RFIDで実現するサプライチェーンの高度化:流通業におけるRFIDの可能性【物流センター編】
RFIDを有効に活用すれば、アパレルのサプライチェーンに内在する物流ロスを可視化し、改善することができる。その具体的な施策と、物流センター内での作業効率向上の方法を紹介する。
サプライチェーンにおけるRFIDの導入
現在、さまざまな業界でRFID(非接触ICタグ)システムを活用した物流合理化の手法が論じられ、一部では実際に導入されているケースも見受けられる。例えば、倉庫での入出荷の際にパレットや外箱に張り付けたRFIDを読み取ったり、倉庫内のソーターなどと組み合わせることで入出荷のスピード化を求めるケースや、非接触機能を活用して棚卸し作業の効率化を求めるケースなどで導入されてきた。このように、物流センター内における業務の部分最適を目指したRFID活用は進んでいる。しかし、広く普及しているバーコードを利用したアプリケーションと比較すると、限定的な活用にとどまっているのが現状であり、RFID導入に伴うコストがまかなわれているとは言い切れない。
前回「RFIDで実現する店舗業務の効率化と高精度な販売戦略」で記載した通り、アパレル業界では店舗でのRFID取得情報を最大限に利用することで、業務の効率化と高精度な販売戦略の実施が可能であると考えられている。そのためには、商品を製造する工場で1つひとつの商品にRFIDを張り付け(ソースタギング:Source Tagging)、店頭まで流通させるシナリオが必要になる。工場から物流センターを経て、店頭そして消費者の手元までさまざまな情報を得ながら「旅をするRFID」は、物流センター内における業務の部分最適以外にも、サプライチェーン全体の効率化を図るキープレーヤーとなり得るのではないだろうか。
2008年の経済産業省委託事業「IT投資効率性向上のための共通基盤開発プロジェクト」(繊維分野・電子タグ実証実験)を通して、この「旅をするRFID」がアパレルサプライチェーンの新たな効率化モデルを示してくれた。
アパレルのサプライチェーン
日本国内で販売されているアパレル製品の輸入浸透率は、2007年のデータによると94%を突破している(※)。つまり、大半のアパレル製品は、海外の工場から日本各地の店頭まで、長くて複雑なサプライチェーンを介在しなければ供給されないということである。通常、海外の工場で生産された製品は、まず海外の物流センターに運ばれ、検針・検品などの作業を行った後に、日本の物流センターに送られる。
(※)出典:日本繊維輸入組合「日本のアパレル市場と輸入品概況2008年」
アパレルサプライチェーンにおいて生産性の向上を阻害している要因は、主に以下の2つに大別できる。
- 初回店舗配分数量の計画精度低下によるロス
- 物流センターの庫内オペレーションの非効率性
RFIDの活用により、上記の問題がどのように解決されていくかを見ていく。
<筆者紹介>
山内秀樹
住金物産株式会社
SCM事業開発部 部長
早稲田大学理工学部・工業経営学科卒。ドイツ、イギリス、アメリカなど通算10年の海外駐在を経て、現在、住金物産 SCM事業開発部部長。専門はサプライチェーンとRFID。早稲田大学創造理工学部・経営システム工学課非常勤講師。日本アパレル産業協会RFID実用化推進委員会委員長、RFIDシステム利活用運用環境整備調査研究委員会委員など。
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