Column
Ajaxの危険な一面――クリップデータの盗難に悪用可能
オンラインバンキングサイトからアマゾンのショッピングカートに、クレジットカード情報をコピー&ペーストできたらどうだろう? われわれにとって、そしてハッカーにとっても実に便利だ。
カット、コピー、ペーストは、デジタルライフに欠かせない基本機能だ。開発者も一般ユーザーもこれらなしではやっていけない。一般ユーザーは日常的に、パスワードやクレジットカード番号などの情報をあるフォームから別のフォームにコピー&ペーストする。オフィスワーカーは、文書を作るときにこれらのコマンドをしょっちゅう使う。われわれがクリップボードのコピー&ペースト機能に依存していることは否定の余地がない。
レイ・オジー氏が「Wiring the Web」というブログエントリで述べているように、「クリップボードの最もシンプルな機能のおかげで、情報のコピーをあるアプリケーションから別のアプリケーションに移動する(つまり、値を渡す)という概念をユーザーが簡単に理解できるようになった」のだ。
ユーザーがカットやコピーの機能を使うと、その情報はコンピュータメモリ上のクリップボード領域に保存される。その情報は、後でユーザーが同じアプリケーションの別の場所か、異なるアプリケーションにペーストを行うときに使われる。その情報は見えないが、ユーザーが次にカットかコピーのコマンドを使うまで、コンピュータのクリップボードに保持される。このどちらかのコマンドが使われると、クリップボードに保持されていた情報は、新しくコピーされた情報で上書きされる。Microsoft Wordなどを含むMicrosoft Office製品の最近のバージョンでは、ユーザーは複数のアイテムを同時にクリップボードに保存しておける。保存された情報は、ユーザーがクリップボードをクリアするか、コンピュータを再起動するまで保持される。
だが、クリップボードの情報がコンピュータから盗まれてしまったら? 好むと好まざるとにかかわらず、Ajaxが使われる環境では、クリップボードの情報は非常に盗まれやすくなる。Ajaxが登場する前は、第三者がJavaScriptを使ってユーザーのクリップボードの情報を見ることは可能だったが、その情報を怪しまれずにサーバに送信することはできなかった。Internet Explorerでは、クリップボードの内容をブラウザ内からコピーできる機能が提供されている。このため、第三者がシンプルなJavaScriptを使ってその内容を取得し、Ajaxを使って、バックグラウンドで誰にも気付かれずにサーバに送信することができる。
この通信方法が使えるからといって、Ajax自体が危険なわけではない。問題は、Ajaxが、サーバとのシームレスなバックグラウンド通信を実現することから、ほかの方法では盗みにくい情報を盗むために悪用できることにある。Ajaxを使うことで容易になる攻撃手法の1つにリアルタイムキーロギングがある。キーロギングは、ユーザーがどんなブラウザを使っていても行われる可能性があるが、クリップボードデータを盗むのに悪用される恐れがあるブラウザは、Internet Explorerに限られる。クリップボードオブジェクトを操作するJavaScript機能がIEでしか提供されていないからだ。
JavaScriptのwindow.clipboardData.getData("Text")メソッドを使うと、クリップボード上の現在の値が取得できる。さらに、oncopy、oncut、onbeforepasteなどのイベントを併用すれば、クリップボードデータをさまざまに操作するカスタム機能を開発できる。
クリップボードデータを取り込んだり、盗み出すのはいたって簡単だ。マイクロソフトは現在、ユーザーが構造化データをWebサイト間で、あるいはWebサイトからPCアプリケーションにコピーできる「Live Clipboard」の開発を進めている。オンラインバンキングサイトからアマゾンのショッピングカートに、クレジットカード情報をコピー&ペーストできたらどうだろう? われわれにとって、そしてハッカーにとっても実に便利だ。Live Clipboardが有望なのは確かだが、マイクロソフトはこのアプリケーションの設計では、セキュリティの問題も考慮する必要がある。
本稿筆者のアヌラグ・アガーワル氏はCISSP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル)の資格を持ち、大手ソフトウェアソリューションプロバイダーでアプリケーションセキュリティのさまざまな面に取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
-
5
「何も変更していないのにWebサイトがクラッシュ」 そのときの原因は?
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
8
個人の業務効率化で終わる企業の盲点 AIで成果を出す「上位6%」の手法
-
9
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
10
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー