日本のB2Bマーケターが今知るべき「アカウントベースドマーケティング(ABM)」の“驚きの切れ味”企業ターゲティングは個人単位から企業単位へ

B2B系顧客に対して効率的に営業活動するために販売側が一丸となってアカウントのニーズを把握し高度にカスタマイズしたマーケティングを実施する「アカウントベースドマーケティング(ABM)」が注目されている。

2015年04月10日 10時00分 公開
[Nick PanayiMktr2Mktr]

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは何か?

 私が「アカウントベースドマーケティング(Account Based Marketing/ABM)」の定義を初めて聞いたのは10年以上前のことだ。今やキャッチーなバズワードとなったABMだが、その概念は非常にユニークだ。こういったバズワードを定義することで知られているITSMA(http://www.itsma.com/)によるとABMを次のように説明している。

 「例えば、あるアカウント、パートナー、プロスペクト(見込み客)がいる1つの市場に対して、高度にカスタマイズしたマーケティングキャンペーンを開発・実装する、階層構造化されたアプローチのこと。このアプローチには、マーケティング部門と販売部門が一緒になって、ターゲットとなるアカウントが直面する主要なビジネス課題に寄り添い、それらを個別のテーマに落とし込み、その解決に当たる作業が含まれる」

 これを言い換えれば、価値の高いアカウント自体を「唯一無二の市場」として扱い、アカウントの持つ固有のニーズに合致するマーケティング手法を使って外科的にターゲティングすること。そして、それは今やとても容易になった(と、私は信じている)

 しかし、当時ABMの概念は今以上に魅力的だった。当時はマーケターがアカウントの購買行動を本当の意味で“深掘り”して理解するには、非常に限られた手段しか持ち合わせていなかった。そのため、ある特定のアカウントにおける意思決定者やインフルエンサーのニーズにうまく応えられないケースが多かった。マーケターはアカウントの担当営業にインタビューをして点と点を結び、“アカウントの絵”を描くことにベストを尽くしてきたが、時として成績のいい担当営業と“マーケティング”という言葉を使った議論になると、相手がしびれを切らす場面に出くわすことになり、結果として非常にちっぽけで主観的な“大きな絵”の一部を切り取って持ち帰るだけに終わることになった。

「知恵」がパワーを持つABMの時代

 では今日まで時間を進めてみよう。あなたがこの調査結果を信じるかどうか分からないが、今日の購入行動、いわゆるカスタマージャーニーの60〜70%は最初にWeb上から始まっている(参照:https://hbr.org/2012/07/the-end-of-solution-sales/)。早い段階で使われるGoogle検索からホワイトペーパーをダウンロードして詳細な機能比較を行うといった初期段階の購入プロセスの活動の全ては “グリッド上(ネット)”にある。これは、マーケターの利益のためにそれらを利用できることを意味している。

 つまり、ABMer(ABMを信仰する人たち)からすると、マーケターは「知恵」へ変化していくデータという名の金脈の上に鎮座しているといえる。「知恵」は力なり!

ワークする「ABM戦略」の作り方

 私が所属するCSCは、ABMの時代になると、先行者の優位性がなくなる立場にある。数年前、われわれは白紙の状態から始める機会を得てデジタルエコシステムを構築した。それは、「知恵」の力を使ってビジネスを進める、真の可能性を持つABMプログラムだった。ここでは、当社独自のABMプログラム(未完成なものもあるが。)が有効に機能するために実施したことを幾つか挙げてみよう。

  • 「Oracle Eloqua」の「見込み客プロファイリング(Prospect Profiler)」の利用。ある特定の意思決定権者の“デジタル・ボディランゲージ”を360度から見る。見込み客が付ける全てのデジタルな「足跡」から顧客についてユニークで価値のある情報をもたらす。
  • 「デマンドベース(DemandBase)」技術の開発。これにより、事業所のリバースIP lookupを用いてWebサイトの企業訪問者を追跡し、動的にパーソナライズ化したコンテンツを配信することができる。
  • Webサイトのトラフィックをまとめた顧客別ダッシュボードの構築。B2Bにおける購買活動がグループで行われている場合は、企業全体でわれわれのコンテンツをどのように閲読しているかが確認できるため、購買意向に現れる初期洞察が得られる。
  • ターゲット化したディスプレー広告キャンペーンの実施。カスタマイズした広告メッセージをわれわれが最も注力している顧客に対してメディアパートナーと協力して提示することで、自社独自のエコシステムの外側でもABMのインテリジェンスが展開できる。
  • “ABMコンシェルジュ”と呼ばれるプラットフォームシステムをパイロット稼働。そのプラットフォーム上では、ABMerや営業チームが販売先企業について深堀りしたり、リアルタイムな知見を得るともに、売り上げの数字作りの助けになる意思決定権者(あるいは助けにならない人)の情報も手に入れることができる。

 つまり、当時興味深かったABM概念だが、今やあなたのマーケティングミックスの必須コンポーネントとなり、営業中心の世界との関連性を高めるために日々戦うのに必要な非常に重要なツールとなったのである。

著者プロファイル

Nick Panayiは、CSCにおけるGlobal Brand & Digital Marketingのディレクター。責任分野は、グローバルブランド管理、CSC.comサイト、デジタルコンテンツ管理、マーケティングプログラム、マーケティングオペレーション、MA。Nickは、テクノロジー部門で、さまざまな管理、戦略計画、マーケティング職を歴任。アバイア、コンパックだけでなくオンラインサービスやMAのスタートアップに在籍し、20年以上の経験を持つ。


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