ITILは苦労に見合う──導入企業が太鼓判:米国での普及は道半ば
かつてIT部門が勘と経験に頼って仕事をしていたGeneral Communicationではさまざまな問題が発生していたが、ITIL導入から3年経ち、新たなプロジェクトを実施する場合でも短時間で準備を整えられるようになった。
英国で生まれたITサービス提供のベストプラクティス集「ITIL(Infrastructure Technology Information Library)」は、読むのも実装するのも大変だといわれている。
ジム・ダンラップ氏にも異論はないだろう。アラスカの通信会社General Communication Inc.(GCI)のIT担当副社長を務めるダンラップ氏がITILの導入を始めたのは、同社に入社した2004年のことだった。
「3年後の今も取り組みを続けている。ITILを導入し、プロセスが整備されていないIT業務のやり方から、プロセス中心のやり方に移行するのは容易なことではない」とダンラップ氏は語った。実際、その移行過程でGCIのITスタッフの30%が退職した。
しかし、ITILの導入は目覚ましい成果をもたらしており、IT部門がビジネスに即応したサービスを展開していく上で不可欠だったとダンラップ氏は述べた。
アンカレジに本社を置く上場企業であるGCIは、アラスカ州の人口66万人のうち50万人の加入者を擁している。陸地面積約150万平方キロの同州全域にネットワークを展開しており、カバー面積では世界最大級の通信会社だ。携帯電話やデータ通信、圧倒的な強さを誇るCATV(アラスカ州の世帯の90%が加入)といった提供サービスは継続的に拡充されている。
こうした多くの顧客に対して責任を負う大規模な企業は、ITサービスについて重点を置いてしっかり取り組んでいなければならない。しかし、GCIのIT部門は勘と経験に頼って仕事をしていた。その結果、役割や責任の所在が不明確になり、プロセスは場当たり的に、ドキュメントは期限切れまたは断片的になり、開発ツールやサービス管理ツールは標準化されず、リポートも一貫性がなくなってしまった。
「変更管理に関して言えば、ITスタッフは好きなときに好きなように変更していただけだった」とダンラップ氏は語った。サービスレベル契約(SLA)と言えるものはなかった。アプリケーション管理も「行われたためしがなかった」と同氏。「お粗末な」ソフトウェアが本番環境に導入されては、結局削除されたりしていた。IT部門にはプログラムマネジメントオフィス(PMO)がなかった。データセンターの運用も後手に回り、熱問題が発生してから対策を講じるといった具合だった。
しかし、ITILの導入開始から3年が経ち、GCIは適切な監視・管理ツールを利用するとともに、一連の「非常に厳密な」プロセスを運用しているという。例えば、赤外線カメラが24時間365日にわたってサーバを監視している。どのベンダーも同じ手法で管理されており、ベンダーの比較評価が可能になっている。10人のスタッフから成るPMOが設置され、毎週すべてのプロジェクトのリスク分析を行っている。IT部門は、同社が新しいマーケティング施策を実施する場合、「ごく短時間で」準備を整えることができる。以前は準備に4カ月かかることもあったという。
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