旅行者用モバイルアプリ開発チームが選んだ意外な「開発現場」:最もクレイジーなアイデアをテストするには?
英オンライン旅行会社のイノベーション担当ディレクターに、イノベーションをはぐくむ環境の構築と、旅行者向けのモバイルアプリの開発について話を聞いた。
世界不況以降、ITリーダーたちは、予算が縮小する中でイノベーションを実現しなければならないというジレンマに陥っている。最近、ベストセラー作家のトーマス・フリードマン氏との対話の中で、Amazon創立者のジェフ・ベゾス氏は、予算縮小とイノベーションを両立させるには、リーダーは自らを「デザイナーではなくガーデナー」と捉える必要があると話している。つまり、種をまき、チームから出された素晴らしいアイデアに肥料を与えて育て、確実に実施していくということだ。
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オンライン旅行会社の英Lastminute.comでイノベーション担当ディレクターを務めるビル・ベックラー氏は、まさにそれを目指している。2012年、ベックラー氏のチームは、いつものオフィスを離れ、ロンドン中心部にあるカンバーランドホテルのロビーで製品開発を始めた。プロトタイプを旅行者に見せて、リスクの高い、または手が加えられていない商品コンセプトに対するフィードバックをその場で収集するようにした。
「これが終わるまでには、旅行者に気に入ってもらえるモバイルアプリを開発できるだろう。なぜって、気に入られるまでとことん旅行者の意見を聞くことになるからね」とベックラー氏は話す。
「旅行業界でイノベーションを起こすのは難しい。時には、アイデアがまずいか、良いか、単に理解できないのかを答えてくれる本物の旅行者が必要になる」
「ユーザーが気に入り、感嘆の声を上げるモバイルアプリを開発したいと考えたら、最もクレイジーなアイデアをテストし、市場から繰り返しフィードバックをもらう必要がある。オフィスの中にいたら、とてもじゃないがそれはできない」
ベックラー氏によると、このカンバーランドホテルのロビーでの実験が成功した場合は、別の場所でも実施する予定だという。
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人をひっかき回す
ベックラー氏は、創造性を刺激し、的を射たアイデアを生み出しやすい条件で働かない限り、組織の中でイノベーションを開花させることはできないと強調する。さらに、業界のパイオニアである会社のイノベーション責任者としての職務は、「人をひっかき回す」ことだという。
「工夫をして、より良いアイデアと働き方を育てる環境を作る。つまり、境界を取り払い、クロスファンクショナル(部門横断的な)チームを作る。これは、何か新しいことを起こすには絶対に必要だ」とベックラー氏は言う。
ベックラー氏は、悪いアイデアの実施を防ぐことも、Lastminute.comでイノベーションを生み出す秘訣の1つだと指摘する。しかし、創造/イノベーションプロセスを抑圧することなく、それをやってのけにはどうすればよいのだろうか?
ベックラー氏は次のように語る。「目標は、早めに失敗して、開発やプロトタイプの残りの業務から悪いアイデアを駆逐することだ」
「それには、ユーザーにできるだけ頻繁に、できるだけ多くのアイデアを提示する。そして、いかなるアイデアも価値が証明されないまま、踏み込んで調査することはしない」
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