Amazon Web ServicesとGoogle App Engineの無料プランの利用価値総額:Amazon、Google、Microsoftのクラウドサービス無料プラン比較(前編)
クラウドプロバイダーはユーザー企業のクラウド活用を促進するために無料プランを用意している。前編ではAmazon Web ServicesおよびGoogle App Engineの無料プランの詳細を解説する。
クラウドの採用を広めたいと考えるクラウドコンピューティングのプロバイダーにとって、無料試用プランの提供は絶対条件だ。PaaS(Platform as a Service)の分野では、米Microsoftの「Windows Azure Platform」と米Googleの「Google App Engine」が競争を繰り広げ、IaaS(Infrastructure as a Service)の分野では、米Amazonの「Amazon Web Services」が圧倒的な存在感を示している。そしてこれら3つのサービスには、いずれも無料プランが用意されている。
本稿では、これら3種類のフリーミアムサービスについて、その概要の他、無料割当分の詳細(クラウドベースのコンピューティング処理、データストレージ、データ入出力など)、月間の利用価値総額を前後編に分けてまとめた。
Amazon Web Services
Amazon Web Services(AWS)が2010年11月1日にスタートした無料使用枠「Free Usage Tier」は、AWSのアカウントを登録してから1年間利用できる。この無料枠には、Javaアプリケーションに対応するAWSの新サービス「Elastic Beanstalk」も含まれている。1カ月当たりの無料割当量とその価値(ドル)は以下の通り。
- 750時間のAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)Linuxマイクロインスタンス(1個)の利用(613Mバイトのメモリ、32ビットまたは64ビットプラットフォームのサポートを含む)[0.02ドル×750=15ドル]。ロードバランサ(Elastic Load Balancer)の利用[0.025ドル×750=18.75ドル]とそれに伴う15Gバイトのデータ転送[15×0.008ドル=0.12ドル]も含まれる。ただし、シングルインスタンスに負荷分散は余計なため、その分の価値は利用価値総額には含めていない
- 5GバイトのAmazon Simple Storage Service(S3)BLOBストレージ[5×0.14ドル=0.70ドル]、2万回のGetリクエスト[2万×0.01ドル/1万=0.02ドル]、2000回のPutリクエスト[2000×0.01ドル/1000=0.02ドル]
- 10GバイトのAmazon Elastic Block Storage(EBS)[10×0.10ドル=1.00ドル]、百万回のI/Oリクエスト[百万×0.10ドル/百万=0.10ドル]、1Gバイトのスナップショットストレージ[1×0.14ドル=0.14ドル]、1万回のスナップショットGetリクエスト[1万×0.01ドル/1万=0.01ドル]と1000回のスナップショットPutリクエスト[1000×0.01ドル/1000=0.01ドル]。EBSスナップショットはBLOB(Binary Large OBject)データとしてAmazon S3に低料金で保管できる
- 30Gバイトのインターネットデータ転送(Amazon CloudFrontを除く全サービスが対象。15Gバイトのインバウンドデータ転送[15×0.10ドル=1.50ドル]と15Gバイトのアウトバウンドデータ転送[14×0.15ドル=2.10ドル])。アウトバウンドデータ転送は1カ月に1Gバイトまで、全ユーザーが無料で利用できる
- 25時間のAmazon SimpleDBのマシン稼働時間、1Gバイトのストレージ、10万回のSimple Queue Service(SQS)リクエスト、10件のAmazon CloudWatchアラーム、Amazon Simple Email Service(2011年1月25日に発表された新サービス)でEC2から送信する電子メール1日2000通、Simple Notification Service(SNS)からのHTTP経由での10万回の通知と電子メール経由での1000回の通知。以上は全ユーザーに無料で提供され、期限はない
- 以上の計算に基づくAWSのFree Usage Tierの利用価値総額は、1カ月当たり20.60ドル、1年当たり247.20ドル。EU(アイルランド)、アジア太平洋(シンガポール)、およびUS西部(北カリフォルニア)での料金は若干高めとなっている(※かっこ内はデータセンターの設置地域)
Google App Engine
Google App Engine(GAE)は全てのサービスで無料割当分(Free Default Quotas)を提供しているが、ブロブストア(データストアより大きなデータを保存できる)やデータストア、メールの他、アプリケーションに対するリクエストを利用するには、クレジットカードを登録してGoogle Checkout決済サービスに申し込む必要がある。アプリケーションをホスティングする実時間に対して課金するAWSやWindows Azureとは異なり、GAEはCPUの使用時間に対して課金する。以下に、GAEの1日当たりの無料割当分とその価値(ドル)を示す。
- 6.5時間のCPU利用[6.5×0.10ドル=0.65ドル]とPython/Javaアプリケーションに対する4320万件のリクエスト、1Gバイトの受信帯域幅[1×0.10ドル=0.10ドル]と1Gバイトの発信帯域幅[1×0.15ドル=0.15ドル]。これには、ブロブストアとURL Fetch APIとの送受信データの他、メールメッセージのデータが含まれる
- 1Gバイトのブロブストア保存データ[1×0.15ドル=0.15ドル]と1億4000万回のBlobstore API呼び出し
- 2487時間のデータストアCPU時間、1Gバイトのデータストア保存データ[1×0.15ドル=0.15ドル]、0.5GバイトのHigh-Replicationストレージ[0.5×0.45ドル=0.225ドル]、200インデックス、1億4124万1791回のAPI呼び出し、4億1731万1168回のクエリ、72GバイトのAPIへの送信データと695GバイトのAPIからの受信データ
- 4500万回のImage Manipulation API呼び出し、560GバイトのAPIへの送信データ、427GバイトのAPIからの受信データ、4700万回の変換の実行
- 7000回のMail API呼び出し、2000人のメール受信者[2000×0.0001ドル=0.20ドル]、5000通の送信メール[5000×0.0001ドル=0.50ドル]、60Mバイトのメッセージ本文データ、2000件の添付ファイル、100Mバイトの添付ファイルデータ
- 1億9267万2000回のMemcache API呼び出し、558GバイトのAPIへの送信データ、640GバイトのAPIからの受信データ
- 10万回のTask Queue API呼び出し、100万件の保存タスク、10万Mバイトの保存タスク、65万7000回のURL Fetch API呼び出し、4600回のXMPP API呼び出し、1046GバイトのXMPP送信データ、4600万人のXMPPメッセージの受信者、10万通のXMPP招待状の送信
GAEの無料割当分では1カ月に約500万ページビューまで利用でき、期限は無期限。利用価値総額は、Mail API呼び出しを全て利用した場合には、1日当たり2.125ドル、1カ月当たり63.75ドル、1年当たり765.00ドルとなる。Mail APIを使用しない場合はそれぞれ1.425ドル、42.75ドル、513.00ドルとなり、AWSのFree Usage Tierのほぼ2倍となる。
以上、AWSおよびGAEの無償プランの詳細を解説した。後編では、Windows Azure Platformの無償プランを解説する。
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