歴史からひも解く、「新しいOffice」ができるまで:クラウドや競合で様変わりしたMicrosoft Office
米Microsoftの「Office 2013」「Office 365」には、さまざまな提供形態やエディションが用意されている。その背景には、クラウドの普及や競合の存在があった。
Microsoft Officeが登場する前、人々はワードプロセッサなどのプログラムを個別の製品として購入していた。米Microsoftは1989年、「Office」というアプリケーション統合パッケージを発売した(ちなみに、最初のバージョンはMacintosh用だった。Windowsは1990年まで重要なOSにはなっていなかった)。それがOfficeの始まりであり、以後、巨大なヒット製品へと成長していく。
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Microsoftは、その後Officeデスクトップアプリケーションと連動するサーバアプリケーション統合パッケージ「Microsoft BackOffice」をリリースする。この製品には、「Windows Server(当時はWindows NT Server)」やメールシステムの「Microsoft Exchange Server」、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の「Microsoft SQL Server」が含まれていた。さらに時を経て、ユーザーやグループのコラボレーションを支援する「Microsoft SharePoint Server」、コミュニケーションを統合するための「Microsoft Lync Server」などのバックエンドコンポーネントが追加された。
このパッケージは有益かつ直観的なモデルで、ITやライセンス管理の担当者にとって一般的に理解しやすかった。デスクトップ用生産性アプリケーションのバンドルとサーバソフトのバンドルが連係する比較的シンプルなコンセプトから、今日の複雑な製品ラインアップに至るまで、Microsoftはわれわれにどのようなメリットをもたらしたのだろうか?
クラウドは、さまざまなコンピューティングサービスをユーザーに提供するための方法を変容させつつある。それは同時に、Microsoftに大きな難問を突き付ける。ユーザーがサブスクリプションベースで進んで支払おうとする金額で、フロントエンドとバックエンドの機能をどのようにパッケージ化し、販売すべきか。こうした変化に対応するため、クリティカルなデータやアプリケーションをクラウドへ移行することに不安を覚えるITプロたちの要求に、Microsoftは応えていかなければならないのだ。
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「Microsoft Officeは、安価または無料のデスクトップアプリケーションとの競合に直面している。Webブラウザで動作する『Googleドキュメント』『IBM SmartCloud Docs』などだ」(参考:Office 365、Google Docsを超える? IBMのクラウド型オフィススイートに高まる期待)。そのためMicrosoftは、Office 2010からブラウザベースのスリム化したOfficeアプリケーション「Office Web Apps」を提供するようになった。Office Web Appsは、Microsoft Officeのような完全な機能を備えているわけではないが、次第にその方向へと進んでいる。
BPOSの後継として生まれた「Office 365」
Microsoftは、当初「Microsoft Business Productivity Online Suite(BPOS)」というバックエンドサーバサービスを提供していた。BPOSは、サブスクリプションベースでサーバソフトウェア機能を提供するためのサービスだった。
しかし2011年、Office 365の投入とともに、その戦略は変更される。
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