゼン会長は次のように述べる。「SAPがクラウド戦略を推進しているとしても、企業にプラスの効果をもたらし続けているシステムを、廃止することなくどう運用し続けるかを自ら決定することは重要だ」
「この進展は、改善に向けてSAPと顧客コミュニティーが継続的な対話とパートナーシップを重ねてきた成果だ。これらの改善策は、顧客の選択肢と柔軟性を中心に据えつつ、具体的なメリットをもたらし、信頼を強化するものだ」(フンガースハウゼン氏)
英国・アイルランドSAPユーザーグループ(UKISUG)のコナー・リオーダン会長も、柔軟性の向上はユーザーにとってプラスだとの見解で一致した。「オンプレミスの顧客に対する保守・サポートポリシーの変更を歓迎する。当会のメンバーは長年、柔軟性、透明性、予測可能性の向上を求めてきた。今回の変更は前向きな一歩だ。これにより、ビジネス環境の変化に適応し、自社に適したペースでSAP資産を発展させる余地が広がるだろう」
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