プロジェクトの70~80%は失敗している
BI活用に失敗した5つの理由
ビジネスインテリジェンス(BI)ツールは多くの企業に導入されたが、そのほとんどは活用に失敗している。その根本的な原因をBIとアナリティクスの歴史に探る。
ITの世界において、「BI(ビジネスインテリジェンス)」と「アナリティクス」は一般的な言葉だ。歴史をさかのぼると、BIという言葉が初めて使われたのは、1958年にIBMの研究誌に掲載されたH. P.ルーン氏による「A Business Intelligence System(ビジネスインテリジェンスシステム)」という記事においてだ。この記事の中で、ルーン氏はBIを「望ましい目標に向けた行動の指針となるよう、提示された事実の相互関係を理解する能力」と定義している。実に単純明快だ。
この最初の概念はその後の30年間で、さまざまな成熟の段階を経て進化した。例えば、1970年代と1980年代には、意思決定支援システムと経営情報システムが大流行した。そして1989年、米Gartnerのアナリスト、ハワード・ドレスナー氏が「事実に基づく支援システムを用いてビジネス上の意思決定を改善するための概念および手法」として提唱したことで、BIは画期的な局面を迎えた。
この30年間は、「データ収集」「ストレージの合理化」「データ検索」「リポート作成」を支援する技術や標準規格、プロセス、ツールの開発に多くの力が注がれた。それに伴い、データウェアハウス、データマート、データ辞書、ETL(抽出、変換、読み込み)プロセスの構築も進んだ。「データを情報に変換し、主として経営に関する意思決定を支援するためにその情報を活用する」という時代は、こうして幕を開けた。
アナリティクスへの根本的なシフト
それから全てが変わり始めた。
変化を駆り立てたのは、2500年前からある学問「統計学」だ。「分析」と考えてもいいだろう。Wikipediaによれば、人類が初めて統計を用いた形跡は紀元前5世紀にさかのぼって確認できるという。より正式な記録となると、9世紀に哲学者アルキンディが著した「Manuscript on Deciphering Cryptographic Messages(暗号メッセージの解読について)」が最初となる。この書物では、統計と頻度分析を用いて暗号文を解読する方法が詳説されている。
米ハーバード大学ビジネススクールの客員教授で、監査法人・コンサルティングファームDeloitteのアナリティクス部門でシニアアドバイザーを務めるトム・ダベンポート氏は、BIとアナリティクス分野の世界的権威として広く知られている。ダベンポート氏はジーン・G.ハリス氏との共著『Competing on Analytics~The New Science of Winning(分析力を武器とする企業~強さを支える新しい戦略の科学)』において、アナリティクスの活用法における根本的な変化について解説している。この著書は、好業績企業がいかにして競争的戦略の策定にデータ分析を役立てているかを紹介し、そうした優れた分析力を「秘密兵器」という表現で称賛している。
またこの著書では、米Amazon、英Barclay's(金融サービス)、米Capital One(金融サービス)、米Harrah's(カジノ運営)、家庭用消費財メーカーの米Procter & Gamble(P&G)、米Wachovia(金融サービス)、米メジャーリーグのBoston Red Soxなど、多様な事例も紹介されている。正しく行えば、そのメリットに議論の余地がないのは明らかなようだ。
BIプロジェクトが失敗する5つの理由
それでも、Gartnerの最近の調査によれば、BIプロジェクトの70~80%は失敗しているという。何十万ドル、何百万ドル、さらには何千万ドルもの費用をBIとアナリティクスのプロジェクトに投じても、ビジネスにもたらされるメリットは定かではないということのようだ。われわれは業界としては約50年間、文明としては1000年以上もの間、この課題に取り組んでいるにもかかわらず、なぜ正しく行うことができないのだろうか?
以下に、陥りやすい失敗を幾つかリストする。
- ビジネスとしての関与とサポートの欠如
その結果、目標やメリットについて明確な合意を得られず、資金援助が不十分、または皆無となる。
- 事業部門間や地域間のデータのサイロ化
その結果、必要なデータへのアクセスや所有権をめぐる統制が不十分になりがち。そのため、データ不一致の発見や解決が難しくなるケースが少なからず発生し、ときには解決が不可能となる場合もある。
- 爆発的な規模、複数年にわたる歴史、成果の幅の拡大
おかげで、最適とは言い難い、あまりにもありきたりの悲惨な結果しか期待できない。
- 「それを作れば、ビジネスはついてくる」という、IT部門側の思い込み。
こうした思い込みは、経営側による支持と関与の欠如への適切な対処法を知らないことに起因するケースが少なくない。
- 複雑になり過ぎたITソリューション
遅過ぎるタイミングでリリースされるため、わずかな成果しか上げられない。そのため業績の改善につながらない。
これで全てではないが、重要なポイントは以上だ。こうした現状には、以下の4つの重要な力学が作用している。われわれは業界のリーダーとして、これらの力学を受け入れ、理解し、積極的に対応する必要がある。
- BIやアナリティクスのプロジェクトが失敗する一般的な理由は、必ずしもそうしたプロジェクトに固有のものではない。上記のリストから、BIとアナリティクスという視点を取り除き、代わりにERPやCRM、財務管理といった視点で読み返してみても、問題の重要性はほとんど変わらないはずだ。
- モバイルコンピューティング、ソーシャルネットワーキング、ソーシャルメディア、非構造化データ、地理空間、バイオメトリクス、センサーベースの技術、ITのコンシューマライゼーション、クラウドコンピューティングといった各種の技術がビジネスを進歩させ、それに伴い、情報の種類と量はかつてない勢いで急増している。これが、いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれるものだ。では、これまでのデータは「リトルデータ」ということなのだろうか? 「リトルデータ」の扱いにすらこれほど苦戦しているようでは、先が思いやられる。
- 前述の技術進歩によって提供される新しいタイプのデータの多くは、リアルタイムで入手できる。BIとアナリティクスの分野は急速に進化しつつあり、「過去を振り返ること」から「未来を予測すること」、さらには「現在の状況を把握して、今とるべき行動を理解すること」へと変化している。例えば、最適な顧客への提案、リアルタイムのサプライチェーン管理、積極的な顧客サービスなどだ。バッチ処理型の情報管理もこれほど苦労しているのだから、その上、リアルタイムの行動や反応を有効活用するとなれば大変なことだ。
- 今後は、情報の種類の急激な変化や、ますます多様化する情報ソースから集めた膨大な量のデータをうまく活用し、ビジネス価値を実現できる企業が、競争上の格差を広げることになる。その格差はいずれ(もしまだであれば)競争上の深い溝になるはずだ。こうした変化に対応できない企業は競争から取り残されるか、あるいは、もっと悪い状況に陥ることになるだろう。会社をうまくリードして、こうしたプロジェクトを成功に導けないCIOには考え得る中でも「もっと悪い」結果が待ち受けているはずだ。
ビジネスパートナーと積極的な意見交換を
そこで、皆さんにはどうか私の言葉を警鐘として受け止めてほしい。まずは、自分の決めた優先事項を経営側の期待に適切に合致させることだ。BIとアナリティクスのプロジェクトに対し、適切な資金提供と適切な支援を得るためには、真のビジネス価値と的確なビジネスケースを明確にする必要がある。
競争上の深い溝やその両方の側のメリットと脅威について、ビジネスパートナーと積極的に意見を交わすことも重要だ。IT部門の体制を整えることももちろんで、プログラムを成功裏に実装するために適切なスキルセットを備えた適切なスタッフを集め、豊富な人材をそろえる必要がある。もはや、あなたの父親世代の経営情報システムプログラムとは違うのだから。
読者の皆さんにも、本稿の内容を基に、「ITを活用して、持続可能なビジネス価値の創出と成長をけん引するための、最も効率的かつ効果的な戦略を考案するためには、会社をどう率いていくべきか」について、活発に議論を交わしていただければ幸いだ。
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