AMDはGPU管理ソフトウェアベンダーと提携し、同社のGPU「AMD Instinct」でAIモデルを実行する際のワークロード管理と性能向上を図る。データセンターにはどのようなメリットがあるのか。
半導体ベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)は、GPU(グラフィックス処理装置)管理ソフトウェアベンダーのRapt AIと提携し、自社のGPU「AMD Instinct」上でのAI(人工知能)モデルの推論およびトレーニングの効率を改善する。具体的にどのような取り組みを推進する計画なのか。
AMDとRapt AIは2025年3月26日(現地時間)、Rapt AIのAIワークロード(AI関連の処理やタスク)自動化ツールを、AMDのGPU「AMD Instinct MI300X」「AMD Instinct MI325X」、2025年発売予定の「AMD Instinct MI350」シリーズと統合するために提携すると発表した。Rapt AIのソフトウェアは、GPUのリソース配分や管理、性能のボトルネック解消などを支援する。両者は将来的にはメモリ利用の最適化にも取り組む計画だ。
コンサルティング企業J.Gold Associatesの主席アナリストであるジャック・ゴールド氏によると、企業のIT部門はデータセンターのリソースが常に完全に活用されているかどうかを把握するのに苦労しているという。リソースを最大限に活用するための第一歩は、リソースを監視することであり、これがRapt AIソフトウェアのGPU管理機能だ。
Rapt AIの技術は、各GPUのワークロードを追跡し、その稼働状態を監視する。性能を監視しながら各チップを最大限活用できるようにすることで、企業は本当に必要な時にのみGPUを追加購入すればよくなる、とゴールド氏は説明。「コスト削減が主な目的だ。計算リソースを過剰に購入している場合、実際には使っていないものに対してコストを支払っていることになる」(同氏)
Rapt AIのソフトウェアは、プライベートデータセンターやクラウドデータセンターで使われる、AMDおよびNVIDIAのGPUをサポートしている。クラウドサービス群「Google Cloud」のTPU(テンソル処理ユニット)や、「Amazon Web Services」(AWS)のAIアクセラレーター「AWS Trainium」もサポート対象となる。TPUとは、AIアプリケーション向けに特化して設計されたASIC(アプリケーション特化型集積回路)であり、大量の数値演算や論理処理を目的としている。
この提携によりAMDとRapt AIは、Rapt AIのソフトウェア技術がAMD Instinctで最高レベルの性能を発揮できるようにすることを狙っているとゴールド氏は指摘。「両社は全てが最適化されるよう、より緊密に連携していくことになるだろう」(同氏)
AMD Instinct GPUは、AIモデルの推論、トレーニング、ファインチューニング(特定用途向けの小規模データセットを用いた調整)を目的としており、NVIDIAのGPU「NVIDIA H100 Tensor Core GPU」などのデータセンター向けGPUと競合している。2024年度第4四半期(2024年10~12月)におけるAMDの収益の半分以上は、データセンター向けプロセッサであるAMD InstinctおよびCPU「AMD EPYC」の販売から得られた。
AMDは2025年半ばにInstinct MI350の量産出荷を開始する計画だ。Instinct MI350は、クラウドサービスベンダーのデータセンターや製薬会社、金融機関、小売大手などの大規模企業におけるAIワークロード向けに設計されたGPUだ。AMD Instinct MI350の後継である「AMD Instinct MI400」は2026年に出荷される見込み。
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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