死去から1年、Apple最大の敵は「過去のジョブズ氏」:今後の鍵を握る2人の幹部
米Appleの前CEO、スティーブ・ジョブズ氏が死去して1年。Appleはその後も成長を続け、iPhone 5などの新製品も好調だ。Appleは今後も革新的な企業であり続けることができるのか。その鍵を握るのは?
1年前の今日(2011年10月5日)、米Appleに長く君臨した前CEO、スティーブ・ジョブズ氏が死去した。その後、Appleは市場をリードし続け、むしろさまざまな面で、従来以上に健闘している。果たして、この好調はいつまで続くだろうか?(参考記事:ジョブズ氏亡き後のApple:アフター・ジョブズを占う)
現CEOティム・クック氏の下で、Appleが好調さを維持していることは疑いようがない。その証拠に株価は上昇を続け、ほとんど2倍近くなった。明らかに投資家たちは、クック氏がAppleを主導できていると信じている。
Appleが2011年にリリースしたモバイルデバイスも大きく貢献した。2012年春に発売した第3世代のiPadと、最近リリースしたiPhone 5はともにヒット商品となり、数百万台も売り上げている。
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過去との競合
ジョブズ氏の死は、同社を奇妙なポジションに押し上げることになった。今やAppleの最大の敵は、Appleの過去という亡霊なのだ。リリースされる製品は全て、もしジョブズ氏が生きて携わっていたらこうなっていたはずだ、と人々が考える製品と比較されてしまうのである。人々の不正確なジョブズ氏の思い出は、時としてそうした比較評価を非現実的なものにする。
iPhone 5は「退屈だ」と批判されている。この製品は2011年のモデルの単なる改良版であり、革新的ではあっても革命的ではない、というのだ。一部の人々は、ジョブズ氏なら絶対にそんなことはしなかったという。しかし、そうした見方は1つの事実、すなわちAppleの製品戦略は常にそうであった、という事実を無視している。これまでリリースされたiPhoneはいずれも、前バージョンを程よく改良したものだ。ジョブズ氏がCEOの地位にあったときでさえ、そうであった。
クック氏は、iOSの地図アプリに不具合が見つかったとき、すぐに謝罪し、可能な限り早急に改善すると約束した。それはジョブズ氏の問題を解決するときのやり方ではなかった。だが、ジョブズ氏の手法の方が優れていると考える人はほとんどいないだろう。iPhone 4のアンテナに問題が見つかったとき、ジョブズ氏はこう言い放った。「気に入らないなら、買わなければよい」
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常に正しかったわけではないジョブズ氏
ジョブズ氏の死後、人々は彼の知性を好んで話題にし、不都合な問題をカーペットの下に隠しがちだ。賛辞を送るときならそれでもよい。しかし、ジョブズ氏亡き後のAppleの長期的な可能性を考えるときは、より現実的な見方が要求される。
ジョブズ氏はかなり独善的だった。彼はApple製品に関する自分のビジョンを心の底から信じ切っていた。彼にとって自分のビジョンに同意しない者は、誰であろうと間違っていた。確かに、ほとんどの場合において彼は正しかったが、必ずしも常に正しかったわけではない。
それが悪い方向に向かった例の1つに、2011年にAppleから流出した情報がある。それによると、ジョブズ氏は、現在われわれがiPhone 5として知るデバイスをリリース前にストップさせてしまったという(参考記事:「iPhone 5」が発売中止になった理由)。競合他社が画面サイズの拡張に向かっているにもかかわらず、彼はそのような決断を行ったのだ。iPhone 5が登場した今、市場の反応はどうだろう。大き過ぎるという指摘はなく、むしろAppleは画面の幅、高さとも、もっと拡張すべきだったという声が強い。
端的に言えば、iPhoneの画面サイズ拡大は、明らかにAppleにとって必要なことだった。が、ジョブズ氏はそうすることを望まなかった。クック氏は、そのデバイスにゴーサインを出し、瞬く間に成功を収めることになる。
ジョブズ氏はまた、10インチのiPadより小さなタブレットの開発に公に反対していた。しかし、彼はもはやAppleのボスではなく、同社で8インチタブレットの開発が進んでいることは広くうわさされている(参考記事:これがAppleの「iPad Mini」だ!(臆測、うわさ、リークによると))。もちろん、そのデバイスがどれほど成功するかを予測するのは早計だが、市場を席巻している小型Androidタブレット勢の手ごわい競争相手になることは間違いない。
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