「ひとり情シス」課題別解決マニュアル【第1回】
誰も当てにできない「ひとり情シス」の本当の苦悩とは?
1人、あるいはそれに限りなく近い人数の情報システム部門を、孤独感を文字に込めて「ひとり情シス」と呼ぶ向きが多い。本連載では中堅・中小企業に多い「ひとり情シス」の問題に注目し、課題解決法を探る。
「中堅・中小企業や小規模企業ではITシステムの運用管理に携わる人員が限られる」というのは周知の事実だ。そうした人員が社内で1人のみという企業も少なくない。そうした状態は「ひとり情シス」と呼ばれることがある。
折しも、スマートデバイスやクラウドといった新たな要素が登場し、中堅・中小企業や小規模企業も次のIT活用に向けてステップを踏み出すべき時に来ている。ひとり情シスにとっては日々の負担を少しでも軽減し、新たな取り組みに割く時間を増やすための工夫が必要となってくる。そこで本連載ではひとり情シスに焦点を当て、人手が足りない中でもスマートデバイスやクラウドといった新たな要素を賢く使いこなしていくためのポイントを解説していく。
実はこれほど厳しいひとり情シスの現状
まず、以下のグラフをご覧いただきたい。
これは従業員数20人以上~500人未満の中堅・中小企業および従業員数20人未満の小規模企業に対し、「ITシステムの運用管理を担う人員の数」を尋ねた結果である。
「1名」という回答の割合がひとり情シスの割合に他ならない。その値は従業員数100人未満においては4~5割と高い。仮に従業員数50人としても、50台に及ぶPCのトラブル対応などを1人でカバーしていることになり、その負担は非常に大きいといえる。
こうした状況を改善するには、運用管理に関わる人員を増やすことが第一の解決策といえる。だが、残念ながらそれを期待することはできない。以下のグラフは従業員数500人未満の中堅・中小企業および小規模企業に対し、「今後、投資を抑制するIT関連項目」を尋ねた結果である。
投資を抑制するものとして「IT関連担当人員の増強」が22.2%と最も多く挙げられている。現時点でひとり情シスの状態となっている企業は今後もそれが続く可能性が高い。逆に言えば、たとえ1人でも運用管理をうまくこなしていくための工夫をしていく必要があるということになる。
兼任率と拠点数を抑えておくことが重要
ひとり情シスが置かれている状況をもう少し見ていくことにしよう。以下のグラフはひとり情シスに該当する企業における運用管理担当者の兼任率を表したものだ。
ひとり情シスの割合が高い従業員数100人未満の企業層では兼任率が8~9割に達している。実際にひとり情シスの方にお会いしてみると、本来は総務部門や法務部門などに在籍し、そうした本業の傍らで運用管理に尽力されている方々が多い。これはITについての知識やノウハウを得るための時間を十分に確保できないことを意味する。この「兼任率の高さ」もひとり情シスにとって大きな負担となっている。さらに以下のグラフはひとり情シスに該当する企業における拠点数を表したものだ。
ここでの「拠点」とは本社機能を持ったオフィスに加え、営業所や工場といった企業活動を行う全ての場所を含む。従業員数20人未満の小規模企業では「1カ所のみ」という回答が9割を占めるものの、従業員数20人以上~100人未満の中小企業層では「2~5カ所」という回答が4~5割に達している。中小企業というと「オフィスは1カ所だけ」と思いがちだが、このように数箇所の拠点を持つケースも少なくない。この従業員数20人以上~100人未満はひとり情シスの割合が高い企業層でもある。つまり、1人で複数箇所の拠点をカバーしていることになる。この「複数拠点の存在」もまた、ひとり情シスの負担増加の大きな要因となっている。
もしあなたがひとり情シスだったら……
もし、あなた自身がひとり情シスか、あるいはそれに近い境遇にある場合は「本業と運用管理とのバランスは5対5なのか、1対9なのか?」「自身がカバーしなければならない拠点数は幾つか?」といった現状をまず把握することが大切だ。事例などの情報収集をする場合にも、自身との違いを常に意識しておくべきだろう。
例えば、自身における本業とIT管理/運用の比率が8:2であり、拠点数が3カ所であったとしよう。そこで、ひとり情シスが導入に成功した事例を見たとする。だが、その事例に登場したひとり情シスが「本業と運用管理の割合が5:5で拠点数は1つのみ」であったとしたら注意が必要だ。なぜなら、事例で紹介された担当者は自身と比べてITに割ける時間が多く、そのことが成功要因となっているかも知れないからだ。
この点はひとり情シスに対して、ソリューションを提供するIT企業にとっても重要だ。単に運用管理を担う人材の数だけではなく、「兼任率」「拠点数」も考慮に入れ、それに即した提案を行うことが必要となってくる。
「1人情シス」ではなく、「ひとり情シス」であるワケ
このように「ひとり情シス」とは単に人数が1人であるというだけではなく、
- ITが本業ではないため、十分な知識やスキルを得るための時間が取れず「どこから調べれば良いのか?」や「誰に何を相談すれば良いのか?」が分からない
- 自身が普段居ない拠点(工場や営業所)の面倒も見なければならず、そこでは現場社員の同意や賛同を得にくいなど、社内調整で苦労することも少なくない
といった悩みを抱えながら孤軍奮闘しているケースが少なくない。「ひとり情シス」は自然発生的に生じた用語だが、「1人情シス」ではなくあえて平仮名の「ひとり」を用いている点にそうした苦労や悩みが込められているといえるだろう。
ひとり情シスが直面する課題とその解決策
では、厳しい状況に置かれたひとり情シスが本業の傍らで効率的良く運用管理を行うためにはどうすればよいのだろうか? そのためには、
- ITソリューションを提供する販社やSIerを上手く巻き込む
- スマートデバイスやクラウドなどの新しいツールを活用する
といった工夫が必要となってくる。だが、その際にも幾つかの課題が生じてくる。中でも多く見受けられるのは以下の3点だ。
- 課題1:販社/SIerとうまくコミュニケーションが取ることができず、自社が必要としているソリューションを提案してもらえない
- 課題2:スマートデバイスの効果的な活用法が分からないことに加え、拠点に散在しているPCのトラブル対応で手いっぱいである
- 課題3:クラウドを導入する価値が本当にあるか?の判断ができず、一方で個人向け無償クラウドの勝手な利用も不安である
いずれも厄介な課題といえるが、逆にこれらをクリアすれば運用管理の効率を上げるだけでなく、社内外での情報共有といった企業活動そのものの改善も期待できる。これらの課題に取り組むことはひとり情シスの社内における評価を高めるチャンスでもあるわけだ。
◇
本連載の第2回~第4回では上記の課題それぞれについて詳しく見ていくことにする。ひとり情シスは運用管理を1人で抱える大変な役割と捉えられがちだ。しかし、逆に「ひとり」であることは裁量の幅広さや意思決定の迅速さという面では潜在的な強みとなる。さまざまな課題をうまくクリアすれば、企業活動を次のステージへと導ける可能性も秘めているといえるだろう。本連載がその一助となれば幸いである。
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