使われないBIが多発する理由
腹八分目のシステム導入がデータ分析成功の鍵
現在BI技術の種類は多岐にわたり、多様な分析ニーズに応えられる環境が整っている。だが、これに甘えて不用意にシステムを拡張すれば、使われないシステムが増え、単なるコストの無駄遣いになってしまう。
かつてはオンライン解析処理技術には「多次元型」と「リレーショナル型」の2つの選択肢しかなかったため、BI(ビジネスインテリジェンス)アーキテクトはそのどちらかを選べばよかった。だが今日では、企業が利用できるBI技術の種類は多岐にわたり、BIプラットフォームのアーキテクチャ要素とその基盤となるデータウェアハウスシステムの選択肢も多くなった。
こうした選択肢の多様化が問題になることもある。技術関連コストと管理負担の増加を招く可能性があるからだ。
しかし基本的には、BIアーキテクトおよびBI管理者にとって、選択肢の多様化は歓迎すべきことだ。多くの企業においてデータ量が急速に増大し、分析のために収集されるデータの種類が飛躍的に増えているからだ。加えて、BIが提供するデータやリポートに対するエンドユーザーの要求が、拡大するとともに一層複雑化してきた。これは企業の戦略策定と業務運営において、BIとアナリティクス(分析技術)が次第に中心的役割を果たすようになってきたからだ。モバイルに対応したBI機能がビジネスユーザーから求めるケースも多い。また、ユーザー自身のニーズと関心に応じてデータを切り分けられるようにするために、既製のリポートテンプレートやIT部門が作成したクエリに束縛されないセルフサービス型ツールを求める声もある。
調査会社、米Forrester Researchのアナリスト、ボリス・エベルソン氏は「アナリティクスの利用が急激に拡大しており、セルフサービスが大きなトレンドになっている」と指摘する。さらに同氏によると、自由度の高いデータアナリティクスに対応した最近の技術は、IT部門が作成した定型スキーマしか使えなかったころのBIプロセスと比べると“天と地の開き”があるという。
エベルソン氏によると、「その結果、ユーザーの新たな需要と要求に応えようとする一方で、多岐にわたる膨大なデータをサポートしなければならないBIアーキテクトは、既製のリポーティングツールやダッシュボード、BIツールでは物足りないと感じている」という。
「例えば、ビッグデータを扱う環境の場合、大量の構造型データや非構造型データはスプレッドシートに収まらない。また、膨大な情報に対してSQLクエリを実行するには長い時間がかかる」と同氏は話す。こうした問題に対処するには、インメモリアナリティクスソフトウェアの他、定義済みのデータモデルを使わなくても、検索方式でデータの探索、発見が行えるツールなどが必要だという。「Hadoop」クラスタと関連ツール(「MapReduce」アプリケーションプログラミングフレームワークや「NoSQL」データベースなど)も、ビッグデータアナリティクスに活用できる。
BIアーキテクトが考慮すべきこと
BIアーキテクトには多数の選択肢が存在する。Forresterのエベルソン氏のチームは2012年11月、詳細なBIリファレンスアーキテクチャを作成した。このアーキテクチャは、データソースやデータ配信メカニズムなど6つの階層に組み込まれた35個以上のコンポーネントで構成される。全ての階層に共通する7つの支援要素(ビッグデータ、統合メタデータ、情報ライフサイクル管理など)も含まれる。
エベルソン氏とForresterの同僚アナリストのノエル・ユーハンナ氏は、このリファレンスアーキテクチャに関して共同執筆した報告書の中で「すっきりした構成には見えないかもしれない」と認めながらも、「BIアーキテクチャは決して単純なものではない。グローバルに事業展開している異種混在環境の大企業の場合はなおさらそうだ。こういった大企業は必ず、複数のデータウェアハウス、数百のデータマート、そして幾つかのBIプラットフォームを持っている」と記している。
データをBIプラットフォームに提供するバックエンド技術も、アーキテクトにとって以前からなじみのあるリレーショナルデータウェアハウスやデータマートだけにとどまらない。HadoopファイルシステムとNoSQLデータベースに加え、カラム型データベース、データウェアハウスアプライアンス、インメモリデータベースシステムといった新しいインフラ要素が登場してきた。
「かつては、データ分析製品の選択肢としては、少数のビッグプレーヤーと一部の有力な新興企業の製品しかなかった。だが今では多くの選択肢が存在する」と話すのは、データウェアハウスのコンサルティングとトレーニングを手掛ける米Caserta Conceptsのジョー・カザータ社長だ。同氏は「The Data Warehouse ETL Toolkit」の共同執筆者である(共著者はデータウェアハウスコンサルタントのラルフ・キンブル氏)。
しかしエベルソン氏は「選択肢が多いからといって安易になってはいけない」と警告する。あまり多くのアーキテクチャコンポーネントを導入すると、一度も使われない、いわゆる「シェルフウェア」になりかねないという。「大企業は往々にして必要以上のツールを導入しがちだ」と同氏は指摘する。「中小企業は、必要と思われるツールの80%を手に入れる方が、500%導入するよりもましだということを理解する必要がある」
過大なアーキテクチャはBIシステムの重荷
米コンサルティングファーム、CBIG Consultingのアナリスト、クリシュ・クリシュナン氏も「BIアーキテクチャの開発に関しては「多ければいいというわけではない。かえって逆効果になる場合もある」と指摘する。
クリシュナン氏によると、最近では、データウェアハウス環境が拡大してビッグデータも扱うようになってきたために、多様なアーキテクチャが必要とされる場合がほとんどであり、均質な単一のエンタープライズBIプラットフォームでは対応できない企業が多いという。「新しいアーキテクチャが次々と登場しており、異種混在化は避けられない」と同氏は話す。
しかしForrester Researchのエベルソン氏と同様、クリシュナン氏も「BIアーキテクチャを設計するというのは、さまざまなソフトウェアを詰め込むことではない」と指摘する。クリシュナン氏によると、アーキテクチャ部品を創造的に組み合わせることが成功の鍵だという。「さらにBIチームは、データの問題を修正したり、新しいビジネス要求に対応したりするために、アーキテクチャを柔軟に修正できるようにしておかねばならない」(同氏)
「アーキテクチャデザインをコモディティー化することはできない。組織はそれぞれ異なるからだ」とクリシュナン氏は語る。このため、BIアーキテクトは既成概念にとらわれない考え方をする必要があるのだが、企業でそういった動きはまだ見られないという。
エベルソン氏と、同僚のユーハンナ氏も、BIリファレンスアーキテクチャに関する報告書の中で、「ビジネスおよびデータは流動的な性質を持っているため、標準的なデザインから外れた例外的な要件にも十分対応できる柔軟性がBIアーキテクチャに求められる」と指摘する。
「例外に抵抗するのではなく、例外をうまく扱えるかどうかが、BI環境を構築するプロジェクトが成功するか否かの分かれ目となるケースが多い」(同報告書)
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