「HCIを入れたのに楽にならない」はなぜ起こる? 運用負荷削減に必要な機能は減らないバージョン管理や診断ログ収集の手間

運用管理負担の軽減を見込んでHCIを採用する動きが広がっているが、導入後に思ったほどの効果が出ないケースはよくある。ハードウェアの交換や追加など、オンプレミスならではの運用工程を省力化するためには、どんな製品が最適か。

2021年01月07日 10時00分 公開
[ITmedia]

 サーバとストレージ、ネットワークの「3階層システム」(3 Tier System)から、HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)に移行する企業は少なくない。システム構成をシンプルにすることで運用管理の負担が軽減し、将来的なスケールアウトもしやすくなると期待できる。

 ただし各HCI製品には差異があるため「運用負荷は楽になったが、拡張性についてはオーバースペック」といった事態も起こり得る。どのHCI製品を選べば自社の要件を満たせるか見極めるのは容易ではない。

 ハードウェアの交換や追加、複数の仮想化ソフトウェアのバージョン管理といった作業は依然としてユーザー企業が実施する必要もあるため、「思ったほど運用の負担が減っていない」と悩むユーザーも存在する。オンプレミスならではの運用工程を省力化するには、どのような機能を持つHCIを選べばよいだろうか。技術者が解説する。

VxRailとvSAN Ready Nodeの違い

 システム構成を考える際に、適切な技術情報に基づいた判断ができれば、導入後に「こんなはずではなかった」と後悔することを減らせるはずだ。本稿はSB C&Sがパートナー企業を対象に実施した「VxRailテクニカルセミナー」の内容から、HCIの運用管理に関する実践的な情報とDell Technologiesの「VxRail」の特徴を解説する。

 VxRailはVMwareの仮想化製品とDell TechnologiesのIAサーバを組み合わせたHCI製品だ。VMwareはDell Technologiesのグループ企業で、VxRailの構成コンポーネント全てをDell Technologies製品として提供する。ハードウェアからソフトウェアまで高いレベルの技術統合を実現している点や一括保守サポートを提供している点は、IT管理者にとってうれしいポイントだ。

 SB C&Sのエンジニアである清水 要氏(ICT事業本部販売推進・技術本部技術統括部第1技術部1課)は、サーバOEMベンダーの推奨構成で独自にHCIを構築できる「vSAN Ready Node」とVxRailとの違いに注目して特徴を説明する。どちらも仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」を使用し、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)は「VMware vSAN」を利用しているという点は共通しているが、清水氏は「ハードウェアとソフトウェアの連携がVxRailの特徴」と説明する。VxRailは特にソフトウェア面の統合に強みがあるという。VxRailには独自の統合管理ツール「VxRail Manager」があり、このコンソール一つでハードウェアとソフトウェア両方を管理できる。見るべき管理コンソールを集約できるだけでも、運用管理の手間は大幅に低減できるだろう。

HCIの運用管理を楽にする、VxRailの独自機能

バージョン管理の手間を軽減

 VxRailは運用管理の負担軽減を主眼に置いてさまざまな独自機能を搭載する。バージョンアップの支援機能もその一つだ。VMwareの仮想化製品は多数のソフトウェアやコンポーネントを組み合わせており、コンポーネントごとにバージョンアップを実施する手間や互換性の検証は以前からIT担当者の悩みの種だった。こうした課題を踏まえ、VxRailは各種コンポーネントをワンパッケージに統合したバージョン設定になっている。バージョンアップ作業の手間を大幅に減らすことはもちろん、互換性の問題を回避して運用の安定性を高められる。

ディスクドライブの交換や追加の効率向上

 VxRailには運用中でも簡便にディスク拡張ができる機能が盛り込まれている。その方法は、

  • ディスクグループ(キャッシュディスクとキャパシティーディスクの集合体)へのディスク追加
  • ディスクグループそのものの追加(スケールアップ)
  • ノードの追加(スケールアウト)

など、目的に応じて柔軟な拡張が可能だ。ディスクグループを追加する際にストレージコントローラーカードの追加が必要ないのも特徴の一つだ。管理GUIで筐体の物理ビューを確認でき、各コンポーネントとの状態をグラフィカルに把握できるので、ディスク増設時や普段の運用時に問題箇所を素早く特定するのに役立つ。

左右 図1 ディスクドライブの交換、追加(出典:SB C&S講演資料)《クリックで拡大》

診断ログ収集

 運用管理のための基本情報となる診断ログを収集するとき、例えばvSAN Ready Nodesで独自に構成したHCIの場合、各ソフトウェアコンポーネントのログとハードウェアのログを別々に収集して管理する必要がある。VxRailであれば統合システムの強みを生かし、必要なログを管理GUIで一括収集できるため、IT担当者の作業負担を軽減する。

ソフトウェアやファームウェアのアップデート管理

 ソフトウェアやファームウェアの更新作業はIT担当者にとって負担の重い作業の一つだ。後回しにしてしまうとセキュリティリスクもある。しかし運用中のシステムを維持したままトラブルなく更新する作業は簡単ではない。

 VxRailには、管理系仮想マシンと、ハイパーバイザーの「VMware ESXi」およびファームウェアを対象とした一括更新機能がある。「互換性の確認」「バイナリ準備」から始まり、サーバ管理ソフトウェア「vCenter Server」をアップデートし、各物理ノードから仮想マシンを待避させてメンテナンスモードに入り、更新が完了したらメンテナンスモードを終了して通常運用を再開、他の物理ノードの更新に移る――という一連のフローを自動実行してくれる。清水氏はVxRailならではの特色として、この自動実行プロセスの中で「DRS」(Distributed Resource Scheduler)という機能を利用できることを挙げ、「DRSはVMware vSphereのEnterpriseエディション以上でないと利用できない機能だが、VxRailならばVMware ESXiがStandardエディションでも、更新時に限ってDRSの機能を一時的に有効にすることができる」と説明する。また「『ProSupport Mission Critical』もしくは『ProSupport Plus』に契約していれば、この一括更新作業をDell Technologiesのリモート保守として依頼できることも、数あるHCIから選定する上での重要なポイントだ」と説明している。

左右 図2 VxRailアップデート画面の例(出典:SB C&S講演資料)《クリックで拡大》

豊富なVxRailのラインアップ

 VxRailは豊富な製品ラインアップがあり、ユーザー企業の用途に合わせたスペックを選択できるのも見逃せないポイントだ。用途で分類すると、製品モデルは次の6つに大別できる。

  • エントリーモデル(E560、E560F、E560N、E665、E665F、E665N)
  • パフォーマンス重視モデル(P570、P570F、P580N)
  • GPUを活用したVDIやCAD向けモデル(V570、V570F)
  • 過酷環境に適した高耐久性モデル(D560、D560F)
  • ストレージ容量重視モデル(S570)
  • 2U4ノード高密度モデル(G560、G560F)

 清水氏によると、SB C&Sの売れ筋はエントリーモデルの「E560」とパフォーマンス重視モデルの「P570」だという。「HDDベースのハイブリッド構成またはオールフラッシュ構成を選択可能で、コストとパフォーマンスのバランスが良く使いやすいことが評価されています。定評のあるPowerEdgeサーバが製品のベースになっていることも、VxRailが選ばれる理由の一つでしょう」(同氏)

 VMware vSANを搭載したHCIを利用するには、VMware vSphereおよびvSANのライセンスを購入することになる。VxRailの場合は「Embedded OEM」というハードウェアとライセンスがひも付いた形で一括購入できる。ユーザーがもともと保有するvSphereのライセンスをVxRailで利用することも可能だ。

VxRailの万全なサポート体制

画像 Webサイト「C&S ENGINEER VOICE」はこちらから(SB C&S)

 SB C&SはVxRailのディストリビューターとして、VxRailの販売に取り組むパートナー企業を強力に支援している。パートナー企業向けの技術情報提供やWebセミナーはその一環だ。同社にはVMwareの認定資格を取得したエンジニアが多数在籍しており、提案時から導入後までさまざまな技術支援が可能だという。最新技術の情報を発信するWebサイト「C&S ENGINEER VOICE」にはVMware製品の情報も多数掲載されている。ユーザー企業にとっても困ったときの支えになるだろう。

 SB C&Sはパートナー企業向けにVxRailの無償貸し出しサービスも用意している。主な用途はパートナー企業の研修や学習用とのことだが、ユーザー環境での実機検証などに利用するケースもあるという。同社はこれからも販売パートナー企業を通じてこうした施策を提供することで、ユーザー企業が具体的な運用イメージを把握し、最適な製品選定のヒントを得られるよう支援を続ける意向だ。


提供:SB C&S株式会社、デル・テクノロジーズ株式会社、ヴイエムウェア株式会社
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