キーワードでひもとくバックアップ最新事情【第8回】
1分1秒を争うシステム復旧には“CDP”が効く
システムやデータの中には、有事の際に可能な限り迅速に復旧させなければならない種類のものがある。そうしたミッションクリティカル領域をカバーするデータ保護手段が「CDP」(継続的データ保護)だ。
ミッションクリティカルなシステムのデータ保護
ITシステムの中には、24時間稼働し続けなければならないものがある。例えば金融や証券を扱うシステムや、電気・ガスといったライフラインを運用するシステムなどである。これらのシステムがもし完全に停止してしまうと、ビジネスや社会インフラに多大なインパクトを与えてしまう。そのため、万が一停止してしまった場合でも、すぐに復旧できる体制を整えておくことが求められる。
もちろん、そのようなシステムはもともと非常に堅固に構築されている。しかしそれでも、災害が発生した場合などに備えて遠隔地に予備システムを用意しておき、本番システムがダウンした際には即座にフェイルオーバーしてシステムの稼働を再開する必要がある。また、もしシステムデータが壊れてしまった場合は、データ消失に伴う損害金額を最小限に食い止めるためにも、可能な限り直近のデータに復旧することが求められる。
このような、非常に重要なシステムのデータを守るためには、一般的なバックアップの手法では事足りないので、別の手法を検討する必要がある。今回説明する「CDP(Continuous Data Protection)」もその1つである。
CDPの仕組み
CDPは、日本語では「継続的データ保護」と呼ばれる。まず初めにデータの複製を作成し(※)、その後は常にデータを監視して変更点を保存しておくことで、過去のいかなる時点のデータにも戻すことが可能な仕組みである。初めに作成した元データの複製と、その後の変更分のデータを合わせることで、ある特定の時点のデータ状態に比較的短時間のうちに復旧させることが可能である。製品によって多少の違いはあるが、早い場合はわずか数分間でシステムを復旧・再稼働することができる。
※ データの複製を作成せずにCDPを実現するタイプの製品も存在する。
CDPの仕組みは、前回「“スナップショット”と“レプリケーション”で重い処理はストレージ任せ」で説明した「レプリケーション+スナップショット」の組み合わせに似ている。しかし、スナップショットは一定の時間ごとにその瞬間の状態を取っておくのだが、CDPではすべての変更点を記録しているところが大きく異なる。デジタルカメラに例えると、スナップショットは連写機能のようなもので、どうしてもとらえられない瞬間が出てくる。それに対してCDPはムービー機能で撮影するようなものであり、すべての瞬間が記録される。こうした仕組みによって、システムに障害が発生してもデータの損失はほぼゼロとなり、好きな時点にデータを巻き戻すことができる。
バックアップやレプリケーションとの使い分け
今回取り上げるCDPのほかにも、バックアップやレプリケーションなど、データ保護の仕組みにはさまざまなものがある。ここでは、それらを分かりやすく分類し、それぞれの使い分け方について説明する。
システムの停止時間
まず、保護しようとしているシステムの重要度を2つの視点から考えてみたい。
1つ目は、システムの停止時間をどの程度許容できるかという点である。目安としては、1時間以内にとどめる必要があればCDPは非常に有効なソリューションである。これが、もし数時間かかってもいいのであれば、スナップショットとレプリケーションの組み合わせで十分であろう。さらに、その日中に何とか復旧すればいいのであれば、ディスクバックアップからのリストアも使えるし、1日以上の停止が許されるのであればテープによる遠隔地保管データからの復旧も考えられる。
もちろん、システム停止時間を短く抑えようとすれば、その分システムは複雑になり、コストも高くなる。そのため、予算や工数との兼ね合いも考えた上で検討しなければならない。CDPはすべての変更点を残しておくので、その分データ量も増える。長期間このデータをすべて保存しておくのは、ストレージがいくらあっても足りなくなるため、現実的ではない。実際の運用上は、数日間のデータ保護をCDPで行い、それ以上の長期間のデータ保護にはスナップショットやバックアップといった別の仕組みを併用するのが一般的である。
データの消失期間
次に、どれだけの期間データが消失しても許されるかについて考えてみる。CDPの場合、データ消失はほぼゼロに近い。ほんの少しの間でもデータが無くなっては困るシステムにおいて、初めて必要となる。
これが、例えば数時間のデータ消失が許容範囲なのであれば、定期的にレプリケーションを取るような運用でも十分だ。夜間バッチ処理のバックアップであればデータ消失は最大で1日だが、システムによってはこれでも十分許容範囲の場合もある。
エージェント型とネットワーク型
現在市場に出回っているCDP製品は、主に「エージェント型」と「ネットワーク型」に分かれる。
エージェント型は、保護対象のシステムに常駐してデータの更新を記録するタイプで、ソフトウェアとして提供されることが多い。比較的安価で導入しやすいが、保護対象システム上で処理負荷が掛かってしまう点を考慮する必要がある。代表的な製品にはファルコンストア・ジャパンの「FalconStor CDP」や日本CAの「CA ARCserve Replication/CA ARCserve High Availability」、バックボーン・ソフトウエアの「NetVault Real-Time Data Protector」などがある。
一方のネットワーク型は、ネットワーク上に専用ハードウェアを設置して、そこをデータが経由する際に更新を記録する方式である。主にハードウェアとソフトウェアを組み合わせたアプライアンスとして提供され、処理を専用ハードウェア上で行うので、保護対象システムへの影響が少なく済むのがメリットだ。代表的な製品にはEMCジャパンの「EMC RecoverPoint」がある。
スピード復旧のスペシャリスト
CDPは、それ単体ではデータ保護の仕組み全体を構築できるわけではないが、災害、停電、データ破壊、ウイルス感染などによってシステムが壊滅的被害に遭っても、可能な限り速やかに復旧させる手段を提供する。これを通常のバックアップなどと組み合わせると、非常に高いレベルのデータ保護を実現することができる。
CDPはいわば、守備範囲は狭いがその中では最高の活躍をするスペシャリストのような存在なのである。
<筆者紹介>
羽鳥正明
EMCジャパン株式会社 マーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネジャー
同社にてバックアップ・リカバリ関連製品のプロダクト・マーケティングを担当。
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