BIツール最前線:プランニングツール編
クラウドサービスが登場し始めたプランニングツールの最新動向
プランニングツールに求められるWhat-if分析機能を解説するとともに、代表製品を紹介。プランニングツールは予算編成、予算執行管理などの業務アプリケーション機能を併せ持つため、SaaSも登場している。
プランニングツールに求められる機能
ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの中で、意思決定プロセスにおいて「計画の根拠を得るため」に利用されるのが、プランニングツールだ。「意思決定の前提となる計画を作成する」というプロセスは、ほとんどの企業で予算編成という業務プロセスの中で実施される。この予算編成に当たって、実績データの分析、作成した個々のデータの積み上げ、複数パターン間での比較、要素項目の値を変えて全体の変化を見るシミュレーションなどを行い、計画の根拠を得ることがプランニングツールの目的となる(参考:読めば分かる! BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの種類と必要な機能)。
計画の根拠を得ることを目的としたデータ分析には、シミュレーションが用いられる。代表的なシミュレーション手法に、「What-if分析」がある。What-if分析は、特にプランニングツールと呼ばれる製品を利用しなくても、Microsoft Excel(以下、Excel)で簡単に実行することができる。
What-if分析とは、条件が変わったときに(if)、結果がどうなるか(What)を分析する手法で、企業において最もよく行われるシミュレーション分析といえる。複数の条件を用意し、どの条件の場合に結果が良いのか、最適解を考える手法だ。条件を自ら決定できるもの(例えば販売価格や生産数など)であれば、最も良い結果になる条件を選択するという利用の仕方になり、条件を自ら決定できないもの(例えば需要や為替など)であれば、考えられるパターンを想定し、リスクに備えて事前準備しておくといった利用になる。
例を挙げると、トップダウン予算を作成する際に為替や需要の予測から全体の利益や売り上げがどうなるかをシミュレーションするとか、ボトムアップ予算の調整時に任意の部門の数値を変更すると全体の利益や売り上げがどう変わるかをシミュレーションするというのがWhat-if分析に当たる。
ExcelでWhat-if分析を実行してみる
画面1のような損益分岐点分析表のデータを使用して、What-if分析を行ってみよう(本稿ではExcel 2007を使用)。What-if分析をExcelで実行する際は、「データテーブル」機能を利用する。データテーブル機能はWhat-If分析を行う上で必要なパラメータの受け渡しを支援する機能だ。
パラメータの受け渡しのために、画面1の右側にあるような表を用意する。このマトリクスの左上の濃いグレーのセル(8750と表示されている)は、損益分岐点売り上げの計算式(※)が埋め込まれている。
※固定費÷(1-変動費率)(=C5/(1-C7))。
その横の列見出しとなっている3つの値(19.0%、20.0%、21.0%)は、変動費率のパラメータ候補だ。一方で行見出しとなっている3つの値(6500、7000、7500)は、固定費のパラメータ候補だ。変動費率と固定費のそれぞれの組み合わせ時の損益分岐点売り上げがマトリクス内に表示されるというわけだ。
パラメータのマトリクス表全体を範囲選択し、Excelのリボンメニューで[データ]→(データツール)[What-If分析]→[データテーブル]と操作する。データテーブルダイアログボックスが表示されるので、値をパラメータ化する項目を選択する。行の代入セルには変動費率欄(C7)を、列の代入セルには固定費欄(C5)を選択し、OKボタンをクリックする(画面2)。すると画面3のようにパラメータの各組み合わせ時の損益分岐点売り上げの一覧が表示される。
主なプランニングツールとその特徴
現在、国内で入社可能な主なプランニングツール製品を以下の表にまとめた。
| 製品名 | 開発元 |
|---|---|
| SAP BusinessObjects Planning and Consolidation | SAP |
| Oracle Hyperion Planning | Oracle |
| IBM Cognos TM1 | IBM |
これらの製品は、BIツールとしてのシミュレーション機能だけではなく、予算編成、予算執行管理といった業務アプリケーション機能も併せ持つ。これらの製品は製品ベンダーによりさまざまな形態で提供されており、「SAP BusinessObjects Planning and Consolidation」は、プランニングツール専用に開発されているが、「Oracle Hyperion Planning」「IBM Cognos TM1」はいずれも「インメモリデータベースで高速処理化が進む最新OLAP分析ツール」で紹介したOLAP分析ツール「Oracle Essbase」「Cognos OLAP」をベースに開発されている。また、Oracle Hyperion PlanningはOracle Essbaseとは別の製品として提供されているのに対し、IBM Cognos TM1はBIスイート製品「IBM Cognos10」に含まれている。
SaaS化が進む最新プランニングツール
SFAやCRMをはじめとして、さまざまなアプリケーションがクラウドコンピューティング環境で提供されている。これらは一般的にSaaS(Software as a Service)と呼ばれる。
プランニングツールは他のBIツールに比べて、予算編成、予算執行管理といった業務アプリケーション機能を併せ持つため、徐々にSaaS化されていく傾向にあるようだ。現時点ではSaaS化された会計アプリケーションやERPの一部としてシミュレーション機能が提供されている場合がほとんどだが、最初からSaaS提供を前提としたプランニングツールも登場してきている。
その1つがAdaptive Planningの「Adaptive Planning」だ。Adaptive Planningは代表的なプランニングツール製品と同様に、予算編成、予算執行管理、シミュレーションといった機能を持ち、クラウドコンピューティング環境での導入・運用を前提として作られていることが最大の特徴となっている。
平井明夫
株式会社アイエイエフコンサルティング
マーケティング部 マーケティングディレクター
日本DEC(現日本ヒューレット・パッカード)、コグノス(現日本アイ・ビー・エム)、日本オラクルを経て、現在はアイエイエフコンサルティングに在籍。一貫してソフトウェア製品の開発、マーケティング、導入コンサルティングを歴任。特に、DWH、BIを得意分野とする。現在はBI技術の啓蒙のため、講演・執筆に積極的に取り組んでいる。
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