小さな存在だが、ビジネスにおいて重要な役割を果たすのがIoTだ。だが、「スマホの大型化」「エッジで扱うデータ種類の増加」という変化によってIoT活用企業に新たな課題が生まれている。解決する方法にはどんなものがあるのか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革などの取り組みが活発化する中、情報デバイスの選定がシステムを最適化する上で重要な課題となっている。
情報デバイスといってもさまざまだが、業務連絡にスマートフォン(以下、スマホ)を利用するのはもはや当たり前だ。ただそのスマホについて新たな課題が生まれている。現在主流となっているスマホは6型以上で大きく重く、病院のPHS(Personal Handy-phone System)や工事現場の携帯電話(いわゆる「ガラケー」)のようには手軽に利用できないのだ。
“IoT”(Internet of Things)という視点でも課題はある。クラウドと連携しながら複数デバイスからの情報をローカルで集約、処理する「IoTエッジデバイス」に注目が集まっている。だが、GPS(Global Positioning System)などの位置情報や、温度や湿度などの環境情報を扱うデバイスは一つ一つの用途に特化したものが多く、汎用(はんよう)的で業務に利用できるデバイスは限られている。
業務の効率化やデジタル化を推進する上でもこれらのIoTは欠かせない存在だ。前述したような課題を解決する方法にはどんなものがあるのか。有識者に話を聞いた。
スマホのサイズが大型化しているのは周知の事実だ。スマホが大型化することでゲームや動画視聴といった用途ではメリットがある一方、業務用途として考えると「持ち運びがしにくい」「手が小さな人にとっては片手で操作できないため取り回しが悪い」といったデメリットがある。
IoTに関する製品やサービスを提供しているCYBERDYNE Omni Networksの山本直行氏(代表取締役)は「われわれがターゲットとする法人用途では、『小型スマホ』への根強いニーズがあります。市場調査の結果、具体的な要望として『現場での作業や移動中に利用しやすいもの』『軽量でコンパクトなデバイス』『小さく、軽く、片手で操作できるサイズ』『胸ポケットに収まるサイズがよい』などが挙がりました」と説明している。
山本氏によると問題はスマホの大きさだけではない。それは個別の技術サポートを受けにくいという点だ。
「スマホ市場で流通しているデバイスの大半が、世界規模でビジネスを展開している巨大メーカーのものです。そのため、どうしても画一的なサポートになり、業務利用における個別の技術的課題を解決しにくくなっています。例えばOSのバージョンアップやファームウェアアップデートが頻繁にかかると、それに伴って業務用アプリケーション(以下、アプリ)の動作に不具合が起きるといった悩みが寄せられます」
こうした背景から、CYBERDYNE Omni Networksはビジネス利用を前提としたスマホ「Omni e4 compact」を開発した。
Omni e4 compactは2025年1月から提供を開始する。コンシューマー向けの大型スマートフォンと違い、4型の小型スマホとなっており、胸ポケットにも収まりやすく、片手で操作しやすい。もちろん、法人利用で求められる機能や性能も備えている。山本氏によると最大の特徴はサポート体制にある。
「IoTで課題になるのが障害時の原因の切り分けです。IoTはデバイス(ハードウェア)、アプリ(ソフトウェア)、ネットワーク(通信)、クラウドといったさまざまな要素が関連し合っているため、原因の切り分けに時間がかかります。われわれはIoTに携わってきた長年のノウハウがありますので、お客さまの症状を伺うことで、問題の適切な切り分け方法をアドバイスできます」
OSやセキュリティのアップデートの課題にも対応している。スマホのアップデート頻度はデバイスやデバイス提供メーカーによってまちまちだが、中には毎月セキュリティアップデートが実施されることもある。山本氏によると「そのほとんどがコンシューマー向けスマートフォンに必要なもので、業務利用には関係ないことが多い」という。
「CYBERDYNE Omni Networksはそうしたアップデートを一方的にリリースしません。緊急性が高いと判断したものについては個別にファームウェアを提供することにし、業務に影響が出ないようにしています」
通信はNTTドコモとSoftbank、MVNO各社の4G/LTE回線を利用している。デュアルSIMに準拠しており、通信障害が発生しても、もう一方のSIMに切り替えて業務継続が可能だ。
本体に内蔵したBluetoothとは別に、低消費電力で近距離無線通信を実現する小型デバイス「BLE(Bluetooth Low Energy)ビーコン」のモジュールを搭載している。側面のスイッチを入れると3秒間隔で信号を送信し、特定の場所での人や物の移動、滞在状況を検知する。ストラップを引っ張るだけでブザーを鳴らしたり、特定のアプリを起動したり、通知を出したりといった「クイックアクション機能」もユニークだ。こうした物理的な仕組みを備えることで、手袋などをしていてもスマホの特定の操作を素早く実施できるというメリットがある。
こうした点に注目し、従来のPHSからOmni e4 compactへ切り替える企業もある。山本氏は「業務用のハンディーターミナルやPDA(Personal Digital Assistant)と入れ替えて、業務用の専用デバイスとして利用されているケースもある」と話す。
“IoT”という視点での「汎用的なデバイスがない」という課題についてはどうだろうか。山本氏によると、汎用デバイスが問題になるのは「PoC(概念実証)から本稼働への切り替えタイミング」だという。
「汎用的な小型コンピュータを用いてPoCを実施後、コストや安定運用、環境の柔軟性や拡張性への懸念から本稼働が頓挫するケースがあります。また、『自分たちで簡単にアプリ開発や機能拡張ができるようにしたい』『専用機やIoTデバイスは高額になるため、コストを抑えたい』『将来用途が増える可能性があるので拡張性の高いデバイスを採用したい』といった要望を持つものの、それらをかなえるデバイスが見当たらないことも課題となっています」
これらの課題に対し、CYBERDYNE Omni NetworksはIoTエッジデバイス「Acty-G3」を提供している。
Acty-G3は「Android OS」を搭載しており、アプリ開発や外部デバイスとの連携が容易で、機能拡張がしやすいという特徴がある。「Android OSを採用することで、ユーザーがアプリケーションを開発したりカスタマイズしたりする際の自由度が格段に向上しています」と山本氏は解説する。
導入した企業からは「デバイスメーカーにファームウェアの改修を頼まなくても自分たちでソフトウェアの開発やメンテナンスができる」「クラウド間で連携するのではなく、デバイスから直接自社サーバにデータを送れる」といったメリットを実感する声が届いているという。
Acty-G3のユースケースとしては、社用車やバス、除雪車、電車などの動態管理、パレットや荷物の位置情報を追跡するためのGPSトラッカーとして利用される割合が多い。「特に建設、土木業界で利用され、トラックの運搬状況や重機や作業員の位置管理、ビーコンを組みあわせて屋内建設現場における作業車やレンタル品を探索する手間の削減や、管理業務の効率化に寄与しています」と山本氏は話す。
ある大手建設業の事例では、土木現場での重機やトラック、作業者の稼働状況を正確に把握するためにActy-G3を導入し、業務効率を飛躍的に向上させている。土木現場のような環境では「GPS情報を安定して取得しにくい」という課題があるが、その建設会社が試したデバイスの多くはその課題を解決できなかった。だが、Acty-G3はGPSに加えて「A-GPS(アシスト型GPS)」「GLONASS(Global Navigation Satellite System)」「携帯電話の基地局測位」「Wi-Fi測位」「QZSS(準天頂衛星システム)」といった複合的な測位方式を採用しているため、そうした環境であっても、高精度な位置情報の取得と安定した通信を両立できているという。
クラウドサービスと連携した分散処理が可能なため、内蔵CPUによって「収集したデータの前処理をする」といった分担もしやすい。山本氏は「Acty-G3はGPSトラッカーとしてだけではなく、ビーコンデバイスや各種センサー機器から収集した情報を束ねるIoTゲートウェイとしても利用されています。つまり、外部のセンサーと連携し、センサーからの情報に対してActy-G3が持つ日時、位置情報、ジャイロセンサー、加速度センサーの情報を付加してクラウドに送る役割を果たします」と説明している。
IoTの取り組みはDXや働き方改革の機運の高まりもあり、徐々に広がっている。しかし山本氏によると、そのほとんどは実験段階にとどまっており、メーカーとしても量産のめどが立たないことからデバイスのコストも下がらずますます普及が遠ざかっている。そんな中でCYBERDYNE Omni Networksは、業界でも低コストなIoT製品と充実したサポートという点で他社との差別化を図り、企業のIoT導入を後押ししている。
「われわれは、IoTの分野でこれまでにない技術や製品を生み出し、それを世に問うことで成長を目指しています。これまでの開発実績には、モバイル通信、近距離通信、GPS、各種センサーノード、情報セキュリティ、クラウドサービスなど、多岐にわたる先進技術が網羅されています。この実績と蓄積された開発ノウハウは、競争力の源泉であり、他社との差別化の核心となっています」
IoTの業務利用は広がってはいるが、大半の企業にとってはノウハウが不足している部分がある。CYBERDYNE Omni Networksの製品とサポートはそうした企業にとって心強い味方になるはずだ。
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提供:CYBERDYNE Omni Networks株式会社
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