MOVEitの悪夢再び? GEやシェルを襲ったCl0pのサプライチェーン攻撃:PTC製ソフトのゼロデイ脆弱性が標的に
GEやシェルなど大手企業が相次ぎデータ流出の調査に追われている。身代金要求集団Cl0pはPTC製PLMソフトのゼロデイ脆弱性を悪用し、約50社を標的に暗号化を伴わない新たなデータ恐喝を仕掛けている。
英国のエネルギー大手シェル(Shell)、オランダのヘルスケア技術大手Philips、米General Electric(GE)を始めとする著名な企業が、サイバー脅迫集団「Cl0p」(Clop)によって被害を公表されたことを受け、セキュリティ侵害の調査を進めている。
企業向けプラットフォームを侵害して優良企業を標的としてきたCl0pは、ダークWebのリークサイトを更新し、これら3社を含む50近くの企業を名指した。
被害を受けた企業はいずれも、PTCの製品ライフサイクル管理(PLM)ソフトウェア「Windchill PDMLink」および「FlexPLM」に存在する重大なゼロデイ脆弱性(CVE-2026-12569)を通じて侵害されたとみられる。
Cl0pの手口詳細
「サイバー攻撃」に関連して読みたい編集部お薦め記事
同脆弱性は2026年6月に特定されて修正パッチが提供され、直後に米サイバーセキュリティインフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)の「悪用が確認された脆弱性(KEV)」カタログに追加された。FlexPLMのWSDLエンドポイントの認証前の情報開示の問題と、Windchillのログインサーブレットのサーバ側の問題を連鎖させることで悪用が可能になる。
ランサムウェア対策コミュニティー「Ransom-ISAC」のメンバーによると、攻撃者はこれらの条件を利用してWebシェルを配置し、認証不要のリモートコード実行(RCE)を行って被害組織のデータを窃取したという。
Ransom-ISACのブランドン・パーソンズ氏は、Cl0pによる一連の攻撃活動は2026年7月20日前後に始まったとみられると報告している。同集団は、無作為に侵害したアカウントから、影響を受ける企業の複数のユーザー宛てにメールを送信し始めた。
パーソンズ氏は「今回の脅迫の手法は、新しいメールアドレスを使用している点を除けば、2025年に確認されたOracle E-Business Suiteを標的とした攻撃と一致している」と指摘した。
メディアに公開された声明で、シェル、Philips、GEはいずれも事実関係を調査中であることを確認したが、Cl0pの関与について名指しで言及した企業はなかった。
シェルはReutersに、自社の調査について「セキュリティチームや関連する専門家と連携している」と説明。GEは「サイバー対応プロトコルを開始し、潜在的な問題の評価に取り組んでいる」と回答した。Philipsの広報担当者はさらに踏み込み、「社内データに関連する特定の企業サーバに対するセキュリティ侵害の試みを特定し、封じ込めた」と述べた。
Cl0p側の主張によると、同集団はシェルから89GB、Philipsから15.5GB、GEから391GBのデータを窃取したという。シェルのデータには、設計図面、石油施設の写真、テストプロジェクトのスキャンデータ、その他のプロジェクト計画が含まれていると主張されている。
Cl0pの手口がもたらす影響
Ransom-ISACのアナリストが指摘するように、今回の一連のデータ侵害におけるCl0pの動きは、過去にAccellionやOracle、Progress Softwareなどを標的とした攻撃と強く重なる。
数千社に影響を与えたProgress Softwareのファイル転送ツール「MOVEit Transfer」への攻撃から3年が経過した2026年現在も、Cl0pは従来の手法を維持している。暗号化を伴う一般的なランサムウェアは使わず、普及しているソフトウェア製品を侵害して下流の顧客企業を標的とし、窃取したデータを身代金の支払いがなければ公開するという手口だ。
CybaVerseの最高技術責任者(CTO)を務めるサイモン・フィリップス氏は現在進行中の事態について、Cl0pの過去の攻撃と同様に大規模なデータ侵害につながる可能性があると述べた。
「大規模な攻撃を仕掛けるCl0pの傾向を考慮すると、リークサイトに掲載された企業は事実関係を調査する措置を講じる必要がある。不正アクセスの有無を監視し、システムからデータが持ち出されていないかを特定しなければならない」(フィリップス氏)
「さらに、PTC Windchill PDMLinkまたはPTC FlexPLMを使用している組織は、パッチの適用を最優先で進めるべきだ」(フィリップス氏)
フィリップス氏は次のように付け加えた。「この問題が提起する論点はソフトウェアの脆弱性にあり、それが攻撃者に悪用された際に顧客企業が経済的な打撃を受け続けていることだ」
「業界として、セキュリティやベンダーを評価する方法を再考し、個々の脆弱性を超えて広範な傾向を見極める必要がある。インターネットに接続されたインフラに見られるような、重要コンポーネントに脆弱性を繰り返し抱えるベンダーは高リスクとして扱うべきだ」(フィリップス氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
製造業が5年連続で狙われる“真の理由” IBM調査が暴いた、供給網の致命的な「穴」
IBMは、サイバー脅威の動向をまとめた「IBM X-Force Threat Intelligence Index 2026」を発表した。AIの活用により攻撃の速度と規模が拡大している一方、防御側の基本的な管理や対策が不可欠であることを強調している。
アサヒグループも襲ったQilinの手口とは 2025年国内被害22件に
2025年の国内ランサムウェア被害は増加の一途をたどり、人手不足に悩む中小企業や製造業が損害を受けている。攻撃グループ「Qilin」の手口とは。業務の完全停止を防ぐための具体的な検出方法と併せて解説する。
FortiGateのデバイス600台超が被害に AWSユーザーや情シスが取るべき行動は?
Amazon Threat Intelligenceは、ロシア語話者の脅威アクターが商用生成AIを活用し、55カ国600台超のFortiGateを侵害したと公表した。AWSのユーザーや情報システム部門が取るべき対策を整理する。
FBIが猛反対でも…… サイバー攻撃者に「身代金」を支払わざるを得ない残酷な現実
学習管理システム「Canvas」がサイバー攻撃を受け、膨大な個人情報が流出した。被害企業はデータの回収と引き換えに攻撃者との取引に踏み切ったが、この決断を巡って議論が再燃している。犯罪者への支払いの是非は。
ランサムウェア被害を防ぐつもりが“全社機能停止”に 大規模事案から得た教訓
アサヒGHDの大規模ランサムウェア攻撃事案では、被害を防ぐためにシステムを停止した結果、事業が完全停止してしまった。良かれと思った決断が致命傷になるジレンマを解消し、セキュリティを強化するには。