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アパレルブランド米GUESSのモバイルBIとFacebook分析先行事例
1999年からBIを活用してきた米アパレルブランドのGUESS。iPadの登場とともにモバイルBIを強化し、Facebookによるカスタマーエクスペリエンスの提供に挑戦している。
1999年からBIを活用する米GUESS
米国のカジュアルアパレルブランドで、マルチチャネルリテーラーのGUESS? Inc.(以下、GUESS)。モバイルでのビジネスインテリジェンス(BI)活用と、自社ソーシャルアプリケーションとFacebookとをBIで連携させることで、独自のカスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)を提供している企業として注目されている。このたび、同社のBIディレクターであるブルース・イェン氏が来日し、2012年2月24日に開催されたマイクロストラテジー・ジャパン主催の「MICROSTRATEGY BUSINESS INTELLIGENCE FORUM」でその取り組みの一部を公開した。
1981年創業で、ロサンゼルスに本社を置くGUESSは、全世界で1万5000人以上の従業員を擁し、90カ国に1465店舗を展開。2010年度の売り上げは24億米ドル(約2000億円)以上に達する。同社がMicroStrategyのBI製品(関連記事:BIの基本をきっちり提供、最新モバイルにも対応する「MicroStrategy 9」)を導入したのは1999年のこと。以降、2006年にリテール用のデータウェアハウス(DWH)を構築し、2008年にはBlackBerryを活用したモバイルBIやダッシュボードの利用を開始。2009年からは多くのグローバルプロジェクトでBIを活用してきた。アパレルブランドの中でもベテランのBIユーザー企業というわけだ。現在はグローバルデータモデルを構築し、北南米、欧州、アジアの3大陸に分散した約800人のローカルBIチームに対して機動的にデータを発信する枠組みを持っている。
継続的にユーザーからフィードバックを得ながらモバイルBIを設計
同社のBI活用の転機となったのは、2010年に南仏カンヌで開催されたMicroStrategyのワールドカンファレンスで、iPadによるモバイルBIのデモが公開されたときだった。イェン氏は、「直属の上司とともに聴講していたのだが、ユーティリティに感動した上司がその場ですぐに3台のiPadをオンライン発注してしまった。それがモバイルBIに踏み出すきっかけだった」と振り返る。
当時同社は、PCによるFlash対応ダッシュボードの使い勝手の良さと、BlackBerryの持ち運びやすさを両立したBIの使い方を模索していた。新たなテクノロジーであるタブレットのiPadは“どんぴしゃ”にはまったのである。そこでGUESSでは、まずは社内ユーザーごとの生産性を高めるモバイルBIの具体的なビジネスケースを考えた。
「バイヤーは使いやすいデータを。役員は日次での売り上げや収益、販売プランを簡単にチェックできる環境を。デザイナーは売れ筋の生地と色の動向を。そして販売担当者は製品ごとの売れ行きを。迅速にチェックできる環境をそれぞれが必要としており、データを簡単に取り扱うことのできるソリューションを提供したかった」(イェン氏)
次に行ったのは、アプリケーションの具体的な設計である。従来の紙やスプレッドシートに代わり、膨大なデータを把握することが簡単で、直感的で使いやすく、トレーニングがほぼ不要のシステムをイメージした。
「セキュリティや既存システムとの連携が担保されたMicroStrategyをベースに、楽しみながら使えるデザインとは何かを、実際にペンと紙でスケッチした。継続的にユーザーからのフィードバックを得ながら細かな調整を行っていった」(イェン氏)
モバイルBIにはCIOの深い理解も必要
MicroStrategyとiPadによる新アプリケーションは、「使う楽しさがあるから通常リポートでは発見できない知見が明確化される」とイェン氏は言う。また、多くのユーザーに分析機能を提供できるとともに、カラム型データベース(関連記事:列単位格納でビッグデータの高速処理を実現するカラム型データベース)のパフォーマンスのおかげで迅速なデータへのアクセスが可能になったという。
「当社のCIOがこのプロジェクトを支援してくれたことも大きな成功要因となった。そのCIOこそ、カンヌでiPadを注文した当時の上司だ」と打ち明けるイェン氏。ユーザーの意見を繰り返し取り入れたことで、ビジネス要件も柔軟に取り込むことができたという。
スマートフォン、ロイヤルティー、Facebookを1つに統合するプロジェクト
次に、イェン氏はテーマを変え、GUESSのソーシャルアプリケーションの構築およびFacebook分析によるカスタマーエクスペリエンスの提供について論じた。
Facebookは8億人のアクティブユーザー(モバイルユーザーは3億5000万人)が利用。Facebook上で扱われるコンテンツは月に300億以上といわれており、その数は今なお増え続けている。
「なぜ多くの人々はFacebookを使うのか。使うのが楽しい、便利にコミュニケーションできる、最新情報を簡単に入手できるなどの理由が挙げられるだろう。だが、本当の理由は、そこに利用する価値があるからだ」(イェン氏)
GUESSのFacebookページは170万以上の「いいね!」を獲得(2012年2月現在)し、デニムブランド業界ではトップレベルといえる。しかしイェン氏は、Facebookに対応するためには幾つかの課題があったという。
1つは顧客とのかかわりを深められるものの、直接収益に結び付くわけではないこと。2つ目は、現状はSEO(検索エンジン最適化)と比較して効果が劣ることだ。フォレスターリサーチの調査でも、小売業の62%は「ソーシャルメディアのROI改善に確信が持てない」と回答しているという。イェン氏は、「ブランドの確立や顧客の声に耳を傾けるという面では活用できるが、具体的にビジネスの収益に結び付けるには大きな課題がある」とくぎを刺す。
それらの課題を解決するために、GUESSでは開発したスマートフォン向けアプリケーションや、顧客ごとにパーソナライズされたポイント付与、ディスカウント提供のロイヤルティープログラム、そしてFacebookの活用といった、これまで行ってきたプロジェクトを全て1つのアプリケーションで統合したいと考えていたという。
ソーシャルメディアでは困難なROIの評価や解析も可能に
「顧客のショッピング体験をいかにパーソナライズし、カスタマイズできるかが重要だ。利用環境の品質向上と顧客とのコミュニケーションがあって初めて本当のブランドロイヤルティーが生まれてくる」とイェン氏は語る。
そのため、MicroStrategyのFacebook分析アプリケーション「Wisdom for Facebook」で収集できるFacebookユーザーのプロファイル情報(サイコグラフィック、行動および関心、人口統計など)と、GUESS独自のアプリケーションで収集している顧客情報(顧客のセグメント、キャンペーン追跡など)とを融合して、顧客ごとにカスタマイズしたお勧め商品の提案などを実現しているという。
また、GUESSがベストカスタマーとして認める顧客を選別し、その人の実際のプロファイルを詳しく観察するというアプローチも可能だ。これにより、特定の顧客のために特別に用意した特典をプッシュ配信するという試みを行っているという。このプロジェクトは始めたばかりで、今後も店舗内のデジタルサイネージや、電子メール、ソーシャルメディアなどを通じて実施していくという。特別オファーの提供や専用コンテンツの配信、購入金額に応じたインセンティブ提供などを考えている。
「こうした取り組みにより、ブランドの認知度を高め、顧客ロイヤルティーを強化するとともに、他のブランドとのクロスマーケティングの実現も期待できる。また、ソーシャルメディアでは非常に難しかったROIの評価や解析も可能になるだろう」(イェン氏)
新しい技術やトレンドを取り込んだ施策は、なかなか実運用に至ることが難しい、そのため、「作って、提示して、フィードバックを得て、さらに作るという反復のプロセスが重要だ。それを何度も繰り返す中でエンドユーザーとコミュニケーションを図ることが必要だ」とイェン氏は言う。そして、iPadのアプリケーションを作る際に培ったプロセスや経験を、今後もアプリケーションのデザインにおけるワークフローとして生かしたいとイェン氏は考えている。
最後にイェン氏は、「ソーシャルメディアは新しいトレンドでアプリケーションは強力だが、同時に慎重に運用することを忘れてはならない。顧客第一であること、アプリケーションデザインを自社自身の手で有機的に作り上げていくこと、そして信頼関係を醸成し常に最新のコンテンツを配信していくことが重要だ」とアドバイスした。
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