米Adobeが決断した「サブスクリプションのみ」
Officeユーザーは「定額課金制」の夢を見るか
米Adobeが採用したアプリケーションの定額課金制。米Microsoftは、Microsoft OfficeについてサブスクリプションベースのOffice 365と同時に、パッケージ版の提供を続けることを即座に表明した。ユーザーはどう考えているのだろうか。
Microsoft Officeユーザーの間では、米Adobeが先頭に立って推進している「サブスクリプション(定額課金)のみ」の課金モデルに、米Microsoftも従うのではないかと懸念する声が少なくない。ただしMicrosoft自身は、近い将来その予定はないと発表している。一方、Adobeユーザーは今後、Photoshopや他のCreative Suite(CS)製品をパッケージソフトウェアとして購入することはできないことが既に決定した。
Adobeは2013年5月6日(米国時間)付で、CSのパッケージエディションの開発は打ち切る計画であると発表した。その直後MicrosoftはOfficeユーザーに対して、少なくとも当分の間は、Office 365とOfficeスイートのパッケージの両方の選択肢を提供し続けると、正式に表明した。
Microsoftのクリント・パターソン氏が投稿したブログは次の通り。「弊社もいずれOfficeをSaaSのサブスクリプションとして提供する方向性は、Adobeと共通している。ただ、Adobeと違って弊社は、ユーザーがパッケージソフトウェアからサブスクリプションサービスに移行するには相当な時間がかかると見込んでいる。今後10年以内には、誰もがサブスクリプションを選択するようになるだろう。サブスクリプションには否定しきれないほどの利点がある。その一方で弊社は、プレミア(主力製品)ソフトウェアをパッケージとして販売しながら、強力なサービスをサブスクリプションとして販売することで、ユーザーに選択肢を提供すると約束している」
議論の発端は2013年5月初めに開かれたAdobeのユーザーカンファレンス「MAX2013」だった。このイベントでAdobeは、Creative Suite(CS)およびこのスイートに含まれるハイエンドのコンテンツ作成アプリケーション、Photoshop、Dreamweaver、Premiere、InDesignなどをパッケージソフトの形で提供するのは、現行のCS6が最後になると発表した。今後CSをアップグレードする方法は、AdobeのCreative Cloud(CC)サービスのサブスクリプションのみとなる。
Photoshop CS6は699ドル(米国での価格、以下同じ)、スイートのMaster Collectionは2599ドルだ。CCのサービス料金は、1年契約の場合月額50ドル。月ごとに更新する契約であれば月額75ドル。しかしAdobeはこのサービスで、20Gバイトのクラウドストレージと、Edgeサービスも提供する。また月額19.99ドルで、単体の製品のサブスクリプションも可能だ。Adobeは割引サービスも用意している。CSのバージョン3から5.5までを、申し込み当初の1年間は月額30ドルで提供する。現在のCS6ユーザーは、当初の1年間は月額20ドルでサービスを利用できる(日本での価格は同社Webサイトを参照)。
一方、サブスクリプションにしてもパッケージソフトウェアにしても、Adobe製品の価格設定はかなり高額なので、ユーザーの環境によっては、CCのサブスクリプションを利用する方がより経済的な場合もある。実際、一部のAdobeユーザーはサブスクリプションモデルを歓迎している。
「個人的には、サブスクリプション制は別に嫌ではない。料金は確かにどれも安くはないが、許せる範囲に収まっている。スイート製品を丸ごと即買いなんて無理だ。そんな大金が自分の銀行口座に入っていたことは、今までの人生で1回しかない」と、あるユーザーは2012年10月にbit-tech.netのフォーラムに書き込んでいる。
「サブスクリブションしかなくなるのは困る」
それでもAdobeのこの決断は、パッケージソフトを購入するという選択肢がなくなることで不利益を被る多くの顧客、すなわち一般消費者、学生、中小企業ユーザー、あまり頻繁に更新する必要がないユーザー、またはこのソフトウェアをごくたまにしか使わないユーザーを大いに驚かせた。
supermonkeyと名乗るユーザーは同フォーラムにこう書き込んだ。「私は今回の発表に打ちのめされた。幾つか理由があって、自宅ではいまだにPhotoshop CS3を使っている。Photoshopが高額だというだけでなく、新しいバージョンにアップグレードする必要性を感じたことがないから。もともと私は、ソフトウェアのアップグレードをまめにする方ではない。だから私にとっては、継続的なサブスクリプションモデルに移行するのは、長い目で見るとPhotoshopに対する負担が今よりさらに大きくなるということだ。今度新しいツールを探すときは、もっとよく調べて、もっと安いものを選ぶ」
「Adobeの今回のサブスクリプションモデルは、“頻繁に使うユーザー”を対象としているように見受けられる。Adobeが“たまに使う”程度のユーザーもつなぎ止めたいと思っているのなら、“時間課金制”モデルも適用しただろう。月額50ドルの料金は、ヘビーユーザー以外にとっては魅力的とはいえない」と、PaulというユーザーはGoogle Groupsフォーラムに書いている。
MicrosoftはOffice 2013を2013年1月下旬に米国でリリースし、同時にサブスクリプションベースのOffice 365 Home PremiumとOffice 365のサービスも開始した。前述のパターソン氏によれば、現在までに、既存バージョンのOfficeユーザーの25%以上がOffice 365に移行したという。裏を返せば、75%近くのユーザーはOffice 2013を選択したということだ。
Microsoftユーザーは「サブスクリブション制は面倒」
「サブスクリプションは好きじゃない。分かりにくいから。でも、日常的に使っているアプリケーションが幾つもある。全部のアプリケーションにいちいちサブスクリプション料金を払うなんて、想像するだけで気が変になる」。パターソン氏のブログエントリーに、paulejはこんなコメントを書き込んだ。
「それに、サブスクリプションが嫌なのは、最新版が欲しくないアプリケーションもあるから。今後はあまり使いそうもない製品もあるし、アプリケーションに使うお金がないときもあるしね。ソフトウェアを購入していた時代なら、自分の都合でアップグレードするかどうかを決められたし、予算も自分の都合で決められた」
Office 365のサブスクリプションの利用も、運用環境によっては、パッケージを購入するよりも安上がりになることがある。Microsoft Office 2013のHome EditionとStudent Editionには、Word、PowerPoint、Excelの3種類のソフトウェアが含まれていて、価格は139.99ドル(米国での価格、日本は同社Webサイトを参照)。サポートしている動作環境は、Windows 7とWindows 8のみ。WindowsとMacintoshで合計5台のコンピュータにOffice 365 Home PremiumとOutlook、Access、Publisher、Lyncを追加すると、支払いは月額50ドル。機能にある程度の制限が加わるが同じバージョンのアプリであるOffice Web Appsも利用できる。Office Web Appsはリモートでも利用できるので、例えば出先からアクセスすることも可能だ。しかも、使用時にソフトウェアをダウンロードする必要もない。
それでも既存のMicrosoft Officeユーザーの多くは、旧バージョンのスイート製品を使い続けている。
「毎月支払いをするなんて考えられない」
「Office 365 の料金を毎月(または毎年)払う方が、Office 2007よりも安いなんてばかげてる。Home Useのプログラムで購入するよりも安いなんて(Office 2010もそれで買った)。Office 2007 Home&Studentエディションはすごく安くて、しかも3台のコンピュータにインストールできたのに」と、コーク・ロバートはWindows 8 Forumに書き込んだ。
「今でも既に、この先何年でも使えそうなソフトウェア(とハードウェア)を十分過ぎるほど持っている。まあ私がそれだけ長生きすればの話だが。だからソフトウェアの使用料をこれから毎月払い続ける生活なんて、まっぴら御免だ」
Adobeは、一般ユーザー向けのAdobe Photoshop ElementsやAdobe Premiere Elementsなど、CS以外の製品ラインについては、サブスクリプション制に一本化する方針をまだ表明していない。
しかし今回発表したAdobeの新方針によって、ユーザーはAdobeを見限り、画像編集および映像編集の分野での競合製品、Corel PaintShop ProやVideoStudio Proなどに乗り換えるかもしれない。
一方、Microsoft Officeの場合、オフィススイート製品の分野で対抗馬となる相手はほとんど見当たらない。ただし消費者には、旧バージョンのOfficeにこだわらなくても、Google Docsのような無料で使えるオンラインのオフィススイートを使うという選択肢がある。
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