チャットツール「Slack」の快進撃が止まらない、UC市場も侵食か

チームチャットアプリケーションの機能が豊富になるのに伴い、企業での利用が広がり始めている。同時に、本格的なユニファイドコミュニケーション(UC)プラットフォームとの境界線も曖昧になりつつある。

2017年02月17日 10時00分 公開
[提供:日本オラクル株式会社]

 人気の高いチームチャットアプリケーションである「Slack」が、企業の間で急速に普及している。Slackの日間アクティブユーザーの数は2016年2月に230万人だったが、同年6月には300万人を突破した。複数の報道によると、Slackの有料アカウントの数は90万を超え、開発元であるSlackの時価総額は2014年の2億5000万ドルから、2016年半ばには40億ドル近くにまで増加した。

 Nemertes Researchが40社のエンドユーザー企業を対象として最近実施した調査も、Slackの快進撃を裏付けている。この調査によると、回答企業の33%がチームチャットアプリケーションを利用している。これは2015年と比べて2.4%の増加だ。チームチャットアプリケーション利用企業の70%近くがSlackを使っているのに対し、「Cisco Spark」を使っているのは30%、その他のアプリケーションを使っているのは2%だった。

 チームチャットアプリケーションが企業進出の足掛かりを確保するのに伴い、IT部門の責任者はこれらのアプリケーションを全社的なコミュニケーション/コラボレーション環境にどう統合すべきか悩んでいる。チームチャットアプリケーションは、既存の(あるいは計画中の)ユニファイドコミュニケーション(UC)クライアントをリプレースするのだろうか、それともUCクライアントを補強する形になるのだろうか。

 大抵のユーザーは、チームチャットアプリケーションは他のUCアプリケーションを補強するものになると考えているようだ。だがチームチャットアプリケーションが備えるインスタントメッセージ(IM)機能は、ほとんどのUCアプリケーションのIM機能をリプレースする可能性がある。とはいえチームチャットアプリケーションの多くは、ビデオチャット機能や画面共有機能、電話と音声通話を行う機能などを備えていない。

成熟化に向かうチームチャットアプリケーション

 Slackや、Atlassianの「HipChat」などのチームチャットアプリケーションには、さまざまな制限があるものの、その将来的方向性はコラボレーション分野の状況を不透明にしている。

 例えば、Slack Technologiesは2015年初頭に、WebRTC規格をベースとする画面共有アプリケーションベンダーであるScreenheroを買収した。これによりSlackは、「GoToMeeting」「WebEx」「Zoom」などのWeb会議アプリケーションが備える機能を提供できるようになった。さらに同社は2016年6月、「Google Chrome」でSlackを利用しているユーザー向けに、同社独自のアプリケーションあるいはWebRTCを通じて音声通話を行う機能を追加した。Atlassianは、WebRTC規格をベースとするアプリケーション「Jitsi」を2015年に買収した他、HipChatにグループビデオ通話機能を最近になって追加した。

 一方、FuzeやZoomといったベンダーは、それぞれのビデオ会議製品にチームチャット機能を追加する作業を進めており、UCクライアントとチームチャットアプリケーションとの間の境界線がさらにぼやけることになりそうだ。また、Slackなどのアプリケーションは、Blue Jeans、Google、Vidyoなどのベンダーのビデオ会議製品との連係が可能で、チャンネル内からSlackビデオチャットを起動できる。

情報とネットワークの保護

 UCベンダー各社も、Slackが背後から迫ってくるのを黙って見ているわけではない。

 Cisco Systemsは独自のチームチャットアプリケーションであるCisco Sparkを推進しており、同社のセキュリティモデルの活用や、既存のCisco UC環境およびWebExとの連係機能などで差別化を図ろうとしている。RingCentralはGlipを買収し、自社のUCaaS(サービスとしてのUC)製品と連係するという形でチームチャットとUC機能を結合した。企業向けチームチャットアプリケーションの草分け的ベンダーであるUnify Circuitも、音声、ビデオ、画面共有機能の連係を実現している。

 大企業の多くはコミュニケーション戦略をAvayaやCisco Systems、Microsoftなどの単一プラットフォームプロバイダーに依存しているが、Slackやその競合ベンダー各社は市場に大きな変革をもたらそうとしている。Slackなどが採用しているフリーミアムとSaaS(Software as a Service)をベースとするデリバリーモデルの場合、IT部門による管理の範囲外で従業員個人あるいは各部署がチームチャットアプリケーションを容易に立ち上げられる。これは、情報保護やネットワーク管理の担当者にとって頭痛の種になりそうだ。

 何百人ものチームチャットユーザーがビデオチャットを利用しており、それがネットワークに与える影響をIT部門がコントロールできないという状況は、IT部門にとって悪夢でしかない。

仮想チーム間でのリアルタイムコラボレーションも可能だが……

 Nemertesの調査によると、チームチャットアプリケーションを早くから採用した企業のうち42%では、各業務部門がサービスの料金を支払っているが、アプリケーションのサポートは基本的にIT部門の役割になっている。

 チームチャットアプリケーションを使用中(あるいは検討中)の企業は、その利点と欠点を注意深く検討しなければならない。これらのアプリケーションは分散した仮想チーム間のリアルタイムコラボレーションを可能にするが、情報の保護、ネットワークへの影響、既存のアプリケーションとの連係といった課題がある。

 今のところ、チームチャットアプリケーションがUCクライアントをリプレースするかどうかという疑問に対する唯一の正解は存在しない。だがチームチャットアプリケーションがUC機能を組み込むとともに、既存のUCプラットフォームと連係し、その一方ではUCプラットフォームがチームチャット機能を追加していくと、チームチャットとUCとの境界線はますます曖昧になるだろう。


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