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【導入効果】将来の出来事がデータから分かる「予測分析」ビッグデータや社外データ活用で重要性増す

統計解析をはじめとする分析手段を利用し、データから将来の変化を予測するのに役立つのが「予測分析」製品である。その導入効果を解説する。

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 将来に何が起こるかをデータから予測する。そんな“夢物語”を可能にするのが「予測分析」製品だ。予測分析製品は、データ分析技術を利用し、将来の売り上げや顧客が次に取る購買行動などを明らかにする機能を持つ。構成技術は決して新しいわけではないが、ビッグデータの潮流に合わせてその重要性を増しつつある。本稿は、充実しつつある予測分析製品の導入効果を解説する。

予測分析の効果:データから「将来」を明らかに

 予測分析の応用分野は広い。金融機関ではクレジットカードの不正利用対策として予測分析を活用。「数億円のコスト削減に役立てている例も珍しくない」と、SAS Institute Japanのビジネス開発本部 Information Management & Analyticsグループ マネージャーの小林 泉氏は説明する。また、貸し倒れリスクの算出やクレジットカード発行時の審査などに利用するケースもあるという。

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)のSPSSクライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ部長の飯島 実氏は、「予測分析を売り上げ向上につなげている企業が多い」と、その効果を強調する。例えば、データ同士の相関関係の強さを示す相関係数を基に、ある製品を購入した人が購入しそうな製品を抽出する「協調フィルタリング」は、米Amazon.comがリコメンドに採用して効果を上げている。また「顧客の離反率などを予測し、離反しそうな人にはインセンティブを提供することで、クロスセル/アップセルを実現することもできる」(飯島氏)。

 「社会インフラのメンテナンスに予測分析を生かす動きが急速に進みつつある」と、ガートナー ジャパンのマネージングバイスプレジデントである堀内秀明氏は話す。音声や振動を感知するセンサーが取得するアナログデータをデジタルデータへ変換し、共振による建物の倒壊やトンネル崩落といった事故を予測できる。

 日立製作所NEC、NTTデータなどのベンダーやシステムインテグレーターは、社会インフラ向けに予測分析を活用する動きがあると、堀内氏は指摘する。例えば日立製作所は、センサー情報を基にしたガスタービン保全システムを構築済みだ。ガスタービンが搭載する1機当たり約200個のセンサーから得られるデータを利用。ユーザー企業の拠点にあるガスタービンの稼働状況をセンターで一括して収集して分析している。

BIは「過去」「現在」の把握が主眼

 主要なデータ分析製品である「ビジネスインテリジェンス(BI)」製品も、予測分析に役立つ機能を備える。蓄積したデータを基にデータ同士の関連性や傾向を発見する「データマイニング」機能がそれだ。具体的には、データ間の関係性を分析する「ディシジョンツリー」、同時発生する可能性が高い現象を割り出す「アソシエーションルール」といった機能を搭載する。

 ただしBIの場合、過去や現在の状況を把握するのが主な用途である。BI製品の多くは、ユーザー企業が蓄積したデータから定型/非定型のリポートを出力するのに利用されるケースが多いという。「実際に利用されているBIの機能は、8割が集計やリポーティング機能」(堀内氏)であるのが現状だ。

 予測分析は、その名の通り将来予測に焦点を当てている点で、従来のBIとはコンセプトや搭載する機能が異なる。予測分析を実現する製品は、少しずつではあるが充実し始めている。

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