モバイル管理の本質は20年間変わらず:専任のモバイルマネジャーを
専任のモバイル通信管理担当者設置の必要性とその職務内容、誰に端末を持たせるかの選定など、重要なことは今も昔も変わらない。
1989年に「非常に有益なITコンサルティング会社」という希少な存在だったButler Coxから、あるリポートが発表された(よくあることだが、同社は業界再編の流れの中で何年も前に消滅している)。「Mobile Communications」と題されたこのリポートは、当時はまだ新しかったモバイル通信技術の効率的な運用に取り組むITマネジャーが直面する問題を取り上げたものだ。その結論を見て、この分野でその後20年近くの間にどんな変化があったかを振り返ると、なかなか面白い認識が得られる。全体的に、変化は「驚くほど少ない」と考えられるのだ。
モバイル管理担当者の設置が不可欠
この古いリポートは、要約して少し手を加えれば、マネジャーにとって現在も有効な一連のアドバイスになる。Butler Coxはここで、第1に、携帯通信端末、アクセサリ、機器の調達は、調整されたアプローチを取らないと、うまくいかないと指摘している。これは基本的な前提だ。さらに同社は、技術サポート担当者と連携しながら役割と責任を果たすモバイル管理担当職を明確に定義し、IT部門に置かなければならないとしている。大企業では、この職はほかの仕事との掛け持ちではなく、専任で担当しなければこなせないことは確かだ。
誰にモバイル端末を持たせるか
BlackBerryかシンプルな携帯電話かを問わず、社内の誰にモバイル端末を持たせるかという決定は、組織の不協和音の大きな原因になる。モバイルサービス料金を会社が負担することは、対象社員にとって大きな恩恵となるだけになおさらだ。リポートは、携帯電話やそのほかのモバイル端末を持つに値する社員だけに、それらを持たせるべきだとしている。さらにリポートは、どの社員がモバイル通信端末を持つにふさわしいかを決定するルールを定義している。
興味深いことに、リポートはこのルールを、企業の業種、そして社員の担当業務に基づいて規定している。これは極めて合理的だ。例えば、銀行では、オフィスの外で1日の半分以上を費やしているマネジャーは、モバイル端末を持つ資格がある。また、航空会社や公益会社では、すべてのオペレーションスタッフ、緊急呼び出しが掛かるスタッフ、あるいは緊急対策を調整するために外部組織と連絡を取る必要があるスタッフは、持つ資格がある。このように、役割分析に基づいてモバイルユーザーとしての適格性を判断するアプローチは、現在も有効だ。
モバイルマネジャーの職務
現在のモバイルマネジャーが果たすべき職務には、リポートで挙げられていた以下の7つの主要な職務が含まれている。
1. 機器とその利用に関する社内標準を策定し、管理する。ハンズフリー利用などの重要な機能をカバーするようにする(この機能の例示は、1989年当時の技術動向を反映している)
2. ユーザーに対する技術サポートを管理する。それに当たっては、ユーザーサポートと管理手続き、例えば、選択した携帯事業者の管理とともに行うサービスのアクティベーションなどについて定義する
3. 調達を管理し、サービスや携帯端末のボリュームディスカウントやインターワーキングの互換性が保証されるようにする
4. 全社的な観点から見た組織内での役割、モビリティ、包括的なビジネスニーズに基づいて、誰が携帯電話やそのほかのモバイル端末を持つにふさわしいかを的確に判断する
5. 将来を見越して、自社が有効に活用できそうな新しいアプリケーション(とその市場の成熟度)を特定し、市場でどんなものが提供されているか、それは購入するに値するかを常に把握しておく。明らかに、モバイル広帯域データサービス用のさまざまなノートPC向けWi-Fiや、WiMAX、モバイルデータカードのほか、衛星ナビゲーション、iPhoneタイプの携帯電話は、このカテゴリーに入る
6. システム部門と連携して、新しいモバイルアプリケーションに求められる仕様を詳細に作成する(対象アプリケーションが基幹ITアプリケーションに何らかの形でアクセスするためのものである場合には、システム部門との連携が特に必要になる)。さらに、対象アプリケーションを最適にサポートするモバイルサービスオプションを特定する
7. 設備投資と営業費用の両方を対象に、コストと予算を包括的に管理する
興味深いことに、現在の環境でも、これらに追加しなければならない職務は1つしかない。この職務は今や極めて重要だが、1989年当時はそれほどでもなかった。
8. 論理的および物理的なネットワークセキュリティを確保する。ネットワークセキュリティは、携帯電話やノートPCの無線インタフェースから、通信事業者、アプリケーションサーバやデータベースまで、包括的に設計し、こうしたそれぞれのレベルで効果的な対策を実施しなければならない。そのためには、例えば、ホテルで提供されるシンプルなWi-Fi環境から、スマートフォンでWebを閲覧したいと考えるユーザーのサポートまで、モバイルWebアクセス方法を検討することなどが必要になる
すべての企業がこれらの職務を1人のマネジャーに担当させるかといえば、それは疑問だ。大企業の場合、それではそのマネジャーに負担が掛かり過ぎてしまうからだ。多くの企業は、これらの職務を管理/財務的なものと技術的なものに分け、それぞれ別の担当者に任せるだろう。そしておそらく、将来のアプリケーションに関する職務も、さらに別の扱いにするだろう。この職務は1989年当時は必要ではなかったが、現在の大企業のニーズに合致している。この職務がリポートで挙げられていたのは、まさにButler Coxの先見性のたまものだ。
本稿筆者のサイモン・フォージ氏は、情報産業での20年以上の経験を生かし、通信/コンピューティングプロジェクトに取り組んでいる。以前はHutchison 3G UKのConsumer and Business Products部門のIT開発ディレクターとして、3G(第3世代)モバイル商品向けのソフトウェアアプリケーションの開発を管理し、マルチメディア商品全般をカバーしていた。英国サセックス大学でデジタル信号処理の博士号、制御工学の修士号および理学士号を取得している。
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