インメモリ技術がもたらすBI高速化
「超高速BI」を実現するインメモリ技術、導入前に確認すべきこと
SAP HANAなどで注目を集めるインメモリアナリティクス。アナリストは、「購入前にインメモリアナリティクスツールの各カテゴリーがどのような目的に最適かを把握すべき」と指摘する。
インメモリアナリティクスは最近、ビジネスインテリジェンス(BI)ユーザーからもベンダーからも大きな注目を集めている。それは驚くにはあたらない。インメモリアナリティクスツールは、コンピュータシステムのメモリに格納されたデータセットにアクセスするため、HDDから情報を読み出す必要がない。そのおかげで、I/O時間が大幅に短縮されるため、ビジネスユーザーのクエリに対する応答時間が格段に改善される可能性がある。
さらに、一部のインメモリアナリティクスツールは、従来のデータウェアハウジングやBIアプリケーションでは通常必要なインデックスや集計表、多次元キューブを不要にし、データ分析プロセスを簡素化する。これに伴い、ITチームのデータ管理ワークロードが軽減され、クエリの作成と実行が容易になる。そうなれば、専門スキルがないエンドユーザーでもさまざまな分析を行うことが可能になり、セルフサービスBIを導入する好機となる(関連記事:BIを全社利用するために「セルフサービスBI」に足りないもの)。
BIベンダーは、スプレッドシートをベースにした製品から、大量のデータを扱えるハイエンドプラットフォームまで、多種多様なアーキテクチャに基づく幅広いインメモリアナリティクスツールを提供している。だが、BI業界アナリストによると、これらには共通の特徴がある。それはスピードだ。「インメモリアナリティクスツールは、絶大なパフォーマンスを必要とし、ごくわずかな遅延しか許容しない人々のためのものだ。ただし、こうした人々は決して多数派ではない」と、米Gartnerのアナリスト、マーブ・エイドリアン氏は語った。
米Enterprise Applications Consultingの主席アナリスト、ジョシュア・グリーンバウム氏は、インメモリアナリティクスへの関心の広がりは、IT業界の幾つかの動向が重なった結果だと語った。一部のソフトウェアベンダーは、10年も前からインメモリアナリティクスの分野を開拓してきたが、この技術は最近まで限られた成功しか収めていなかったという。だが今では、メモリが「恐ろしく安く」なっており、このことが、この技術の普及を後押しする要因の1つに挙げられると、グリーンバウム氏は指摘した。
64ビットシステムへの移行の動きも、追い風として働いている。32ビットマシンでは、アドレス可能なメモリは4Gバイトまでだが、64ビットシステムでは、桁違いに多くのメモリをサポートできるからだ。さらに、ブレードサーバもインメモリアナリティクスツールの利用拡大に一役買っていると、グリーンバウム氏は語った。ブレードサーバは、分析処理に効果的で、組み合わせて強力なマルチノードシステムを簡単に構築でき、高パフォーマンスながら価格が手ごろだ。
また、インメモリアナリティクスの躍進のもう1つの背景として、従来のロー(行)ベースのリレーショナルデータベースに代わる選択肢として、カラム(列)型データベースが発展し、利用が進んでいることが挙げられるという(関連記事:列単位格納でビッグデータの高速処理を実現するカラム型データベース)。
「カラム型データベースの技術は非常に成熟しており、ハードウェアの進化を加味すると、インメモリアナリティクスを採用するための条件が全てそろっているといえる」とグリーンバウム氏は指摘した。さらに同氏は、ローの代わりにカラムに情報を格納することで、高いデータ圧縮率を実現でき、大規模データセットのメモリへのロードが、より実用的に行えると付け加えた。一般的なリレーショナルデータベースをメモリ内で実行することも可能だが、その場合はカラム型データベースのような高い圧縮効率は得られないと、グリーンバウム氏は語った。
ビジネス要件の変化に柔軟に対応できる分析プロセス
グリーンバウム氏は、インメモリアナリティクスの潜在的なメリットに引かれて、大手小売業者や金融サービス会社、公益事業会社に加え、米軍などの政府機関がこのアプローチに注目していると考えている。こうした組織にとって、「ユースケースは、大量のデータがあり、そのデータを効率的かつ迅速に処理する必要があるというものだ」と同氏(関連記事:「Exadataより速かった」──中国大手飲料メーカーがSAP HANAを採用したわけ)。
米Forrester Researchのアナリスト、ボリス・エベルソン氏は、インメモリアナリティクスは、「BIをデータベースの設計、実装、運用の中心に据えようという大きなトレンドの重要な要素」だと考えている。データを集約し、スキーマを作成する必要性を最小限に抑えたり、解消するインメモリアナリティクスツールは、ビジネスユーザーが「思考の速度で」情報を入手することを可能にするだけでなく、ビジネス要件の変化に従来のBIよりも適切に対応できるアジャイルな分析プロセスを促進すると、エベルソン氏は語った。
こうしたツールでは、分析やリポーティングのためのデータ最適化に含まれる「ステップを全て省略できる」と同氏は付け加えた。「リポートやダッシュボードは、データモデルそのものだ。リポートやダッシュボードを変更すれば、データモデルも変更することになる。リポートやダッシュボードとデータモデルは不可分なのだ」
しかしエベルソン氏は、インメモリアナリティクスベンダーが提供する機能が多岐にわたることに注意を促した。購入決定を行う前に、企業はインメモリアナリティクスツールのさまざまなカテゴリーを認識し、各カテゴリーがどのような目的に最適かを把握しておかなければならないという。また同氏は、ベンダーに製品の具体的な機能について尋ねたり、セットアップとメンテナンスのプロセスにIT部門の関与が必要かどうかを確認することを勧めている。
一方、インメモリアナリティクスで混乱を招きやすい点は、この技術は「HDDを使わない」というだけのものではないことだと、エベルソン氏は語った。「一番よく聞かれる質問は、『SSDに対してアナリティクスを実行するだけでもインメモリなのか』というものだ」と同氏。「そうすれば、HDDを使う場合よりも確かに速くなる。しかし、データモデリングやI/Oステップは、そのまま維持されている」
それでも、ITマネジャーやBIマネジャーは、SSDを選択肢から外すべきではないと、米Enterprise Strategy Groupのアナリスト、ジュリー・ロックナー氏は語った。「インメモリアナリティクスツールなら、必要な答えが数ミリ秒で得られる可能性がある。同様のクエリをSSDに対して実行すると、数マイクロ秒で応答が返ってくるかもしれない」とロックナー氏。だが、これで十分という組織もあるだろうと、同氏は付け加えた。
※1ミリ秒=1000分の1秒、1マイクロ秒=100万分の1秒。
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