仮想マシンのライセンス――難問に取り組むIT業界:Column
仮想化によってハードウェアのコストを大幅に削減できても、ソフトウェアライセンスの課金システムによってはそれが帳消しになってしまうこともある。ライセンスのルールについて見ていこう。
企業での仮想化技術の普及が進む中、仮想化ライセンスのルールをめぐる問題がIT管理者たちを悩ませている。
6月にマサチューセッツ州ケンブリッジで行われたヴイエムウェアの「Virtual Infrastructure 3」の発表会で、同社のダイアン・グリーンCEOは、仮想化ライセンス問題の今後の展開について同氏の見解を明らかにした。「この問題については、向こう1年間で大枠が決まるだろう。業界は仮想マシン単位のモデルに向かっている。これは、サーバ単位のモデルとやや異なる」とグリーン氏は述べた。
企業での仮想化技術の普及が進む中、仮想化ライセンスのルールをめぐる問題がIT管理者たちを悩ませている。
6月にマサチューセッツ州ケンブリッジで行われたヴイエムウェアの「Virtual Infrastructure 3」の発表会で、同社のダイアン・グリーンCEOは、仮想化ライセンス問題の今後の展開について同氏の見解を明らかにした。「この問題については、向こう1年間で大枠が決まるだろう。業界は仮想マシン単位のモデルに向かっている。これは、サーバ単位のモデルとやや異なる」とグリーン氏は述べた。
調査会社のガートナーのアナリスト、アルビン・パーク氏は、「プロセッサ単位、指定デバイス単位、ユーザー単位など、ライセンス方式にはさまざまな分類が存在する。しかし、仮想化ライセンスをどうするのかという問題の答えはまだない」と指摘する。
ベンダー各社もこの問題に気付いていないわけではない。マイクロソフトは昨年、「Windows Server 2003 R2」のエンタープライズバージョンのリリースで、仮想化ライセンスの問題に取り組んだ。R2では、ユーザーは追加料金を支払わなくても、1台の物理サーバ上で最大4つの仮想インスタンスを実行することができる。来年にリリースが予定されているマイクロソフトの新サーバ「Windows Longhorn Datacenter Edition」では、1台の物理サーバ上で実行できる仮想インスタンスの数に制限がなくなる。
IBMの幹部によると、同社は「IBM Tivoli Usage and Accounting Manager」という利用状況追跡ソフトウェアをリリースする予定だ。この製品は、仮想化されたサーバ上で使用される処理パワーの量に基づいてソフトウェアの利用料金を算出することを可能にする。
IBMによると、このソフトウェアは、公共企業が電気やガス、水道などの使用量に応じて課金するのと同様の仕組みを提供するという。同製品は、技術の利用量を測定し、利用料金を算定するためのWebベースのインタフェースを備える。このソフトウェアを利用すれば、仮想サーバなどの特定の技術の利用量を部門単位あるいは個人単位で測定し、それに応じて課金することができる。
調査会社IDCの調査担当副社長、アル・ギレン氏によると、IBMのモデルは、仮想化環境に適していない現在の各種ライセンス方式とは異なるという。
例えば、ヴイエムウェアのESX Serverなどの仮想化製品を利用しているユーザーは、OSの複数の仮想コピーをサーバ上で実行することが多い。こういったケースでは、1台の物理マシンに付き1つのライセンスが適用される従来のルールに従うべきか、それともOSの各インスタンスに付き1つのライセンスが必要なのかという問題に悩むことになる。
「2つのWindowsインスタンスを実行したいのであれば、OS2本分のライセンスを購入する必要がある」とギレン氏は話す。
ギレン氏とパーク氏によると、その結果、コスト削減対策として仮想化を利用しようとしているIT部門にとって、ソフトウェアコストの大幅な増加という事態を招くことになるという。
「企業が仮想化を採用するのは、それがハードウェアコストの大幅な削減につながると期待しているからだ。しかしこういった節約も、ソフトウェアコストの増加によって帳消しになることが多い」とパーク氏は話す。
パーク氏によると、仮想化ライセンスという問題にデュアルコアやマルチコアプロセッサが絡んでくると、話はいっそう複雑になるという。これらのプロセッサでは、標準的なシングルコアプロセッサよりもさらに多くのコピーのOS/アプリケーションをサーバ上で動作させることができるからだ。
「近い将来に仮想化を導入する企業の多くは、デュアルコアプロセッサを搭載した新しいハードウェアに配備することになるだろう。そうなれば、ソフトウェアコストも一気に上昇すると予想される」と同氏は話す。
パーク氏の予測によると、仮想化ライセンスをめぐる問題はいずれ、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)やIBM製品に見られるようなユーティリティベースの価格スキームを採用する方向へと業界を向かわせるという。
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