遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
仮想デスクトップは仮想マシン(VM)で動作するデスクトップ環境であり、1台のサーバに複数のPC画面を展開する技術だ。仮想デスクトップにはさまざまなメリットがあるが、ベンダーによって仕様が異なるため、IT部門の担当者(以下、IT担当者)にとって分かりにくい部分がある。VDI(仮想デスクトップインフラ)との違いを含めて、仮想デスクトップの基礎を確認しよう。
仮想デスクトップはVMで実行される。IT担当者はVMの設定を通じて仮想デスクトップのOS、アプリケーション、リソース割り当てなどをカスタマイズできる。割り当てられるリソースの種類には次のようなものがある。
VMの作成や管理には、ハイパーバイザーと呼ばれる仮想化ソフトウェアを使用する。図1は、OS「Windows 10」を搭載したPCで開いたハイパーバイザー「Hyper-V」の管理ツール「Hyper-Vマネージャー」と、稼働中の仮想デスクトップだ。
既に所有しているPCやサーバに仮想デスクトップを展開すれば、専用のPCを購入せずとも、新しいアプリケーションのテストやアップグレード、パッチの適用が可能なシステム環境を活用できる。こうした利点から、仮想デスクトップは企業のIT部門で長年にわたり利用されている。
仮想デスクトップの基盤となる、代表的なハイパーバイザー製品は次の通り。
仮想デスクトップ技術の導入を考える企業には、さまざまな選択肢がある。これらのハイパーバイザーは利用できるクライアントOSやサーバOSが異なるため、IT担当者はそれぞれのシステム環境に合わせて選択する必要がある。
ベンダーは基本的に無償版と有償版のハイパーバイザーを提供している。通常、無償版はスケーラビリティ(拡張性)や管理機能、ベンダーの保守サポート、カスタムAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)などの機能において制限がある。
物理PCと同様に、VMで稼働するOSにはライセンスが必要であり、VM内にインストールするアプリケーションにもライセンスが必要になる場合がある。管理やインストールの手順はハイパーバイザーによって異なるため、選択した製品に応じた従業員向けのトレーニングも必要だ。
VDIはデータセンターやクラウドサービスのサーバに、仮想マシンを土台としてエンドユーザーごとのデスクトップ環境を構築するためのシステムだ。
企業のIT部門はVDIを通じて、エンドユーザーが操作するクライアントPCに仮想デスクトップを展開する。これにより、エンドユーザーは場所やクライアント端末を選ばず、常に同じデスクトップ環境にアクセスできる。ログアウトしても、全てのデータが仮想環境に保存される。翌日、別のオフィスで別のクライアント端末でログインしても、前日の作業をそのまま再開できる。
IT部門の視点では、各エンドユーザーのデスクトップ環境を一元的にサーバ側で管理できるため、OSやアプリケーションの更新、セキュリティポリシーの適用などを集中的に実行可能だ。データがクライアント端末に残らないため、盗難や紛失による情報漏えいリスクを低減できる。クライアント端末が故障しても、作業内容やデータは仮想空間に保存されているので、仕事を継続しながら余裕をもって修理できる。
VDIは強力な技術であるが、デメリットもある。例えば、VDI導入にはシステムやライセンスに加えて、サーバやストレージ、ネットワークインフラを整備する必要があるため、初期導入コストが高くなることがある。だが、適切な運用体制を構築できれば、デメリット以上のメリットを得られる可能性は十分にある。
次回はMicrosoftのHyper-Vの操作を通して仮想デスクトップの仕組みを解説する。
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