「クラウドOS」になれないWindows Server 2012とMicrosoftの焦り:「Azureユーザー以外には、早期導入を決断させる魅力がない」
Windows Server 2012には新機能が豊富に搭載されている。中でもWindows Azureとの連携は重要な機能の1つだが、MicrosoftがWindows Server 2012に込める思いはユーザー企業にうまく伝わっていないようだ。
Windows Server 2012をクラウドOSとして浸透させたいMicrosoft
Windows Server 2012には300を超える新機能や技術が詰め込まれている。中でもMicrosoftにとって、戦略的に最も重要なのは、クラウドアプリケーションやサービスを開発、展開、管理するためのクラウドコンピューティングプラットフォーム「Windows Azure」(以下、Azure)との連携だろう。
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両者の連携は、Microsoftが2011年9月、米国カリフォルニア州アナハイムで開催した開発者向けカンファレンス「BUILD」で発表された。その際、「Azureは開発者とクラウドのユーザーに配慮して開発した」と解説された。具体的には「可用性の高いクラウドサービスの提供」「パブリッククラウドサービスを提供するためのプライベートクラウド環境を構築できる機能」「任意のクラウドで任意のアプリケーションを実行する機能」などを指している。
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確かに、企業やサードパーティーの開発者からは、開発プラットフォームとしてのAzureに対する不満はあまり聞かれない。しかしクラウドのユーザーの間には、Azureはあまり浸透していないようだ。実際、社内のエンドユーザーや顧客に向けたサービス提供基盤として、Azureが企業に導入された事例はまだ少ない。
一部のアナリストは、「Azure との連携により、MicrosoftはWindows Server 2012がクラウドOSとして定着することを望んでいる。だがそのためにはビジョンを今よりも巧みに打ち出す必要がある」と指摘する。クラウドおよびモバイルプラットフォームを専門とするコンサルティング会社の米Fino Consulting 取締役のマーク・アイゼンバーグ氏も、「MicrosoftがクラウドOSとしてのWindows Server 2012を語るとき、Hyper-Vの堅牢性が向上したとか、クラウドデータセンターを準備できるとかいったIaaSに関する話ばかりで、クラウドOSとして浸透させるための戦略的な話がなかなか出てこない」と話す。また、MicrosoftがクラウドOSとしてWindows Server 2012を訴求し始めたとしても、「企業ユーザーがその機能を利用するためには、準備に半年〜1年半はかかる」という。
「通常、われわれの現場では新しいサーバOSを展開するに当たり、まずMicrosoftに認定された標準イメージを構築し、そのイメージを基に新しいサーバをセットアップする。その後、社内開発者とサードパーティーの開発者に、Windows Server 2012の運用に必要なアプリケーションなどを開発してもらう必要もある。準備に何かと時間がかかる企業ユーザーに対する配慮が、今のMicrosoftにはほとんど見られない」(アイゼンバーグ氏)
「Windows Server 2012に、今すぐ導入が必要だと思わせる要素はない」
Azureを使ってプライベート/パブリッククラウドを活用した経験があるユーザーなら、Windows Server 2012とAzureの連携に魅力を感じる向きも多いことだろう。しかし、クラウドを活用していないユーザーや、Microsoft以外のテクノロジーを使ってクラウド活用を進めているユーザーには、連携の価値は伝わりにくいようだ。
米82 VenturesのITコンサルタント、ジョナサン・ハッセル氏は、「既にAzureを導入しているユーザー企業にとっては、さまざまなサービスと連携できるWindows Server 2012の機能はアップグレードの1つの決め手になるだろう。しかしクラウドを利用するか否かを決めかねているような企業の場合、彼らをクラウド活用に誘引できるだけの魅力をWindows Server 2012は持っていない。『Windows Server 2012でクラウドに移行しよう!』とはならないはずだ」とコメントする。
大手運輸会社の購買代行をしているマーティン・クレイグ氏も、「Windows Server 2012は堅牢に思えるし、新しい機能やテクノロジーも十分過ぎるほどある。だが今すぐに導入が必要だと思わせる要素はない。これまで通りのサイクルで、最初のサービスパックが出るのを待って導入する」と話す。
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