同じ仮想化製品でも単純には比較できない
VMwareとHyper-Vは「リンゴとニンジン」
オーストラリアのある会社がサーバ仮想化の見積もりを取ったところ、VMwareは5万豪ドルだった。結局、サーバ当たりの費用が49豪ドルで済むからとHyper-Vを選択したというが……。
思わず笑ってしまった。Microsoftの公式ブログに引用されたある記事で、主に同社のアプリケーションを使っているオーストラリアのある会社が、16台の物理サーバを仮想化によって4台に集約するための費用について、VMwareから5万豪ドルの見積もりを入手したことが報じられていた。内訳は、ソフトウェア費用が2万5000豪ドル、インストール費用が2万5000豪ドルだ。この会社は、サーバ当たりの費用が49豪ドルで済むことから、MicrosoftのHyper-V Server 2008(以下、Hyper-V)を選択したとされている。この記事はハードウェア費用について一切言及していないため、恐らくこの会社はハードウェアについては、手持ちのものを使うか、別途購入する計画だったのだろう。
5万豪ドルという費用は、明らかに非常に高い。この見積もりには、サーバごとに少なくとも1つのVMware Infrastructure 3 Enterprise Editionライセンスのほか、VMware VirtualCenterが含まれているのだろう。これで2万5000豪ドルくらいになるかもしれない。この記事の会社は、現在のサーバではCPU使用率が10~15%にとどまるとしているため、VMware ESXならサーバ2台で十分だったはずだ。しかしHyper-Vを使うのであれば、サーバが4台必要かもしれない。
だが、この会社が2万5000豪ドルで得られるものを理解していたかは疑問と言わざるを得ない。VMwareを選択すれば、非常に堅固で機能豊富な製品のEnterprise Editionライセンスとともに、管理サーバのVMware VirtualCenterが利用できる。VMwareとHyper-Vを比較するのは、リンゴとニンジンを比べるようなもの。両者は同じ製品カテゴリーに属しているとはいえない。さらにこの会社が、Hyper-Vの費用がサーバ当たり49豪ドルで済むことから、プロジェクト全体のコストが5万豪ドル掛かるところを196豪ドルに抑えられると考えたとしたら驚きだ。そうだとしたら、各Hyper-VサーバごとにWindows Server 2008のライセンスが必要なことを、誰もこの会社に知らせなかったということになる。また、Hyper-Vは最近無料化されたが、VMware ESXiも無料であり、しかもWindows Server 2008のライセンスコストも掛からない(※編注)。
※編注:Hyper-V Server 2008には、管理OSとしてWindows Server 2008のServer Coreが含まれている。従って、管理OS用に新たにWindows Server 2008のライセンスを購入する必要はない。しかし、ゲストOSのライセンスは付いていないため、ゲストOSとしてWindows Server 2008を利用する場合には、別途ライセンスを購入する必要がある。
インストール費用の2万5000豪ドルという見積もり額も、4台のVMware ESXサーバをセットアップし、既存サーバから仮想マシンへのP2V(Physical-to-Virtual)変換を行う対価としては極めて高い。だが、見積もり額の詳細な内訳を見なければ、妥当な金額が幾らだったかは見極めにくい。いずれにしても、この会社は仮想化を利用した経験がまったくないようだ。もし経験があるなら、ソフトウェアのインストールとサーバの構成を有料で他社に依頼したりしないからだ。恐らくこの会社は、自社環境の仮想化によるHyper-Vサーバへの移行も、有料で他社に依頼しなければならないだろう。残念ながら、問題の記事はこのコストに言及していない。
不明なところがあるため、この会社の判断をうんぬんすることはできない。この会社は必要以上のものを売りつけようとする担当者に吹っかけられたのか、あるいは見積もりを出した担当者はこの会社のニーズを理解していなかったのか。それも分からない。だがいずれにしても、この会社は無料のVMware ESXiを採用し、手ごろなコストで他社にインストールを頼むこともできたはずだ。VMware ESXiより豊富な機能が必要なら、VMware VirtualCenterがバンドルされたVMware Infrastructure Foundation Acceleration Kitを、たった約3600米ドルで購入することもできた。
ともあれ、この会社がこれほど高額な見積もりを出されてしまったのはひどい話だ。小規模環境を仮想化するための費用としてこれだけの金額を提示されたら、わたしだって引いてしまうだろう。だがわたしなら、ほかの選択肢を検討する一方で、なぜその見積もりがそれほど高いのかを確認し、その金額で具体的に何が得られるのかを知ろうとするだろう。この見積もりからは、ミニバン数台しか必要としていない会社に、自動車販売店が多数のフェラーリを売ろうとしているかのような印象を受ける。
十分な情報がないために推測しかできないが、この会社のケースを取り上げたブログや記事は、リンゴとニンジンを比較して、VMware ESXとHyper-Vのいわゆる価格差の問題を強調するPR目的で書かれたものにすぎないように見える。しかし、VMware ESXとHyper-Vを公平に比較すれば、この問題は存在しないのだ。
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